スカイラインがなぜ売れなくなったのか? という議論は、これまでいくつもの記事でされてきた。もう議論し尽くされた、と言ってもいいだろう。
もちろんスカイラインの過去を理解することは大切だし、日産の情けない現状には愚痴も言いたくなるものだが、スカイラインファン、日産の自動車ファンにとって必要なのは、「これからのスカイラインはどうなっていくべきなのか?」という議論だと思う。
本記事では、いまスカイラインが直面する課題とは何か、そして、次期型以降のスカイラインはどうなっていくべきか、考察していく。
文:吉川賢一/写真:NISSAN
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ニッサンのスカイラインが戻ってきた!
2013年9月に登場した、通算13代目となるV37型スカイライン。現在は2019年7月にマイナーチェンジを受けたモデルが販売されており、日産バッヂへと戻されてテールランプが丸目4灯に見える造形へと変更、また「Vモーショングリル」が採用されたことで、「ニッサンのスカイラインが戻ってきた!」と話題になった。
当初は、2.0リッターのメルセデス製ガソリンターボエンジンと、日産製の3.5リッターハイブリッドの2本であったが、マイナーチェンジで、306psを発生する日産製の3.0リッターV6ツインターボを採用(同時にメルセデス製エンジンを廃止)。また405PSの3.0リッターV6ツインターボを積んだ400Rもラインアップした。
最大のトピックは、ハイブリッドモデルに、高速道路上での手放し運転を可能とする「プロパイロット2.0」を搭載したことだ。
ほぼ一年がたった現在でも、プロパイロット2.0を搭載する日産車は、これ以外に登場していない。おそらく、やらないのではなくて、開発に相当な労力と時間が必要なのであろう。それほどに高度なシステムだ(つまりコストも高い)。
シャシーに関しては、DAS(ダイレクトアダプティブステアリング)が標準装備となり、インテリジェントダイナミックサスペンション(電子制御ショップアブソーバー)がV6ターボのタイプSPグレードにメーカーオプション、400Rには標準装備、といったところが大きなトピックだ。
どういう方向へ進化すべきか?
現行型スカイラインの魅力は、不快な振動がなく、手応えもしっかりとした極上のステアリングフィールだ。
DASによる切れ味や安定感は、素晴らしい仕上がりで、わずかなステアリングの操舵で、大小のコーナーをすいすいと駆け抜け、高速走行では怒涛の直進性を誇り、それでいて、キックバックや不快なステアリング振動がない。とはいえ手応えもしっかりとあり、補舵力は軽く疲れにくい。これだけでも価値がある。
また、静かで速いパワートレインも魅力だ。マイチェン前から、スカイラインハイブリッドは、回転の滑らかさと加速の力強さで、評判が高いパワートレインだった。改めて乗ってもその良い印象は変わらず、「静かで速い」を具現化した、理想のパワートレインだ。
V6ツインターボのエンジンもまた、魅力的だ。なめらかにふけ上がるエンジンは、どこまでも加速したくなる「高揚感」をもたらし、走りたくなる気持ちにさせてくれる。時代に逆行するようだが、クルマの魅力はやはりエンジンがあってこそだと感じる。
しかし、目をつぶれないのが燃費の悪さだ。スカイラインハイブリッドの燃費は14.4km/L(2WD JC08モード)、V6ツインターボは10.0km/h(WLTC燃費)だ。3.0リッター超えにしてはマシだと思うかもしれない。しかし、日本で新車購入できる欧州Dセグメントのカタログ燃費(※排気量が大きなモデルを選定)を見てほしい。
メルセデスベンツ C200(2.0リッターガソリンターボ) 12.9km/L(WLTCモード)
BMW 330i(2.0リットターガソリンターボ) 13.2km/L(WLTCモード)
アウディA4 45TFSI(2.0リッターガソリンターボ) 15.5km/L(JC08モード)
※JC08モードとWLTCモードが混在している点はご容赦いただきたい。
ここから言えることは、Dセグメントで3.0リッター級のエンジンは既に国内では販売していない点、そしてスカイラインはハイブリッドでさえライバルのベーシックカーに燃費で負けている点だ。
3.0リッター級のエンジンと2リッターを比べて燃費が悪いのは当然だ。しかしライバルの売れ筋ベーシックカーはみなダウンサイジング化をして、パフォーマンスと燃費の両立をしている。
また、パフォーマンス優先のモデルは「大振り」し、400psを超える超高性能ハイパフォーマンス専用モデルとして別モノ扱いしている。AMG C63SやBMW M3、アウディRS4、などだ。400Rは今回のみのスペシャルな企画だったのかもしれないが、この道を残すのがいいのではないか、と思う。
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