日産 ティーノの「2列6人乗り」はなぜ受け入れられなかったのか 【偉大な生産終了車】

日産 ティーノの「2列6人乗り」はなぜ受け入れられなかったのか 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 ティーノ(1998-2003)をご紹介します。

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文:伊達軍曹/写真:NISSAN、RENAULT


■2列シートに6名が乗車可能! 「快適・快速 ハイトワゴン」を標榜したティーノ

 サニーの車台を利用して開発された、日産いわく「オールマイティなハイトワゴン」。

 確かに、幅広だが短く背が高いボディに、2列6人掛けのシートを配したそのパッケージングは、「オールマイティ」を自称するにふさわしかった。

 しかし市場はその価値を認めず、1代限りで静かに消えていった佳作。それが、日産 ティーノです。

 1998年に登場したティーノは「6人乗りのミニバン」と表記されることも多い車でしたが、これをミニバンとするかどうかは微妙なところです。

イギリスの人気コメディ「Mr.ビーン」(演:ローワン・アトキンソン)を起用した「オールマイティーノ(おそらく「オールマイティ」とかけている)!」というCMを思い浮かべる人も多いかもしれない

 車台は前述のとおり同時期の日産サニーのそれをベースに開発されたもので、全長4270mm×全幅1760mm×全高1610mmという「WIDE」「SHORT」「HEIGHT」なボディに(※あえて英字表記としたのは、ティーノの新車時カタログからの引用です)、3列ではなく前席2人+1/後席3人の「5+1コンセプト」とされた2列6人掛けのシートを置いているというのが、日産ティーノの基本的なパッケージングです。

 またその後席は前後に200mmスライドさせることができたり、1人分ずつ脱着できたり折り畳めたりと、なかなか多彩なアレンジが可能なものでした。

「5+1コンセプト」とされた2列6人掛けのシート

 搭載エンジンは2Lと1.8Lの2種類で、どちらも直列4気筒のDOHC。

 最高出力135psの2Lエンジンには「ハイパーCVT」が組み合わされ、1.8Lには通常の4速ATという組み合わせ。ちなみにCVTも4速ATも、前席が2名+1のベンチシートである関係で、いわゆる「コラムシフト」です。

 2000年3月にはなぜか100台限定でハイブリッド版が発売されましたが、それはさておき、2000年4月にはマイナーチェンジを行い、前席をセパレートシートとした5人乗り仕様を追加。

 またこのとき、6人乗り仕様の後席中央に「ビルトインチャイルドシート」が標準装備されています。

「ティーノ」(Tino)は、スペイン語で「理性、判断の正しさ」という意味。家族全員に親しみやすく、新しい生活を感じさせる賢い選択のクルマであることを表現したネーミングだという

 そして2002年10月には再び一部改良が行われ、ティーノの当初の売りであった5名+1の「6人乗り仕様」はあっけなく廃止されてしまいました。また同時に、2Lエンジン搭載グレードもこのタイミングで廃番となっています。

 このようにいささか混乱していた日産 ティーノのモデル戦略ですが、いずれにせよ、そのモデルライフを通じて「人気」となることはほとんどなく(一部のユーザーからは愛されたのですが……)、結局は2003年3月から5月にかけて国内向けの製造と販売を終了。

 そして欧州での生産も、2006年3月には終了となりました。

次ページは : ■デザインが違えばあるいは…!? ティーノが敗れた理由

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