■デザインが違えばあるいは…!? ティーノが敗れた理由
日産 ティーノは、ルノーの「セニック」という車にやや似ているといえば似ていますが、少なくとも「それまでの日本車にはなかったタイプ」の意欲作ではありました。
そんな意欲作がなぜ、1代限りで寂しく退場することになったのか?
いくつかの理由が考えられますが、ひとつは「当時としては車幅が広すぎた」というのがあったでしょう。
日産 ティーノの全幅は1760mmですので、今にして思えば「普通ぐらい」とも言えます。今やトヨタ プリウスだって全幅は1760mmですからね。
しかし1990年代の日本では、1760mmといえば「実用車のくせにそんなに幅が広いのか!」と思われてしまうサイズ感でした。
とはいえティーノは全長4270mmと短かい車であったため、実際はぜんぜん取り回しに苦労する車ではなかったのですが、幅が広い=扱いづらそうという先入観を持たれてしまったのは、ティーノにとっては不幸でした。
またティーノは「車格に合ったエンジンを載せてくれなかった」というのもかわいそうなポイントでした。
車重1400kgから1450kgぐらいというまあまあ重いティーノのボディに組み合わされたのは、デチューンされた2Lエンジンと、1.8Lのほうはそもそもリーンバーン(希薄燃焼)タイプのエンジンでした。
これにより、平地を走る分には特に問題ないのですが、山道の登りや高速道路の上り坂ではアクセルをベタ踏みしなければならなかったティーノは、その部分において評価を落としてしまいました。
またこれは、ティーノを愛好している人からすると悪口に聞こえてしまうかもしれませんが、正直申し上げて、そのエクステリアデザインはかなり今ひとつであったように思えます。
似たようなプロポーションの車であるルノー セニックぐらいのセンスでティーノがデザインされていたならば、まぁヒット作になったかどうかはわかりませんが、「さすがにもう少しは売れたのでは?」というのが筆者の私見です。
サイズ(車幅)の問題については、単に「登場が早すぎた」というだけのことです。
そしてエンジンの問題も、ティーノのせいというよりは当時の日産のせいであり、これまた「タイミングが悪かった」というだけのこと。そして第三の問題点として挙げたデザインについては、まぁ客観的かつ定量的に語るのは難しい問題ですので、重ねてのコメントは避けたいと思います。
いずれにせよ日産 ティーノは、パッケージングも走行フィールもなかなか良好な車であっただけに、仮にもっといいエンジンを積んで、割と近年に登場したならば、3列シートのミニバンは好まない(または必要ない)層にはそこそこ売れたはずです。
まぁすべては今さら言っても詮無いことなのですが、真面目な作りの車であっただけに、ちょっと残念でなりません。
■日産 ティーノ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4270mm×1760mm×1610mm
・ホイールベース:2535mm
・車重:1450kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1998cc
・最高出力:135ps/5600rpm
・最大トルク:18.2kgm/4800rpm
・燃費:12.4km/L(10・15モード)
・価格:195万6000円(1998年式 2.0 X)
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