プリウス&アクアの失速に世代交代の波 もうハイブリッド専用車である必要はない!?

 2020年1~6月は、1位がトヨタ「ライズ」、2位がトヨタ「カローラ」、3位がホンダ「フィット」、4位がトヨタ「ヤリス」、5位が「ノート」と続き、トヨタのハイブリッド車「プリウス」は9位、「アクア」は12位まで後退した。

 プリウスもアクアもハイブリッド専用車として、これまで盤石な地位を築いていたが、トヨタ内にヤリスを筆頭に、ハリアー、RAV4、ヤリスクロスなどハイブリッドを設定した多彩なバリエーションが登場している。

 これからの時代、ただ燃費を求めた専用車は、多様なニーズに対応したほかのモデルに席を譲ることになるのか? 考察していきたい。

文/御堀直嗣
写真/TOYOTA、編集部

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■変化を見せ始めた新車販売動向 順位を下げるハイブリッド専用車

 2020 年に入ってから、新車販売の動向に従来と違った動きがみられるようになった。

 2020年1~6月までの上位5車は、一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)の乗用車ブランド通称名別順位によると、トヨタ「ライズ」、トヨタ「カローラ」、ホンダ「フィット」、トヨタ「ヤリス」、日産「ノート」となっている。昨2019年は、トヨタ「プリウス」、日産「ノート」、トヨタ「アクア」、日産「セレナ」、トヨタ「シエンタ」の順であった。

 去年と今年の比較でわかるのは、ライズ、カローラ、フィット、ヤリスはいずれも新車で、その新車効果が表れているなか、ノートが堅実な販売を続けていること。一方、ほぼベスト3圏内にいたプリウスとアクアが、それぞれ9位と12位に下げている。

2019年11月に発売されたトヨタ「ライズ」。ハイブリッドの設定はないが、2019年11月~2020年6月(8カ月)の販売台数ランキングで、1位を3回、2位を2回獲得する人気ぶりだ

 プリウスは、2015年に現行型へモデルチェンジをして5年目となる。アクアに至っては、2011年に誕生して9年目に入る。ライズなどの新車効果が影響しているのは間違いない。それでも、ことにアクアは一度もフルモデルチェンジをしていないにもかかわらず、2019年までベスト3圏内にいたほど高い人気を保持していた事実にも、また驚かされるのである。ただしそれが、今年になって急速に順位を下げた印象もまた強めている。

 トヨタは、1997年に初代プリウスを発売し、ハイブリッド車(HV)の普及に努めてきた。それでもHVの車種の拡充はかなり慎重に行われ、プリウスの次にエスティマにHVを加えたが、クラウンに搭載されるのはプリウスから11年後の2008年になってからである。

1997年12月に誕生した初代プリウス。エンジンは、新開発の1.5Lハイブリッド専用エンジン1NZ-FXE(58ps/4000rpm)を搭載。燃費を画期的に高め、10・15モード走行燃費で28.0km/Lという低燃費を実現していた
販売好調なヤリス。アクアとボディサイズが近く、ハイブリッドも設定されている。ハイブリッドモデルはWLTCモードで36.0km/L

 カムリには、2011年にHV一本に絞り込むかたちで導入したが、マークXやプレミオなどには結局ハイブリッドは搭載されず、車種もなくなってしまう運命となった。

 2020年1~6月までのベスト10に入るトヨタ車をみていくと、ライズはダイハツ「ロッキー」と共通のためHVはないが、カローラ、ヤリス、シエンタ、アルファードにはいずれもHVの選択肢があり、売れ筋の車種にいずれもHVが加わるような体系となってきたのもわかる。

 こうした状況が、HV専用であるプリウスやアクアの順位を下げる要因のひとつとなっているかもしれない。では、この先HV専用の車種は人気を得にくくなっていくのだろうか。ことに、発売から9年目となるアクアの行方は気になるところだ。

■ハイブリッドの先駆者の苦戦 最先端から遠ざかるプリウス

 まずプリウスについては、HV専用車種として23年間もHVの普及に尽力してきた。そして前型から、プラグインハイブリッド車(PHEV)の車種追加を行い、次への一歩を踏み出している。ことに現行プリウスPHV発売の折には、内山田竹志回答が発表会に登壇し、「HVの次の究極はPHV」と述べ、期待を込めた。

2018年12月に改良された現行型プリウス。燃費性能はWLTCモードは32.1km/Lと、ヤリスHVに及ばない

 しかし、4人乗りであったり、価格もHVに比べ高くなるなどだったりして、現在もPHVの販売はそれほど多くなっていないようだ。マイナーチェンジで、5人乗りになったが、その波及効果はこれからとなるだろう。

 ところでプリウスという車名は、ラテン語の「~に先駆けて」の意味があり、世界で初めてHVを量産市販するにおいて最適な車名であった。しかし今日となって、HVは「~に先駆けて」というより、標準の車種の位置づけに近づいており、海外からもPHEVやマイルドハイブリッドを含めHVであることが一般的になってきている。

プリウスPHV。2019年5月に行った一部改良では、エクステリアの変更はなしで、4人→5人乗りに変更された

 プリウスという車種が今後も存続するとしたら、その車名に見合ったクルマへの進化が必要ではないか。少なくとも、PHEVが基本車種であり、さらにEVも加わり、また自動運転へ向けた運転支援機能においても世界先端の技術を切り拓くことではじめて、「~に先駆けて」という意味にふさわしい商品になっていく。

 プリウスがプリウスである理由は、HVであり続けることではなく、車名の通り世界に先駆けた挑戦の姿を見せることにある。その意味で現行車はもはや最先端ではなくなっている。そしてEVへの一刻も早い転換が求められる。

 ところが、トヨタは少なくとも国内へのEV導入は2030年までにと、ゆっくり考えている。それでは、「~に先駆けて」というプリウスが出る幕はなくなるだろう。

■アクアにヤリスHVという強力ライバル登場 電動化戦略の岐路に立つ

 アクアについては、5ナンバー車のHV専用車種として、5ナンバー車だった初代プリウスが2代目以降は3ナンバー化したのを国内で補う立場にあった。そして、少なくとも昨年までの長い間ベスト3圏内にある人気を保持し続けたのである。

2011年に登場し9年が経過している現行型「アクア」。プリウスと統合されるという説もささやかれている

 トヨタ車としてまったく新しく登場した5ナンバーのアクアを選んだ消費者は、環境に適合しながら身近な存在としての嬉しさを覚えたのではないだろうか。実際、海外では、前型ヤリス(国内ではヴィッツといっていた)にHVを加えて販売してきたのである。

 現行のアクアに乗っている顧客は、新しいことへの挑戦意欲も持つ消費者ともいえるだろう。とするならば、トヨタが国内でEVを発売するに際し、もっとも適切な車種がアクアかもしれない。もちろん、5ナンバー車であることは外せない。

 ただしそれには条件がある。トヨタは、プリウスPHVやRAV4 PHVを販売しながら、充電に対する市場の課題解決にまだ手を打っていない。それは、マンションなど集合住宅に200Vの普通充電を設置できない問題である。

 すでにRAV4 PHVが、近年のSUV(スポーツ多目的車)人気もあって、2020年度内(2021年3月まで)の販売予定台数を完売し、当面は受注できない状況となりながら、集合住宅での充電に対し策を持たないのである。

 もし、アクアがEVとなってフルモデルチェンジした際には、この充電問題を解決しなければEV化の意味はなくなる。一方で、HV専用車種のままでは、これまで通りの人気を維持することは難しいかもしれない。ヤリスのHVという選択肢が、国内にも現れたからである。

 トヨタは、一刻も早くEV普及のための車種選定と、上記の充電課題に対する対処を行わなければ、やがて敗者となっていく可能性もなくはないのではないか。

■2020年1~6月の累計販売台数
1位:トヨタ ライズ    5万8492台
2位:トヨタ カローラ   5万7235台
3位:ホンダ フィット   5万0029台
4位:トヨタ ヤリス    4万8129台
5位:日産 ノート     4万1707台
6位:トヨタ シエンタ   4万0194台
7位:ホンダ フリード   3万8844台
8位:トヨタ ルーミー   3万7622台
9位:トヨタ プリウス   3万6630台
10位:トヨタ アルファード 3万6597台
11位:日産 セレナ     3万5599台
12位:トヨタ アクア    3万4581台

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