トヨタが取り扱うSUVは2020年9月発売のヤリスクロスが加わると、なんと8車種にもなる。コンパクトSUVのC-HRやライズ、大人気のハリアーやRAV4、そしてランドクルーザーに至るまで、キャラクターは様々だ。
この中でも最も歴史が長く、現在主流の都市型SUVとは一線を画す存在になっているのが、ランクルとプラドだ。この2車種を昔から扱う、トヨタ店のSUV販売戦略を取材した。
専売店として長くSUVを取り扱ってきたトヨタ店であるが、売れ筋SUVたちを手に入れ、販売現場はどう変わったのだろうか。
文:佐々木 亘
写真:TOYOTA ベストカーWeb編集部
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ランクルは「特別な存在」
2020年7月の自販連乗用車ブランド通称名別順位から、SUVカテゴリーでのランキングを見ていくと、1位にライズ(12283台)、2位にハリアー(9388台)、3位にRAV4(4963台)と、トヨタSUVがトップ3を独占、さらに、7位にC-HR(2160台)、10位にランドクルーザー(1794台)が入っており、トップ10にトヨタSUVが5台も入っている。
7月の販売台数だけをみれば、トヨタの他のSUVたちと比べて、それほどでもない成績ではあるが、ランクルの凄さは単月の数にはない。多くの車種が季節変動やモデルチェンジなどにより、販売台数の大きな乱高下を繰り返すのに対し、ランドクルーザーは販売台数の上下幅が非常に小さい。
月別の販売ランキングを見ていくと、全体の30位台に必ずと言っていいほど顔を出すのがランドクルーザーだ。毎月1,500~2,000台程の販売台数で、常に一定の数が売れ続ける、特別なクルマなのである。
売れ筋新型車でも「勧めない」
筆者がトヨタ営業マン時代に、ランドクルーザーシリーズの販売をしていて感じたのが「指名買い」の多さだ。ランクルとプラドは、ほとんど他メーカー競合無しの指名買いだった。ランクルを求める顧客は、ランクルにしか興味がないのだ。
指名買いでの販売は、一見すると簡単に売れているように見えるが、顧客の期待値が最も高く、購入後の顧客対応が難しい。長年にわたり上級車種の指名買いを受け続けるトヨタ店は、それだけ接遇が高い、ということだろう。
このような指名買い車種がトヨタ店には多い。クラウン、センチュリーなどもその代表格である。多くの指名買いに対応してきたトヨタ店は、この売り方に慣れてしまっている。トヨタ店の営業マンに、売れ筋SUVを手に入れた現状を聞いた。
「ハリアーへの買い替えは、トヨタだとヴィッツ以上マークX以下のクルマから多く発生しています。もちろん他メーカーからの乗り換えも多いです。でも、いくら売れているハリアーでも、ランクルやプラドに乗っている自社オーナーには勧めません。やはり、ランクルとハリアーは、同じSUVでも、全く違いますから。」
営業マンが売れ筋新型車を勧めない、というまさかの事態だ。数店舗の数人の営業マンの様子なので、トヨタ店の全店舗に、同様の姿勢が当てはまるとは言えないが、お客様に接するスタッフ一人ひとりにまで、組織としての意識合わせが行き届いていないと、うまくいくことは少ない。
日本の新車販売のボリュームは既に頭打ち状態。より短いサイクルで買い替えを促していかなければ、今後の見通しは厳しい。
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