2019年5月のGRスープラ記者発表会で、70スープラ、A80スープラの部品復刻・再販売を発表したTOYOTA GAZOO Racingだが、今度は「トヨタ2000GT」の補給部品復刻を国内・海外で行うと正式発表し、ファンを驚かせた。
1967年に発売から53年が経ったトヨタ2000GTの部品を、なぜ今になって復刻しようと考えたのか? トヨタ2000GTについて振り返りつつ、なぜ今復刻という決断をしたのか? TOYOTA GAZOO Racingの狙いを考察する。
文/片岡英明
写真/TOYOTA、ベストカー編集部
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■当時の傑出したテクノロジーを集約した名車「トヨタ2000GT」
トヨタのレーシング部門を担っているTOYOTA GAZOO Racingが、2020年7月6日に発信したプレスリリースには驚かされた。
その概要は「GRヘリテージパーツプロジェクト」として、往年の名車で、モータースポーツの世界でも活躍した「トヨタ2000GT」の補給パーツを復刻し、国内だけでなく外国向けにも再販売するというものだ。
ご存じのようにトヨタ2000GTは、トヨタのワークスチームを率いてレース活動を行っていた河野二郎氏が、少数の優秀なエンジニアとドライバーを選び、ヤマハ発動機をパートナーに選んで開発した日本で初めての本格的なグランツーリスモである。1964年から開発に着手し、1967年5月に発売を開始した。
メカニズムは、当時の日本車としては傑出したもので、レーシングカーに迫る高い実力を秘めている。初代のロータス・エランと同じ軽量で高強度のX型バックボーンフレームを採用し、サスペンションは4輪ともダブルウイッシュボーン/コイルスプリングの4輪独立懸架、ブレーキは日本初の4輪ディスクだ。
パワーユニットは1988ccの3M型直列6気筒DOHCで、3基のソレックス40PHHキャブレターを装着して2Lエンジンとしては世界トップレベルの実力を誇った。
ロングノーズ&ショートデッキの流麗なクーペデザインは、登場から50年以上になる今でも色褪せない魅力を放っている。ノーズ先端に日本車として初めてリトラクタブル・ヘッドライトを組み込み、全高はレーシングカーのように低い。
インテリアも贅を尽くした造りだ。日本楽器が厳選した高価なウッドパネルを採用し、バケットシートやストップウォッチ付きの時計などを装備した。5速MTが基本だが、1969年8月にマイナーチェンジした後期モデルには「トヨグライド」と呼ぶ3速ATも用意されている。
■337台しか生産されなかった名作 その維持には多大な苦労がある
トヨタとヤマハの叡智を結集した不朽の名作がトヨタ2000GTだ。今もトヨタのイメージリーダーであり、これを超えるクルマは存在しない。イベントに出品すると黒山の人だかりができ、覗き込む人が多いなど、オーラを放っている。あの漂う色香と強い存在感は、現代のスポーツカーにはないものだ。
1967年から1970年までの3年間で、トータルの生産台数は337台と言われている。走行可能なトヨタ2000GTは100台ほどしかない希少車で、海外でも人気が高い。だから中古車価格はウナギのぼりだ。
オークションで1億円をつけたこともある。が、手作りに近いスポーツカーだったし、こんなに長く乗り続けるとはメーカーは考えていなかった。当然、オーナーは整備のための補給パーツの少なさに泣かされている。
トヨタ2000GTに限らず、最近はクラシックカーに興味を持つ人が少なくない。コロナ禍の影響で20年のクラシックカーイベントは大幅に減少した。だが、2019年までは全国各地でクラシックカーのイベントが数多く開催され、そのほとんどが盛況だったのである。
クラシックカーに惹かれるのは、現代のクルマにはないメカニカルな味わいと郷愁を誘うからだ。ブームと言ってもいいだろう。世界をあげてクラシックカーが持てはやされ、販売価格も高騰している。
当然、オーナーは動態保存しようと努めるが、古い愛車を整備できる人は少ない。また、購入した販売ディーラーに整備を依頼しようと思っていても、ボディやエンジンなどのパーツは底をついている。
中古車で手に入れても、公道を走れるように仕上げるのは至難の技だ。そこで30年、40年前のクラシックカーをレストア(走らせられるようにボディやメカニズムを修復)する専門のプロショップが増えてきた。
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