いまやVIPを乗せる高級車といえばアルファードが真っ先に浮かぶ。しかし、かつて日本には「黒塗りの高級セダン」だからこそ漂う独特の威厳があった。その代表格がクラウンマジェスタだ。銀座では「マジェ」の愛称で人気を集めたというマジェスタ。その歴史と魅力、そして復活を期待したい理由を振り返ってみよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ
トップオブトヨタだったクラウンマジェスタの変遷
クラウンマジェスタが誕生したのは1991年。9代目クラウンの登場と同時に、クラウンの上級モデルとして初代マジェスタがデビューした。
そもそもマジェスタの原点をたどると、8代目クラウンに行き着く。1989年、クラウンにV型8気筒4.0Lエンジンを搭載した「4000ロイヤルサルーンG」が登場。そして9代目クラウンへのモデルチェンジを機に、この最高級グレードが独立する形でマジェスタが誕生したのである。
車名の由来は「威厳のある」「荘厳な」といった意味を持つ「Majestic」。まさに名前どおりの存在だった。
初代はクラウンのロイヤルシリーズより全長が100mm、全幅が50mm大きく、堂々としたボディを持っていた。それでいて単なる「大きなクラウン」ではない。エレクトロマルチビジョンやホログラム式ヘッドアップディスプレイなど、当時としては驚くほど先進的な装備を投入していた。
クラウンが「日本の高級車の伝統」を背負う存在だとすれば、マジェスタはその一歩先の未来を見せるクルマだったのである。
1995年には2代目、1999年には3代目、2004年には4代目へと進化。特に2代目以降で印象的だったのが縦型のリアコンビランプだ。夜の街でもひと目でマジェスタとわかる、この後ろ姿に憧れた人も多いはずだ。
そして2006年にセルシオが国内のトヨタブランドから姿を消し、レクサスLSへ移行すると、センチュリーという特殊な存在を除けば、マジェスタは事実上「トップオブトヨタ」と呼べるポジションを担うことになる。
2009年に登場した5代目では、その立ち位置がさらに明確になった。FRモデルにはレクサスLS460と同系統のV型8気筒4.6Lエンジンと8速ATを搭載。最高出力347ps、最大トルク46.9kgmという余裕たっぷりの性能を誇った。
全長4995mm、全幅1810mmというサイズも絶妙だった。大型化するレクサスLSに対し、日本国内での取り回しにも配慮しながら、後席には十分な広さを確保していたのである。
しかし2013年登場の6代目でマジェスタの立ち位置は大きく変わる。V8エンジンは姿を消し、3.5L V6+モーターのハイブリッドを中心としたラインナップとなった。そして2018年、15代目クラウンへのモデルチェンジに伴ってマジェスタの名称は消滅。初代登場から27年で、その歴史にいったん幕を下ろしたのである。
なぜクラウンマジェスタは廃止されたのか?
では、なぜマジェスタはなくなってしまったのか? ひとつの大きな理由として考えられるのが、高級車市場そのものの変化である。
かつて企業の社長や役員、政治家などを送迎するクルマといえば黒塗りの高級セダンが定番だった。センチュリー、セルシオ、クラウンマジェスタ、シーマなどがその象徴である。
ところが時代が進むにつれて、ショーファーカーの主役はセダンから高級ミニバンへと移っていった。
その代表がアルファードだ。広大な後席、乗り降りしやすいスライドドア、高いアイポイント、豪華なシートなど、「後席に乗る人」の実用性を考えれば非常に合理的である。いまでは芸能人や企業役員などを送迎するクルマとして、アルファードを見かけることは珍しくない。
一方で、マジェスタ自身にも変化があった。
歴代マジェスタはクラウンよりひとクラス上の専用ボディやV8エンジン、先進装備などによって「普通のクラウンとは違う」という特別感を作ってきた。
ところが最終型の6代目は、14代目クラウンのホイールベースを75mm延長した構成となり、それまでのマジェスタが持っていた独立した最高級車としての色が薄くなってしまった。
さらに国内でレクサスブランドが定着し、より上級のセダンを求めるユーザーにはLSという選択肢もある。セダン市場そのものが縮小するなか、クラウンとレクサスLSの間にマジェスタを残しておく意味が薄れていったという事情もあったのだろう。
だが、マジェスタにはアルファードにもレクサスLSにもない独特の魅力があった。
その象徴的なエピソードが「銀座」である。
2009年当時のベストカーの記事では、銀座のホステスの間で2代目クラウンマジェスタのことを「マジェ」と呼ばれ、人気を集めていたことが紹介されている。
なぜマジェスタがモテたのか? 理由は意外にわかりやすい。
高級で、静かで、室内が広い。それでいて当時のクラウンほど「オジサンっぽくない」という絶妙なポジションだったからだという。
しかもセルシオやレクサスLSほど押し出しが強すぎない。それなのに、見る人が見れば「これは普通のクラウンではない」とわかる。
ここがマジェスタのうまいところだった。
5代目の最上級GタイプFパッケージともなれば、助手席側後席にはオットマンを備え、コンフォータブルエアシートや大型ヘッドレストなども装備。木目パネルにはウォールナットを使用し、プレミアム本革シートには上質な国産牛の革が使われていた。
さらに全車電子制御エアサスペンション。FR車にはV8、4.6Lエンジン。派手なだけではなく、「乗った瞬間に高級車とわかる」中身を持っていたのだ。はっきり言おう、上方向の広さに関してはアルファードに負けるが、走りの上質さ、乗り心地に関してはアルファードより格段に上である。
これこそマジェスタの最大の魅力ではないだろうか。





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