■やはり最終的には人と人……オンラインでは信頼関係構築に支障が
多くのセールスマンから聞かれたのは、「会ったこともないお客様に思い切った値引き条件の提示はできない」というものであった。
大半の新車購入客は“善良な消費者”なのだが、なかには“悪意のある消費者”もまだまだ目立つ。反社会的勢力による資金洗浄を目的とした新車購入などはその代表格であろう。
また、悪意はないのだがSNS上でやりとりを公開されるリスクもセールスマンは危惧している。
「店頭商談でもやりとりをSNS上に公開されるお客様は意外に多いです。生身の商談ではこちらもお話をしているなかでそのようなリスクを見極め、値引き条件を抑えるなどリスクヘッジも取りやすいですが、オンラインだと肌感覚で伝わるものがありませんので、どうしても“身構えて”しまいますね」。
一度オンライン商談を申し込んでから連絡を待つというのもシステム上問題があるだろう。
数百万円の買い物をするのだから“欲しい”とお客はテンションが上がっているなか申し込んでくることが多いだろう。
それなのに現状のオンライン商談ではディーラー自ら、後日連絡という“冷却期間”を与えることになる。
“鉄は熱いうちに打て”が新車販売の鉄則。一度冷静になったお客のテンションを再びアップさせるのは至難の業ともいえよう。
アメリカでは各ディーラーにオンライン専門の販売スタッフを置いているのだが、日本ではご多聞に漏れず、新車販売業界も働き手不足が深刻となっており、人員的に余裕がない。
各店舗スタッフ(定員割れしていることも多い)が店頭商談とともに対応しなくてはならないので、事前申し込みということになっているのである。
■オンライン導入はコロナ対策のアピール? 日本ではメリットが薄いと言わざるを得ないか
ある販売現場では、「オンライン商談の導入は『うちもこれだけ新型コロナウイルス感染予防対策を行っています』というパフォーマンスに過ぎない」とし、なかなか契約までには至らないのが現実との話を聞くことができた。
アメリカのように、WEB上で誰でも新車の販売原価を調べることができるなど、客観的であり、第三者発信の商談のたたきとなるような情報提供がなければ、店頭商談より値引き条件が渋かったということにもなりかない。(リンク先)
日本におけるオンライン商談の現状は消費者メリットが薄いともいわざるをえないだろう。
新車購入時には下取り査定(新車を購入したディーラーが愛車を引き取る/店頭で査定を行うのが大原則)が当たり前というのもネックとなっている。
アメリカではデジタル時代以前から個人間売買がかなり普及しているし、中国も中古車のオンラインでの売買を急速に進め、あっという間に当たり前のように広まった。(リンク先)
相手が個人か業者かは問わずとも、オンラインでの下取り車買い取りシステムなどを当たり前のように普及させないと、セールスマンとの接触機会はなかなか減らすことはできないだろう。
完全ペーパーレスなど、新車販売の世界も行政も巻き込んで新しい生活様式に合わせた、革命的ともいえる新たなシステム構築を実施するのがまず先の話である。
ただし輸入車ディーラーでは、オンライン商談が好調に推移しているとのこと。オンライン限定販売車なども用意するブランドもあるし、富裕層のセカンドカーやサードカーなどの需要においては、手軽に新車購入できるという側面で受け入れられているようである。
ただ、アメリカや中国のような、“フルオンライン化”には至っていない状況は同じだ。
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