販売台数1位と2位のクルマとでは、いったい何がどう違っているのだろうか?
カテゴリーによって1位と2位との販売台数差の大小はあるにせよ、クルマの本質という部分ではどんな違いがあるのか、本企画では一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)がまとめている2020年7月の販売台数ランキングをもとに検証してみた。
※本稿は2020年8月のものです
文/渡辺陽一郎、永田恵一
写真/編集部、TOYOTA
初出:『ベストカー』 2020年9月26日号
【画像ギャラリー】なぜここまで差が開いた!? 各カテゴリーの1位と2位を一気におさらい!
≪ROUND1 コンパクトカー≫1位 ヤリス(1万4004台)× 2位 フィット(9213台)
コンパクトカーの1位はトヨタ「ヤリス」、2位はホンダ「フィット」で、2020年7月の登録台数には4791台の差が生じた。両車とも発売は2020年2月だが、ヤリスはフィットの約1.5倍売れた。
コンパクトカーは競争が激しく、価格の割安感は両車とも同等だ。機能も一長一短で、ヤリスは外観に塊感があってカッコいい。内装も上質に仕上げた。運転感覚は少し機敏で、安定性も優れている。
対するフィットは、燃料タンクを前席の下に設置して後席はミドルセダン並みに広く、荷室容量も大きい。視界は前後左右とも良好だ。両車はライバル同士なのに特徴は異なり、実力は互角で共存可能な間柄だ。
それでも登録台数に約1.5倍の差が生じた背景には、まずヤリスの目新しいデザインがある。なおかつ販売面の事情も影響した。ヤリスは2020年4月までは大半の地域でネッツトヨタ店の専売だったが、5月にトヨタの販売体制が変わり、今では全国の約4600店舗が扱うからだ。ホンダの約2200店舗に比べると販売規模は2倍以上で、ヤリスはトヨタの最多販売車種になった。
一方、ホンダでは国内販売1位のN-BOXが7月に1万6222台届け出されている。フィットはホンダ車のなかでも2位だ。N-WGNも6169台届け出され、フィットではなく軽自動車を選ぶ顧客も多い。フィットの販売力が軽自動車に奪われた事情もあり、登録台数ではヤリスに大差を付けられた。
〈TEXT/渡辺陽一郎〉
【ヤリスとフィットとの大きな差】
●実力はほぼ互角
●ヤリスの外観に新しさ
●販売力がフィットの2倍
≪ROUND2 ミドルSUV≫1位 ハリアー(9388台)× 2位 RAV4(4963台)
ミドルSUVの1位はトヨタ「ハリアー」、2位はトヨタ「RAV4」で4425台の差が生じた。比率に換算すると2倍近い開きがある。2020年7月に国内で登録された小型/普通車のうち、51%がトヨタ車だから、1、2位の両方を占めても不思議はない。
両車はエンジンやプラットフォームの基本部分を共通化して、ホイールベースも等しい。居住空間の広さも同等だが、車両の性格は異なる。ハリアーは内外装の質を高めて都会的だ。RAV4は前輪駆動ベースのSUVながら、外観は野性的で、悪路走破力を高めた4WDも用意する。今は都会的なSUVが増えた反動もあり、野性味を伴うRAV4が人気を高めた。
それでもハリアーが2倍近く売れる理由は、まず新型車であるためだ。発売は2020年6月で、RAV4は2019年4月だからハリアーが有利になった。乗り替え需要もハリアーが多い。RAV4は一時国内販売を中断したから、ユーザーも離れた。
グレード構成も異なる。RAV4は車両の性格に基づいて4WDが中心になり、2WDは価格が最も安い「X」のみに用意するが、ハリアーなら全グレードで選択できる。
〈TEXT/渡辺陽一郎〉
【ハリアーとRAV4との大きな差】
●車両の性格が違う
●需要もハリアー有利
●RAV4は4WD中心
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