「凋落」と言われて久しいセダンだが、欧州車を中心に4ドアクーペを始めとしたの新世代モデルが広がりを見せつつある。
【BMW、アウディ、ベンツ…】 なぜいまクーペが世界を席巻しているのか?
そこで注目したいのが、全長4500~4700mm、全幅1700~1800mmのスタイリッシュな4ドアサルーン。
自動車評論家 渡辺陽一郎氏が、BMW2シリーズ グランクーペに試乗しあらためて感じたセダンの魅力と必要性、そして国産&輸入車取り合わせ9台のミッドサイズセダンをレポート。
トヨタは1990年代後半、「新しいデザインのセダンを提案することによりその地位を復権させる」という名目で、「セダンイノベーション」と謳った新型4ドア車を用意した(アルテッツァ、プログレ、オーパなど)。今こそセダンイノベーションの時なのかもしれない。
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※本稿は2020年5月のものです
文・各車寸評・採点チェック:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部、ほか
初出:『ベストカー』 2020年6月26日号
■BMW2シリーズ グランクーペに乗って実感!
セダンはかつて国内で最も多く売れるカテゴリーだったが、今は大幅に減った。新車の販売比率は軽自動車が37%、コンパクトカーが25%と多く、SUVとミニバンは各10%少々だ。セダンはそれ以下で数パーセントである。
しかしセダンの魅力は薄れていない。ほかのカテゴリーより天井が低く、重心も低い。後席とトランクスペースの間には隔壁もあり、ボディ剛性は高めやすい。
したがってセダンは走行安定性と乗り心地、つまりクルマにとって大切な安心と快適性を高めやすい。
そこで注目されるのが、全長を4500~4700mm、全幅を1700~1800mm、ホイールベースを2600~2700mm程度に設定したミッドサイズセダンだ。優れた走行安定性と、運転の楽しさを両立させている。
この魅力を探るため、先ごろ販売を開始したBMW2シリーズグランクーペの試乗をした。プラットフォームはBMWの前輪駆動車やミニと共通で、ホイールベースも2670mmで2シリーズアクティブツアラーやX1と同じ。
試乗車はスポーティなM235i xドライブ。直列4気筒2Lターボは、1400回転以下で駆動力が下がるものの、それ以上では4L並みの性能を発揮する。
6気筒に比べて滑らかさでは見劣りするが、アクセル操作に対して機敏に反応するから、峠道などを走る時は楽しく感じる。
全高を1430mmに抑えたセダンのメリットを一番満喫できるのはコーナリング。ステアリングの支持剛性も高く、操舵角に応じて車両の向きが正確に変わる。ドライバーを中心に車両が旋回する感覚があり、一体感を伴って走行状態も把握しやすい。
曲がりやすいハンドリング設定だから、アクセルペダルを故意に戻すと後輪の横滑りを誘発する傾向も見られるが、挙動の変化は穏やかで運転の楽しさを盛り上げる。このように絶妙な運転感覚を追求できることも、高重心のミニバンなどでは得られないセダンの醍醐味だ。
全幅は1800mmだから、市街地や曲がりくねった峠道でも扱いやすい。後席の頭上空間は狭いが、足元には最小限度の余裕があり、長距離移動でなければ4名乗車も可能。
このようにミッドサイズセダンでは安全性、快適性、実用性が調和した運転の楽しいクルマを開発できる。2シリーズグランクーペはその典型だ。
やっぱり「ほどよいサイズ」のスポーティセダンは楽しい!! ベンツにもAクラスセダンがあるし、国産車にもこのクラスはマツダ3やシビックセダンなどがある。今こそ再評価すべきカテゴリーだと改めて思った。
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