■競合で気になるのは独自路線のライズよりヤリス
しかしそのいっぽうで、「ライズ」には5ナンバーサイズのSUVという強い個性がある。コンパクトSUVのなかでも、特に運転しやすい。外観はトヨタ「RAV4」をコンパクトにしたようなデザインだから、悪路向けのSUVに似た野性味も感じられる。最近はSUVの売れ方に、原点回帰の傾向も生じて、RAV4が人気を高めた。ライズの外観は今のSUVのトレンドに沿っている。
しかもライズの価格は、「2WD・Z」が206万円と安い。ヤリスクロスにノーマルエンジンを搭載した「2WD・Z」の221万円に比べると、ライズ「Z」は15万円下まわる。そこに独特の価値も加わるから、ライズは今後も安定的に売れる可能性が高い。
むしろ気になるのは、コンパクトカーとなるヤリスとの競争だ。販売店からは「以前からヤリスを検討していた何人かのお客様は、購入対象を新発売されたヤリスクロスに変更しています」という話も聞かれる。
ヤリスクロスの価格は、同等の装備を採用したキックスやヴェゼルに比べて20万円ほど安い。そのためにヤリスとヤリスクロスの価格差も、アルミホイールなど装備の違いを補正すると、実質18万円前後に縮まる。
この価格差なら、ヤリスとヤリスクロスで選択に迷うこともあるだろう。2020年9月の時点では、ヤリス単体(ヤリスクロスを除く)の登録台数は1万4600台であった。4月から7月のヤリスの登録台数は、1万台から1万4000台だから、ヤリスクロスを加えた9月もヤリスの売れ行きは下がっていない。この動向が今後も続くのか、という話だ。
ちなみに2020年9月の小型/普通車登録台数ランキングのデータを見ると、トヨタ車が上位を独占した。
自販連のデータでは、1位:トヨタ「ヤリス+ヤリスクロス」(2万2066台)、2位:トヨタ「カローラシリーズ」(1万3579台)、3位:トヨタ「ライズ」(1万3077台)、4位:トヨタ「アルファード」(1万436台)、5位:トヨタ「ハリアー」(8979台)と続き、トップ5車はすべてトヨタだ。このあと、6位にホンダ「フィット」(8922台)が入ったが、7位は再びトヨタ「ルーミー」(8084台)になる。
トヨタが上位を独占した理由は2つある。まず軽自動車が国内で新車販売されるクルマの38%を占めたことだ。以前のホンダは小型/普通車が中心だったが、今では国内で新車販売されるクルマの54%が軽自動車になる。日産も軽自動車比率が47%と高い。その結果、トヨタの小型/普通車市場におけるシェアは約50%になった。小型/普通車登録台数ランキングの上位に、トヨタ車ばかり並ぶのも当然だ。
2つ目の理由は、トヨタが国内の全店で全車を扱うようになったこと(レクサスは除く)。この影響で人気車は売れ行きをさらに伸ばし、不人気車は低迷している。2020年9月には、アルファードが1万台以上登録され、小型/普通車の4位に入った。昨年9月に比べると、2020年の登録台数は160%に達する。逆に姉妹車のヴェルファイアは1273台に激減して、アルファードの12%しか売れなかった。
ルーミー&タンクの両姉妹車も、2020年9月のマイナーチェンジで後者が廃止され、ルーミーがランキングの上位に喰い込んだ。
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