2020年5月、日産が中期経営計画を発表。そのなかで、今後18カ月の間に12の新型車を投入し、2023年度末までに、新たに電気自動車2車種とe-POWER搭載車両 4車種を追加する、と発表した。
とはいえ、大ヒットが期待できる新車がない日産において、それだけでは安心…というには遠い気がする。今回は、モデルサイクルを4年以下にすると示した中期経営計画の内容から読める、日産の電動化戦略の現状と課題、そして今後の期待値について分析していく。
文/渡辺陽一郎
写真/NISSAN、編集部
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■自認する新型車不足が招いた販売不振
日産は2019年度決算に伴う事業構造改革計画で、商品構成の効率化を打ち出した。日産は現時点で世界的に720万台の生産能力を備えるが、2018年の世界販売台数は565万台、2019年は518万台であった。
そこで今後は最大生産能力を600万台、通常生産能力を540万台に抑えるという。現在に比べて20%の削減だ。販売台数を720万台の生産能力に近づけるのではなく、生産能力を減らすことで、80%以上の工場稼働率を保つ。この計画に沿ってインドネシアやバルセロナの工場を閉鎖する。
また2023年度までに、車種の数も生産能力と同様に20%削減して、現状の69車種から55車種以下に抑える方針も発表した。
以上の説明からはリストラと受け取られるが、現時点で高齢化した車種の若返りを図ることも発表された。日産は2020年3月期の連結決算で6712億円の最終赤字に陥り、その理由のひとつに、新型車の投入が乏しかったことも挙げられるからだ。自動車メーカーだから、新しい商品が乏しく、取り扱い車種が高齢化すれば売れ行きも下がって当然だ。
特に日本ではこの傾向が著しい。2011年以降、日産の国内における新型車の発売は、1~2年に1車種だった。2015年以降の新型車は、マイナーチェンジやグレード追加を除くと、乗用車では「セレナ(2016年)」、「リーフ(2017年)」、「デイズ(2019年)」、「ルークス(2020年)」のみだ。2018年は登場しなかった。
そのいっぽうで、かつて好調に売れていた「ティーダ&ティーダラティオ」、「キューブ」などは販売を終えている。
新型車が登場すると、例えばルークスを目当てに来店した客が、デイズを購入することもある。ルークスでは予算に合わないとわかった時など、販売店がデイズの購入を提案することもできるからだ。このような相乗効果は大きい。
しかし、新型車を投入しないと顧客も来店しない。日本には乗用車メーカーが8社あるから、新型車を投入しなければ存在感も薄れていく。SUVが欲しい時に、「エクストレイル」を思い浮べず、トヨタの「RAV4」を買ってしまう。
このような事情もあり、今の日産のメーカー別国内販売順位は、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位だ。2007年頃までは、トヨタに次ぐ2位だったが、新型車の発売が減り始めると急速に順位を下げた。この動向を受けて、車種数は減らしても、設計の新しい車種を増やす前向きな話になった。
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