新型コロナ禍で続く遠出自粛 「チョイ乗り連発」のシビアコンディションから愛車を守る方法とは

新型コロナ禍で続く遠出自粛 「チョイ乗り連発」のシビアコンディションから愛車を守る方法とは

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの人々が過酷な状況に追い込まれ、窮屈な思いを強いられている。

 しかし、近所のスーパーまで、ということはエンジンを始動してエンジンオイルやクーラントが温まりだした状態。それも5分程度の走行でエンジンを停止させてしまうとしたら、クルマにとってあまりよい状況ではない。

緊急事態宣言の発令時、「買い物は3日に1回程度に」という要請が出ていた。大量の荷物を持ち運べて、他人との接触もないクルマは、最高の移動手段だった。それゆえ、クルマには見えない負担がかかっている(SkyLine@Adobe Stock)

「シビアコンディション」という言葉を聞いた事があるだろうか。これはクルマの状態が悪いことを指すのではなく、クルマが使われている環境が厳しいことを指すものだ。

 エンジンで言えば、高回転までブン回して高速道路を連続走行する、なんて状況を想像するかもしれないが、ゆっくり走っていてもクルマにとってシビアな環境となってしまう乗り方も存在する。

 それが、短時間の走行だけしかしない使い方である。1日のうちに何度も短時間の走行を繰り返すような使い方ならまだいいが、1日1回、近所のスーパーを往復するだけのような使い方では、走行距離は短いもののクルマによっては大きな負担となってしまう場合がある。

 昔はマフラーに水が溜まってサイレンサーがサビて穴が空いてしまう、なんてことも多かったが、最近のクルマのマフラーはステンレス製(といっても磁石が吸い付く安価なSUS430などだが)となっているため、サビには強くなった。

 燃費が向上したことでサイレンサー内で水蒸気が結露して水滴になる量が減ってきたこともあるが、マフラーが腐って穴が空くようなケースは非常に少なくなっている。しかしエンジンの内部では、短時間だけの運転で悲鳴を上げている部分がいくつも存在するのだ。

 今回はそんな新型コロナ禍で気になる「シビアコンディション」から、愛車を守る方法を紹介していきたい。

文/高根英幸
写真/Adobe Stock(moonrise@Adobe Stock)

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■冷却系と潤滑系がチョイ乗り運転でダメージ

 まずはエンジンを冷却する水路だ。冷却水の流れをコントロールするサーモスタットは一定温度になると作動して水路を開き、ラジエターに熱くなった冷却水を導くのだが、ラジエターで冷やす前に冷却水の熱を利用しているクルマも多い。

 例えばAT、それもCVT搭載車はCVTのフルードを早く暖めて正常な運転へとすることで燃費を軽減させようとしているクルマが多い。そのためサーモスタットが作動する前にエンジンを止めてしまうような乗り方を長年繰り返していると、サーモスタットの動作部分が固着してしまうこともある。

 冷却水そのものはスーパーLLCといって、7年くらい使えるものも採用されてきているが、乗り方次第ではサーモスタットのほうが7年持たずに壊れてしまうことがあるのだ。

 エンジン始動直後は、始動性と燃焼を安定させるために、ファーストアイドルといって燃料を濃いめに噴射している。これが燃焼室周辺にデポジット(堆積物)を溜まりやすい状況にしてしまう。

 エンジンの運転時間が長ければ、吸気ポートの温度も上昇し、燃料噴射も薄めになることでデポジットを燃料が洗い流して燃焼させることになるが、短時間の運転ではそれもままならない。

 デポジットは、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射のエンジンに堆積しやすい。燃焼室に直接燃料を噴射する直噴のエンジンでは吸気ポート周辺のデポジットは発生しにくいが、今度は別の問題が起こるのだ。

 それはエンジンオイルの燃料希釈とカーボンの増加である。どちらもエンジンオイルにとっては、エンジンを護るために受け入れなければいけない使命のようなものだが、これらもファーストアイドル時に多く発生しやすい。

近年のエンジンで進んでいる直噴化だが、直噴エンジンの場合、チョイ乗りでの加速や冷間時のファーストアイドルで、燃焼室や排気系にPM(粒子状物質)がカーボンとして溜まることもある(dreamnikon@Adobe Stock)

 燃料を直接燃焼室に噴射する、ということは燃えなかった燃料が、シリンダー内壁を伝わってクランクケース内にエンジンオイルと混ざり合う。

 未燃焼とはいかないまでも、ファーストアイドル時や加速時の濃い燃料は、燃えカスのカーボンとなって燃焼ガスの吹き抜けとともにエンジンオイルに吸収されていく。これらがエンジンオイルを汚れさせ、潤滑性能を低下させる原因になってしまう。

 最近のクルマのエンジンオイルは高性能になっており、こうした汚れに強くなっているし、慴動部のクリアランスも表面仕上げも、昔のエンジンとは雲泥の差と言っていいほどだ。それでもオイルの粘度が低く、オイル量も少ないので劣化してしまうと途端に環境は悪化する。したがって、走行距離が少なくても、早め早めのオイル交換がエンジンを労ることになるのである。

 具体的なエンジンオイル交換の頻度は、クルマの取り扱い説明書に書かれていることもあるが、最低でも半年に1度はエンジンオイルを交換してやることが、走行距離が少なくてもエンジンをシビアコンディションから守ってやる対策となる。

次ページは : ■近所へのチョイ乗りだけはバッテリーに対しても厳しい環境

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