■各メーカーが続々打ち出したヘリテージプログラム
が、レストアと公道復帰を阻む壁となっているのは、パーツの供給体制の不備だ。自動車メーカーは生産終了から10年ほどの期間は補給するパーツを用意している。しかし、20年以上前のクルマになると、残存台数が激減するから多くの需要は期待できない。だから多くの自動車メーカーは長期在庫になるのを嫌い、パーツの製造をやめてしまう。
だが、TOYOTA GAZOO Racingはトヨタ2000GTの補給パーツを復刻させ、純正部品として販売する英断を下している。
現存する台数は少ないから、商売として考えると旨味は少ないはずだ。それでもパーツを復刻しようと考えたのは、トヨタ2000GTがトヨタにとって大切なヘリテージカーであり、数多くの栄光と伝説を持つからである。また、技術の伝承という面もあるだろう。成熟したクルマ社会になったが、20世紀のクルマ文化を振り返ることによって見えてくるものもある。
クラシックカーを礼賛し、20世紀のクルマ文化を見直そうとするのは、世の流れでもあるのだ。欧米の自動車メーカーは自動車博物館の建設に積極的だし、レストア部門を充実させるメーカーも少なくない。
日本でもマツダが2017年12月に、初代のNA型ロードスターのレストア事業に乗り出した。基本メニュー、オプションメニューのほか、フルレストアも行うなど、本気の取り組みだ。
また、日産も2019年に子会社のNISMOから「NISMOヘリテージパーツ」の再販売が発表されている。その第一弾はBNR32型スカイラインGT-Rのパーツだった。また、2020年春にはBNR32型に加え、BCNR33型とBNR34型スカイラインGT-Rにも使えるパーツも追加している。
TOYOTA GAZOO Racingも、GRスープラを記者発表した2019年5月にA70型と後継のA80型スープラのパーツ復刻と再販売を発表した。世の流れはメーカーに大きな貢献を果たしたヘリテージカーのパーツの復刻と再販売になっているのである。
■貴重なクルマ文化遺産を残すためにも期待したいさらなる拡大
トヨタ2000GTの復刻パーツを予定しているのは、5速MTのトランスミッション関係のギアやベアリングキットなどの部品と、ディファレンシャル関係のファイナルギアとリングギアセットボルトだ。
2020年8月から準備が整ったパーツからウェブサイトに公開し、再販売を開始するという。これが第一弾で、希望があれば復刻パーツは増えていくだろう。転売を防止するためにトヨタ2000GTのオーナーだけしか買うことができない。これもいいことだと思う。
トヨタに限らず自動車メーカーは、徐々にではあるが、製造廃止となったパーツの復刻に力を入れるようになってきた。メカニズム関係だけでなく外装や内装パーツも復刻し、再販売としてくくれば、さらに美しいクラシックカーが増えていくはずだ。貴重なクルマ文化遺産を残すためにも今後の展開に期待したい。
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