デリカD:5の販売好調が示す「クロスオーバーミニバン」の潜在需要
近年は、力強いデザインやアウトドアテイストを持つ車種への支持が高まっています。トヨタ「ランドクルーザー250」やスズキ「ジムニーノマド」、トヨタ「ランドクルーザーFJ」などが人気となっているほか、スズキ「ハスラー」やホンダ「N-BOX JOY」、スズキ「スペーシアギア」など、アウトドアを意識した装備やデザインを取り入れた軽自動車も支持されています。
ミニバンとSUVのクロスオーバーにおける絶対的ベンチマークとしては、三菱の「デリカD:5」が挙げられます。3列シートと両側スライドドアを備えながら、トヨタ「RAV4」(190mm、HEV)や日産「エクストレイル」(185mm、e-4ORCE)と同等となる最低地上高185mmを確保。電子制御4WD「S-AWC」や高剛性の「リブボーンフレーム」により、雪道や未舗装路でも優れた走破性と安定性を発揮します。
この唯一無二のキャラクターは根強く支持されており、とくに2019年の大幅改良後の販売は極めて堅調。2025年度(2025年4月〜2026年3月)の国内販売台数は2万6379台に達し、発売以来の過去最高記録を更新しました。
とはいえ、ミニバンにSUVらしいデザインを求める人の全員が、デリカD:5ほどの悪路走破性を必要としているわけではないでしょう。普段は送迎や買い物が中心で、アウトドアユースも整備されたキャンプ場程度というユーザーであれば、重視したいのは悪路走破性よりも「乗降性」「取り回し」「燃費」「室内の使い勝手」です。
長距離や悪路で頼もしいデリカD:5のディーゼル4WDに対し、市街地走行がメインならノア/ヴォクシーのハイブリッドシステムのほうが実用燃費で圧倒的に優位に立ちます。
すべてを再現せずとも「ヴォクシークロス」はつくれる!?
コンセプトカーに採用されたBピラーレス構造や大開口ドア、大型ガラスルーフなどを、そのまま量産車へ持ち込むのは簡単ではないでしょう。車体剛性や衝突安全性を確保する必要があり、重量や価格の上昇も避けられません。
しかし、ノア/ヴォクシーの基本骨格をベースに、専用の前後バンパーや樹脂製フェンダーモール、適度にリフトアップした車高、防汚仕様のインテリアなどを与えるだけでも、十分に差別化されたクロスオーバーモデルを仕立てられるはずです。
高い販売実績を維持するノア/ヴォクシーに、生産工程や部品点数を増やしてまで派生車を設定する必要があるのか、という疑問はありますし、装備を増やした結果、価格が上がりすぎれば、ミドルクラスミニバンとしての買いやすさも損なわれてしまうかもしれませんが、ミニバンの使い勝手は欲しいものの、高級感や押し出しの強さとは異なる、アウトドアテイストの個性を求めるユーザーにとって、クロスバンギアが示した方向性は魅力的であり、市販化の発表がないまま忘れられてしまうには、あまりにも惜しいと感じます。
ぜひとも、市場のニーズに寄り添った現実的なアプローチでの市販化を期待したいところです。
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