アリアなど新車投入加速で国内復活なるか!? どうなる日産の電動化戦略!

■市販EVでのリードを生かし 電動化戦略に注力する

 前述のとおり、車種数は69車種から55車種に抑えるが、今後は新型車を活発に発売する。直近の1年半で、世界で12車種を刷新するという。日本で予定しているのは、2020年6月24日に発売されるコンパクトSUVの「キックス」、ミドルサイズSUVの「エクストレイル」、SUVスタイルの電気自動車となる「アリア」、スポーツカーの「フェアレディZ」、コンパクトカーの「ノートだ」。

 東京モーターショー2019に出展された軽自動車サイズの電気自動車とされる「IMk」も、順次発売される。今後は新型車を毎年投入していく。

2019年の東京モータショーで初披露となった「IMk」。軽自動車サイズのEVだが、電池技術などは、最新のものを投入すると日産が明言している

 新発売される日産車の傾向として、最も顕著なのは電動化技術の採用だ。ハイブリッドシステムの「e-POWER」と、電気自動車を中心に据える。日産は2010年に先代(初代)リーフを発売した時から、電気自動車のリーダーになることを目指してきた。今では各メーカーとも電気自動車を開発するが、現時点で一般ユーザーが購入して日常的な移動に使っているのは、日本車では日産「リーフ」と三菱「i-MiEV(アイ・ミーブ)」程度だ。

 このうち、i-MiEVは設計が古く売れ行きも下がったから(最近の販売台数は1カ月平均で10台以下)、国産の電気自動車は、2019年に1カ月平均で1649台を登録したリーフにほぼ独占されている。

国内で日常の足として使えるEVは、リーフ以外の選択肢は「i-MiEV」しかない。しかし、制御や電池などといった核心部分も含め、設計の古さを隠せない

 そして将来は、二酸化炭素の排出量や化石燃料の使用量を抑えるため、規制も含めて電動化技術の採用が不可欠になった。日産はリーフやe-POWERで培った技術を最大限度に生かし、新たな品ぞろえを構築する。

 そうなればリーフに加えてアクア、IMkという具合に電気自動車を充実させるのは当然の成り行きだ。

 e-POWERは、エンジンが発電機を作動させるハイブリッドだから電気自動車とは呼べないが、モーター駆動を併用した日産の中心技術に位置付けられる。2020年6月発売のキックスも、国内仕様はノーマルエンジンを用意せず、当分の間はe-POWERのみだ。

2020年6月に発売される「キックス」。パワートレーンはしばらくe-POWERのみと、日産の強気を感じさせるが、この試みが成功するか否は、日産の今後を占ううえで重要になる

■電動化に冷や水か!? 日本の住宅&給電事情が大きな課題に

 気になるのは電気自動車の動向だろう。一般的な認識では、電気自動車を所有するには自宅に充電設備が必要だ。マンションなどの集合住宅には設置しにくく、電気自動車は一戸建てが所有しやすい。

 ところが日本では、総世帯数の約40%が集合住宅に住む。都市部はこの割合が高く、東京都では集合住宅の比率が60%に達する。そして総務省の統計によると、日本の総人口は減少傾向にあるが、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県などの都市部では増加している。つまり以前に比べると、集合住宅に住む人が増えており、電気自動車は所有されにくい。

 この状況に対応して日産は、各販売店に急速充電器を設置した。日産の国内販売店は、全国に約2070店舗だが、この内の約1900カ所に急速充電器が用意される。日産によると「店舗の規模や地域の電力インフラにより、急速充電器を設置できない店舗もある。そこを除いた設置可能な店舗には、急速充電器が行き渡った」という。

 ただし、急速充電器のみの使用に不安を抱くユーザーも少なくない。日産では「今はリチウムイオン電池などが進歩して、急速充電器だけを使っても劣化が急速に進むことはない」としているが、現行リーフの取扱説明書には以下のような記載がある。『できるだけ急速充電を控え、普通充電またはV2Hで充電してください。リチウムイオン電池を長持ちさせることができます』。

集合住宅が多い日本では、このように急速充電用の枠を設けられる場所ばかりではない。また、急速充電のサポート費用がかさむとなれば、環境負荷が低いという謳い文句だけでは勝負にならない

 このような記載があると、通常は自宅の普通充電を使いたい。外出先や緊急時のみ、急速充電器を利用する。そうなるとマンションでリーフを所有するのは難しい。また自宅付近の販売店が遠方に移転した時も、自宅に普通充電器を設置していないと不便を強いられる。

 急速充電器の利用では、ゼロ・エミッションサポートプログラムの料金が、以前に比べて割高になったこともマイナス要因だ。以前は1カ月当たり2000円の月会費だけで、日産の販売店と高速道路などの急速充電器を使い放題だった。ところが今は、1カ月に急速充電10回(100分相当)で4000円、20回(200分相当)は6000円、40回(400分)では1万円を徴収される。3年契約なら割引きされるが、それでも急速充電10回のコースで1カ月当たり2500円だ。

 ちなみに今のハイブリッド車は、普通に運転しても、ガソリン1Lで20km程度は走行できる。レギュラーガソリン1Lの単価が140円であれば、月額2500円で360kmくらい走ることが可能だ。1年間に4000~5000kmを走るユーザーが、今のゼロ・エミッションサポートプログラムに加入すると、一番ベーシックな月額2500円の3年契約でもほとんどトクにならない。

 電気自動車の運転に面白さを感じたり、環境性能の高さに特別な価値を見い出すユーザー以外に売り込むなら、「1カ月当たり2000円で、急速充電器を使い放題」といったプランを今後もしばらく継続したい。今のゼロ・エミッションサポートプログラムは、値上げが多すぎた。

次ページは : ■新たなイメージリーダーが必要な日産 確固たる意志を持つべし

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