ハイオクガソリン虚偽記載 GS激減から石油元売り統合まで「激震のGS業界の今を追う!」

 2020年6月27日、毎日新聞が『ハイオクガソリン、実は混合 独自開発のはずが…20年前から各地で』というショッキングなニュースを伝えた。

 すでにご存じの方も多いと思うが、『石油元売り5社がオリジナルブランドで販売し、業界団体も「各社が独自技術で開発した」と説明していたハイオクガソリンが、スタンドに出荷する前段階で、他社製と混合されていること』が毎日新聞の取材で判明したのだ。

 クルマを利用するユーザーの中には、石油元売り各社に“裏切られた”とショックが隠せない人も少なくない。

 さて、なぜこんなことが起きたのか? また出光興産と昭和シェル石油の経営統合も含め、激震のGS業界の今をモータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。

文/高根英幸
写真/ベストカーWeb編集部(エネオス石油、出光興産、昭和シェル石油、コスモ石油、キグナス石油、各GSの写真)

【画像ギャラリー】石油元売り各社が公表しているハイオクガソリンの中身


他社と混合、虚偽記載 なぜこんなことが起きたのか?

 ガソリンスタンド業界に激震が走っている。各ブランドの品質の象徴だったはずのハイオクガソリンが、実はレギュラーガソリン同様、在庫を融通し合っていたことが発覚したからだ。

 これまで特定の銘柄にこだわって給油してきたクルマ好きにとっては、裏切られたような気持ちになるかもしれない。

 しかも吸気ポート付近のデポジット(燃え残り)を徐々に解消させると言われていた清浄剤が十分に配合されておらず(オクタン価との兼ね合いもあるのかもしれないが)、汚れを付きにくくする効果しかないことが分かった。

 各社独自の商品として性能や品質を謳ってきたことは、誇大広告ととられても仕方ないという見方もある。

 そのためコスモ石油とキグナス石油はHP上のプレスリリースで、ハイオクガソリンのオクタン価や清浄効果が説明通りではなかったことを認め、謝罪している。

 ちなみにオクタン価が高いほど、エンジンの異常燃焼が起こりにくく、日本産業規格(JIS)ではレギュラーガソリンは89以上、ハイオクは96以上と規定している。

コスモ石油のガソリンスタンド。コスモ石油はハイオクガソリン、スーパーマグナムの説明文を修正した

 コスモ石油のハイオクガソリン、スーパーマグナムは1992年5月に販売開始。ホームページで「洗浄力が高い。使い続けるほどに、エンジン内をきれいにしてくれる」「汚れを取り除く清浄剤が添加されていることも特徴」と汚れを除去する効果を強調する記載をしていたが、2020年4月に「エンジンをきれいに保つ添加剤が加えられている」などと修正し、「業界最高水準の製品」などの文言も削除している。

 汚れを付きにくくするキープクリーン効果がある添加剤は入っているが、販売開始以来、汚れを取り除く添加剤は入っておらず、実態と異なる宣伝は少なくとも10年前から続いていたという。

■修正前と2020年4月に修正したコスモ石油、スーパーマグナムの説明文
※修正箇所のみ記載

・修正前:使い続けるほどにエンジン内をきれいにしてくれる
→修正後:使い続けることでエンジン吸気系をきれいに保つ

・修正前:エンジン内部の汚れを取り除く清浄剤が添加されていることも特徴
→修正後:エンジンをきれいに保つ添加剤が加えられていることも特徴

・修正前:洗浄力が高い
→修正後:削除

・修正前:エンジン内堆積物の清浄性能がレギュラーガソリンに比べて最大約5倍
→修正後:削除

・修正前:業界最高水準の製品
→修正後:削除

コスモ石油のホームページ 

ハイオクガソリンα-100の説明文を修正したキグナス石油

 一方、キグナス石油も1986年7月から発売されている「α-100」のハイオクガソリンについて、「通常のガソリンのオクタン価は90程度ですが、ハイオクガソリンα-100のオクタン価は100です」と記載していたが、2020年4月に「通常のガソリンと比べオクタン価が高くなっています」と修正した。

 また、「エンジン内部にカーボンなどの汚れをキレイにする働きがある」と表記していたが、「エンジン内部のカーボンなどの汚れを付きにくくする働きがある」に修正されている。キグナスは報道機関の指摘を受け、4月と5月の2回、ホームページを修正したという。

■修正前と2020年4月と5月に修正したキグナス石油、キグナスα-100の説明文
※修正箇所のみ記載

・修正前:通常のガソリンのオクタン価は90程度だがハイオクガソリンα-100のオクタン価は100
→修正後:ハイオクガソリンは通常のガソリンと比べオクタン価が高くなっている

・修正前:清浄剤が含まれているのでエンジン内部のカーボンなどの汚れをキレイにする働きがある
→修正後:エンジン内部のカーボンなどの汚れを付きにくくする働きがある

キグナス石油のホームページ 
キグナス石油販売のホームページ 

 しかしながら、元売り側を擁護する訳ではないが、結局のところ各社ハイオクガソリンの性能は横並び(後述するがShell V-Powerは除く)だったということであり、性能はともかく品質面での問題はなかったとも言える。

 出光興産広報部に今回のハイオクガソリンの混合問題について質問したところ、以下のように回答を得た。

 「当社では自社で定めた商品規格を満たすものを生産・調達(バーター取引きおよび現物市場からの購入)し、自社ブランドとして販売しています。

 ご承知の通り、石油製品は重要な生活物資であり、製油所の定期修理期間中や各社供給拠点から距離が遠い地域への配送においても、安定的な供給体制が必要になります。

 価格面の恩恵もありますが、バーター取引で各社と石油製品の相互融通を行うことで、供給網の空白化を防ぎ、全国の消費者に対して安定的なエネルギー供給を実現しています。

 そして当社HP上のスーパーゼアスおよびShell V-Powerの記載についてですが、両商品とも他社との性能差は喧伝しておらず掲載しているデータも実際の実験データに基づくものであり、問題ないと考えています」。

 スーパーゼアスを指名買いしていたドライバーにはちょっと可哀想な気もするが、性能や品質はそもそも同等だったのだから、実害はないということになる。

 だが昭和シェル石油(元売り会社は2019年4月に出光興産と経営統合)のハイオクガソリンのうち、Shell V-Powerについては専用トレーラーで特別配送しているという触れ込みだった。ということは独自商品であることは間違いないのだろうか?

 「Shell V-Powerは独自のクリーン&プロテクト・テクノロジーを採用しており、他社のバーター品をShell V-Powerとして出荷することはございません」(出光興産広報部)。

 ここで各社のハイオクガソリンの貯蔵タンクの共有(他社製品との混合)とバーター取り引きの有無を各社に聞いたのでハッキリさせておきたい。

エネオス:混合している/バーター取り引きを行っている
■昭和シェル石油:混合している/バーター取り引きを行っている(Shell V-Powerを除く)
■出光興産:混合している/バーター取り引きを行っている
■コスモ石油:混合している/バーター取り引きを行っている
■キグナス:製油所を持たずコスモ石油から仕入れている
■太陽石油:混合している/バーター取り引きを行っている

 つまりShell V-Powerだけは独自技術が投入されたハイオクガソリンであり、清浄性が高いことで汚れを付きにくくするだけでなく、すでに発生しているデポジットも徐々に解消させてくれるようだ。

 このガソリンにこだわって給油してきたドライバーはちょっと満足感を味わえているのではないだろうか。

混合問題の背景にあるのは、スタンド拠点数とガソリン消費量の減少

 レギュラーガソリンについては元売り各社が在庫を融通し合っているのは、以前から公表されていた。

 製油所や貯蔵タンクからの距離などの立地条件により、輸送効率を考えた配送を行なっていたのだ。それは見方を変えれば、それだけ日本の元売り会社のガソリンは品質が高く、安定していたということになる。

 全国、どこのガソリンスタンドで給油しても、エンジンの調子がおかしくなることなく安心してドライブを続けることができた。これを普通と捉えていたのだから、日本のドライバーは恵まれていたともいえる。

 だが、この四半世紀の間にガソリンを販売する環境はどんどん変化していて、厳しさが増す一方なのである。そこにあるのはGSの存続問題とガソリンの消費量という問題だ。

 ガソリンスタンドの拠点数は1995年3月末の6万421軒をピークに年々減少している。ガソリンスタンドが抱える問題は人手不足と、地下タンクの老朽化、それに売り上げとなるガソリン消費量の減少だ。

 2019年3月には3万70軒(資源エネルギー庁発表値)と、前年に比べ674軒の減少とやや減少幅が縮小傾向にあるが、この24年で半分以下にまで減っているのである。

 都市部の競争の激しいところが減少しているだけでなく、郊外の幹線道路や過疎地、高速道路のサービスエリアでもガソリンスタンドが廃止され、給油の空白地帯が発生している地域もあるほどだ。

 クルマの燃費が向上しただけでなく、ドライバーの人口やクルマを利用する頻度が減少していることから、右肩下がりでガソリンの消費量が減っており、毎日のように日本のどこかのスタンドが廃業しているのである。

 ガソリンの消費量は2005年の6万1500kLをピークに減少傾向にあり、2010年には再び増加に転じたものの、2019年は4万8248kLと今や5万kLを割り込むまで減少している。ガソリン消費量の変化を見ても、その傾向は分かる。

 今や年間の走行距離は平均7000kmに満たないと言われているが、3大都市の周辺と地方では、ドライバー一人当たりのガソリン年間消費量は大きく異なる。2018年のデータだが、県庁所在地でドライバー一人当たりのガソリン消費量が最も多かったのは、鳥取県の701.9Lだった。

 一方、最も少ないのは大阪市の132.2L、次いで東京都の140.3Lが続く。鳥取とは実に5倍以上もの開きがあるのだ。

 しかもハイオクガソリンの占める割合は全体の9%ほどしかなく、もともと利益の薄い商品であるガソリンにあって、輸入車や高性能車ユーザーのためにハイオクガソリンを安定供給させるのはコスト面からも厳しいものがあった。

 それが清浄剤の配合率減少や貯蔵タンクの共有という手段を選ばせてしまった原因だ。

 都内でも一部のクルマ好きは、ガソリンを消費して給油にいくことすら儀式の一つとして楽しむが、一般ドライバーにとって給油は2~3カ月に1度の面倒な作業と化しているのだろう。

 そのため都市部での燃料消費は非常に少なくなっており、競争が激しかったところのガソリンスタンドが1軒、また1軒と消滅していき、地方でも郊外のスタンドは需要減から経営が成り立たなくなってきている。それでも元売りは儲けているではないか、という指摘もあるだろう。

 しかし企業であるから存続し続けるためには利益を追求するのは当然のことだ。それに電気やガス同様、エネルギーを供給する公共性の高い事業を営む企業には、安定供給のための健全な経営が求められる。

 ガソリンや軽油、灯油は供給不足となるとパニックになる恐れがあるため、日常的には不足しないよう供給能力には余裕をもたせる必要があり、しかも石油を蒸留することで軽油やナフサ、ガソリンや重油を作っている関係上、特定の油種だけを多く作ることが難しい。そのためダブついたガソリンは、燃料油業界で融通しあってきたという歴史がある。

 それが業転玉と呼ばれるガソリンで、異なる元売り会社の系列スタンドが購入するほか、系列に属さない独立系のガソリンスタンドが仕入れることで、系列店より安い価格で販売してきた。

 以前はガソリンの消費量が減少しても製油所はそれなりの拠点数があったため、自社の販売ネットワークでは製造したガソリンがダブつくこともあったので業転玉が存在したが、元売り会社の統合が進んだ今では、製油所の数も絞り込まれ、余剰ガソリンはほとんど出なくなった。

数年後にはシェルの貝殻マークが消滅、GS再編が加速する?

出光興産と昭和シェル石油は2019年4月1日に経営統合した。左が出光興産、右が昭和シェル石油のブランドロゴ
出光興産が2021年4月より昭和シェル石油系列のガソリンスタンドとブランドを統
一し、導入される新しいロゴマーク。アポロステーションの名で数年掛けて全国
のスタンドが1つのCIに模様替えされる計画だ。出典/出光興産(出光昭和シェル)

 これまでの国内市場では、統合によりENEOSが拠点数、販売量とも圧倒的であり、国内の燃料油販売量では5割のシェアを占めている。

 次いで多いのは出光興産の2割弱、昭和シェル石油の1割強となっており、両社は2019年4月1日に経営統合しており、合わせて3割のシェアを握るグループになった。

 コスモ石油は1割のシェアに留まっており、残りの1割をキグナスと太陽石油で分け合っている状態だ。

 昭和シェルを子会社として経営統合した出光興産は、2021年4月より新しい統一ブランドとして順次SSの模様替えを行なっていくことになっている。

 新ブランドは出光のアポロマークをベースとしたものになり、シェルの貝殻マークは消滅してしまうようだ。

 前述の独自ハイオクガソリンのShell V-Powerについては、新ブランド移行後の扱いは現時点では未定となっているそうである。

出光興産による新しいSS、アポロステーションのイメージ図。燃料油の販売やオイル交換などのエンジン車のためのサービスメニューだけでなく、立地を活かしてモビリティサービスの枠さえ超えた幅広いサービスを展開できる可能性を感じさせる。出典/出光興産(出光昭和シェル)

 その昭和シェル石油も、昭和石油とシェル石油が合併して誕生した元売り会社だったことを覚えているだろうか。

 またシェル石油を米国生まれのブランドだと思っている人も多いようだが、実はシェルも日本で誕生したブランドだ。

 日本の燃料油販売は20世紀初めには始められているが、シェルは英国と日本で貿易を営んでいたマーカス・サミュエル(後に初代バーステッド子爵となる)が、貝殻細工の製造販売で成功し、タンカーを購入して石油も手がけるようになった。

 そのため早くから日本でも石油販売を行なってきたのだ。欧州ではシェル石油とオランダのロイヤル・ダッチは早くから提携していたが、2005年に完全に合併してロイヤル・ダッチ・シェルとなり、2016年までは昭和シェル石油はその子会社だった。

 一方の出光興産は1911年に出光商会として設立以来、石油元売りとして発展を続けてきた由緒ある企業だ。それだけに創業家が昭和シェル石油との合併に難色を示して、なかなか話が進まなかったのも理解できる。

 ENEOSは、1888年に設立された日本石油が発端。そこから1940年代まで全国にたくさんあった製油メーカーなどを吸収合併していき、1999年には三菱石油、2008年に九州石油、2010年にジャパンエナジー(前・共同石油)、2017年に東燃ゼネラル石油(2012年に同社が日本のエクソンモービルを吸収)を合併してJXTGエネルギーとなり今年6月、ブランド名だったENEOSに社名変更されている。

 コスモ石油も1900年前後に各地に設立された製油所を合併する形で大協石油として1939年に設立。

 1933年設立の丸善石油と1986年に合併してコスモ石油へとなった。このように石油元売り会社は、銀行や損保会社と同様、統合によって効率化や競争力の向上を図ってきた。

■日本の石油元売りの再編動向(2020年7月現在)

日本のガソリンスタンド銘柄における石油元売りの合併による系譜。会社名ではなく、ガソリンスタンドのブランド名を優先して記載。日石/三菱というふうに/で分離しているのは、元売り会社が合併後もそれぞれのブランドで展開していたことを示す。製作/高根英幸

 ほんの20年前くらい前までは、街中には様々なブランドのガソリンスタンドが点在していた。価格やサービス、立地やブランドなどで、クルマ好きにはお気に入りのガソリンスタンドが存在していたものだ。

 それが不景気になり、さらに環境問題からクルマの燃費が追求されることになって、ガソリンの消費量は年々減少傾向になって、ガソリンスタンドの拠点数も減少&セルフ化により省人力化が進んでいるだけでなく、元売り各社も合理化を求められてきたのである。

 現在、ガソリンスタンドのブランドは出光、シェル(今後アポロに統合)、ENEOS、コスモ、キグナス、SOLATOの6ブランドに集約されてしまった。

 そして業転玉の減少により、ホームセンターなども展開していた独立系のスタンドは徐々に姿を消している状況だ。

 出光興産は今回の新ブランドへの移行によって、燃料油の販売だけでなく、EVの充電設備を備えたり、マイクロEVのシェアリングの拠点とするなど、エネルギー企業としてモビリティの進化に対応していく姿勢を見せている。

 「これから出光SSとシェルSSは統一した新ブランドアポロステーションとして運営していくことになりますが、当社としては現在の6400拠点のSSを維持していけるよう努力していく所存です」(出光興産広報部)。

 化石燃料は使わない方が地球環境のためには優しいのだろうが、あまりにガソリンスタンドが減り過ぎてしまうと、過疎地や給油空白地での問題が大きくなる。

 一時はリッター100円に近づくかに思えたレギュラーガソリンの単価も、中国の経済回復の影響か、このところ徐々にまた上昇してきている。

 コロナ禍により移動が制限されるなか我々ドライバーは、安全で快適な移動のためにクルマを賢く使い、ガソリンを無駄遣いしないよう工夫しながら運転を楽しむことを心がけようではないか。

【画像ギャラリー】石油元売り各社が公表しているハイオクガソリンの中身

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