数多あるクルマのなかでも、人気車になれるのは一握りの存在だ。
人気車には共通した「条件」こそあるものの、人気車になりそうな条件に当てはまっていても、登場するのが早すぎたり、遅すぎたりするだけで売れない場合もあるのが、クルマの難しいところ。
振り返ってみれば「売れてもおかしくないのに…」と思えるクルマが、売れなかった理由は何だったのだろうか? 「売れそうで売れなかった」5台の例から渡辺陽一郎氏が考察。
文:渡辺陽一郎、写真:ホンダ、トヨタ、スバル、マツダ
【画像ギャラリー】シートアレンジが個性的だったビアンテをみる
ホンダ ザッツ/2002年発売
今の日本で最も多く販売されている車種はホンダ N-BOXだ。この前身に位置付けられる軽自動車として、2002年に登場したザッツが挙げられる。
1998年に発売されたライフをベースにしながら、角張った水平基調のボディで車内の広さを強調した。
しかし、販売は低調で、発売の翌年となる2003年の届け出台数は、月平均で1500台前後であった。発表時の月販目標は6000台だから、まったく達成できていない。
一方、ライフは1998年の発売ながら、2002年に入っても月1万台前後を販売して、ザッツの影響を受けなかった。人気の差は明らかだった。
しかもライフは、2003年9月にフルモデルチェンジを行った。ザッツはユーザーをさらに奪われ、2004年の届け出台数は、発売後約2年で800台前後まで下がった。
ザッツが売れなかった理由は、デザインが不評で、機能も中途半端だったからだ。外観を見ると車内が広そうに思えるが、後席の足元空間は1998年登場のライフと同等で意外に狭い。
床と座面の間隔も不足して、座ると膝が持ち上がる。全高は1620mmだから、ベースのライフと15mmしか違わず、荷室もあまり広くない。それなのに価格は相応に上乗せされ、割高な印象も強かった。
そして、2003年に新型になったライフは、ホイールベースを60mm伸ばして後席の足元空間をザッツ以上に広げた。膝の持ち上がる着座姿勢も解消した。インパネの質感、走行安定性でも上まわり、絶好調に売れている。ザッツはますます売れ行きを下げてしまった。
コメント
コメントの使い方