■販売現場が語る ワゴン人気低迷でもカローラツーリングが売れるワケ
まずワゴンの車種数の減少がある。日本におけるワゴンは、抜本的に車内の広いミニバンに押されて売れ行きを下げ、車種数も減った。しかしワゴンの需要が消滅したわけではない。需要を車種数が下まわり、コンパクトなワゴンの需要がカローラツーリングに集中した。
コンパクトワゴンにはシャトルもあるが、フィットをベースに開発されたから、後席と荷室が広い代わりに外観のワゴンらしさが乏しい。ミニバンに近いデザインだから、ワゴンのスマートさを重視するユーザーは、設計も新しいカローラツーリングを選ぶ。
特に中高年齢層のユーザーは、1990年代の中盤に短期間だけ発生したワゴンブームを経験している。この時には、1992年に発売された初代カルディナが、1995年になって登録台数を前年の1.6倍に急増させた。
トヨタ「ハイラックスサーフ」や三菱「パジェロ」に代わり、トヨタ「カルディナ」、スバル「レガシィツーリングワゴン」、日産「アベニール」などでスキーに出かけるトレンドも生まれた。
この時代にワゴンを所有したり憧れた世代には、今でもワゴンを好むユーザーがいる。コンパクトで割安なワゴンを探すと、真っ先に候補に挙がるのがカローラツーリングだ。
このほかにどのような人達がカローラツーリングを購入しているのか、販売店に尋ねると以下のような返答であった。
「従来型を含めて、歴代カローラフィールダーはいずれも好調に売れたので、保有台数も豊富です。そのためにカローラフィールダーから、新型のカローラツーリングに乗り替えるお客様が多いです」
「また今では現行プリウスが発売されて4年以上を経過するため、先代型を含めて、プリウスのお客様がカローラツーリングに乗り替えることもあります。カローラツーリングはワゴンなので、プリウスと同様に荷室が使いやすいです」
「またカローラツーリングのハイブリッドシステムとプラットフォームは、今のプリウスと同じなので、一層乗り替えやすいでしょう。このほか子育てを終えたお客様が、ノアのようなミニバンからカローラツーリングに乗り替えることもあります。さまざまな需要に支えられて、カローラツーリングは売れ行きを伸ばしています」
カローラツーリング ハイブリッドSの価格は265万1000円、プリウスSは265万5000円だ。従来のヒエラルキーなら、プリウスを上級、カローラツーリングハイブリッドはベーシックな位置付けにしたが、今は価格を含めて並列の関係にある。もはや「安いからカローラツーリング」という選び方ではなく、相応の満足感が得られるためにプリウスからの乗り替えも進んだ。
このほか2020年5月から、トヨタの全店が全車を販売する体制に移行したことも、カローラツーリングの売れ行きを押し上げた。今までのカローラシリーズは、カローラ店の専売で、店舗数は約1200箇所であった。それが今では全国の約4600店舗で購入できる。
そうなればカローラツーリングのような人気車は有利だ。逆に以前から全店で売られていた「プリウス」などは、カローラツーリングに顧客を奪われる。2020年5月以降のプリウスの登録台数(少数のPHVとαを含む)を見ると、コロナ禍の影響もあるが、対前年比は30~40%と低迷する。前年に比べて売れ行きを60~70%も落とした。
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