混雑で止まれず通過することも… 日本のSA・PAはなぜ平置き駐車ばかりなのか?

■日々改善はされている駐車枠事情だが設計時からの問題点も浮き彫りに!?

 GWやお盆などの交通集中期、SAの駐車枠不足が最も深刻だった路線は、新東名だと認識している。

 新東名の完成は実に画期的で、これによって東名とのダブルネットワーク化が実現した。交通量は、開通当初は4:6で東名のほうが多かったが、新東名の交通量の漸増により、現在は6:4で新東名のほうが多くなっている。

 にもかかわらず、新東名のSAの駐車枠数は、東名に比べると1カ所あたり平均で半分程度しかなかった。これではいずれ不足するのは目に見えていた。

 また、新東名のSAは、小型車駐車枠への誘導に新機軸を導入。依然の単純な平置きだと、どこに空き枠があるのかわからず、駐車場内をさまよう利用者が出やすいため、駐車車両の流れを集約にして、順次空き枠にたどり着けるような導線を採用した。

 しかし、導線が集約されたことで、クルマが1台止まるごとに車庫入れ待ちが発生。特に繁忙期は、「駐車はお尻から入れるもの」という固定観念を持つサンデードライバーもおり、前から突っ込めばすぐに完了できるはずの駐車にかなりの時間を要するケースもあって、混雑に拍車をかけてしまった。

こちらは一般的なSA・PAの駐車場だが、後ろ向き駐車がスタンダードになっている。新東名のSAでは、駐車をスムーズに行ってもらうため、前向き駐車を採用している場所が多い(ka-chan@Adobe Stock)

 繁忙期には、実際には多くの駐車誘導員が配置され、空き枠へ誘導してくれるので、こういった導線設計自体が失敗だったのではないかと考えている。新東名のSAが大混雑すると、入場まで気が遠くなるほどの時間を要するのが常だった。

 これに関しては、NEXCO中日本も問題意識を持ち、2019年暮れまでに、駿河沼津SA(上下)および静岡、浜松(ともに上り)SAの駐車枠増設が完了している。これらは、もともとNEXCOが所有していた周辺の土地を駐車場として新たに造成、加えて従来の駐車枠を見直すなどして実現したものだ。「土地が余ってたんなら最初から造ってくれよ!」と突っ込みたく部分もあるが……。

 ただし、主な目的は、深夜帯の大型車駐車枠の恒常的な不足対策で、小型車枠は逆に減らされた場所もあるが、お盆などの連休には大型車枠を小型車用に転用できるので、全体としては拡充になっている。

 そのほか、非常に狭くてSAというよりPAと呼ぶべき規模しかなかった東北道の蓮田SAは、2019年夏に移転、駐車枠が3倍になるという大拡張が完成した。

 NEXCO各社としては、立体化ではなく敷地の拡張によって、駐車枠不足を解消しようと努力しているわけだ。


 それでも交通集中期には、SA・PAへの入場待ちが発生することもあるだろう。こういった時期は、当然のように本線上にも自然渋滞が発生する。

 渋滞は誰しも嫌なものだが、本線の車線数やSA・PAなど、すべての設備を最大交通量時に合わせて建設するとなると、大変な追加費用がかかる。それは最終的には利用者が負担せねばならず、現実的ではない。

 利用者としては、交通集中期のSA・PAの混雑を織り込んで、時間に余裕を持ち、かつ計画性を持って高速道路に突入していただきたい。

 日本のSA・PAの設備は世界一の充実度であり、それを目的地にしてもいいという評価が定着しているが、NEXCO各社は、今後もより使いやすく混雑の少ないSA・PAを目指して、カイゼンを進めていただきたい。

【画像ギャラリー】知っていないと事故の原因にも!! 気を付けたいSA・PAのマナーとルール

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