≪ROUND3 コンパクトミニバン≫1位 シエンタ(5344台)× 2位 フリード(5302台)
2020年7月のコンパクトミニバンは接戦だった。1位のトヨタ「シエンタ」と2位のホンダ「フリード」の差は42台だ。それでも2020年1〜7月の累計登録台数は、シエンタが4万5538台、フリードは4万4146台で1392台の差が付いた。2019年は1カ月平均でも、シエンタが2000台以上多い。フリードも改良を受けて追い上げるが、シエンタには勝てない。
シエンタが好調な理由は、トヨタ車で幅広いニーズを満たせたからだ。ヴォクシー系3姉妹車から小さなクルマに乗り替える時、3列目シートを失いたくないと考えればシエンタを選ぶ。子供が増えてコンパクトカーからサイズアップする時もシエンタが最適だ。ポルテ&スペイドやルーミー&タンクも車内は広いが、シエンタなら3列シートが備わり、ハイブリッドも用意される。
トヨタ全店の約4600店舗でこのような動きが生じると、販売面でも有利になる。このほかトヨタ車とあってレンタカーやカーシェアの需要も多く、フリードに差をつけた。
〈TEXT/渡辺陽一郎〉
【シエンタとフリードとの大きな差】
●シエンタは幅広いニーズ
●トヨタ全店での扱いに
●フリードも改良で追い上げ
≪ROUND4 コンパクトハイトワゴン≫1位 ルーミー(6528台)× 2位 ソリオ(3430台)
1位はトヨタ「ルーミー」、2位はトヨタ「タンク」だが、この2車種は姉妹車同士だ。そこでスズキ「ソリオ」を2位に繰り上げた。2020年7月の登録台数には3098台の差があり、2倍近い開きが生じた。
商品力はソリオが勝る。ルーミーはダイハツとスズキの激烈な軽自動車販売合戦により、2014年の売れゆきが急増して(同年の軽自動車比率は41%に達した)、小型車を強化すべく2年の短期間で開発された。そのために作りが粗く、後席の座り心地、乗り心地、動力性能、ノイズ、質感などでソリオに負けている。
それでもルーミーが多く売れる理由は、まず荷室と収納設備に力を入れたことだ。荷室の床を反転させると汚れ防止シートが備わり、自転車を積んだ後も清掃しやすい。収納設備や各種ホルダーも豊富で、使い勝手を訴求した。
ふたつ目は外観だ。ルーミーは、姉妹車のタンクと比べてもフロントマスクが派手で一般受けする形状だ。3つ目はトヨタの膨大な販売網。スズキでは軽自動車比率が80%を上回り、ルーミーほど売れゆきを伸ばせない。
〈TEXT/渡辺陽一郎〉
【ルーミーとソリオとの大きな差】
●商品力はソリオが上
●ルーミーは収納で勝る
●外観もルーミーのほうが派手
≪ROUND5 Lクラスミニバン≫1位 アルファード(8448台)× 2位 ヴェルファイア(1289台)
両車は基本的に同じクルマだが、登録台数はトヨタ「アルファード」が7159台多い。約7倍の開きが生じた。
以前の登録台数はトヨタ「ヴェルファイア」が多かった。派手な外観で人気を高め、販売店舗数もアルファードのトヨペット店は全国に約1000箇所、ネッツ店は約1600箇所だ(いずれも2010年頃)。従ってヴェルファイアはアルファードの1.7倍売れていた。
ところが2015年登場の現行型でアルファードが派手さを増すと、販売格差も縮まった。さらに2017年のマイナーチェンジでも、デザインを変えると、順位が逆転してアルファードがヴェルファイアの1.4倍売れるようになった。
そして2020年5月に4系列の全店舗で全車を扱うようになると、新規顧客に加えて、ネッツ店でもヴェルファイアからアルファードへの乗り替えが進んだ。その結果、7倍の格差に至った。全店で全車を扱うと、車種間の販売格差が広がり、廃止すべき車種も自動的に選別される。このリストラもトヨタが全店/全車併売となった理由のひとつだ。
〈TEXT/渡辺陽一郎〉
【アルファードとヴェルファイアとの大きな差】
●アルファードの外観が派手
●トヨタ全店販売の影響
●次期型は統合へ
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