■アメリカの若者をターゲットに開発された逆輸入車
●ホンダ エレメント(2003年4月〜2005年7月)
ジェネレーションYと呼ばれるアメリカの若者たちをターゲットに開発されたクロスオーバーSUVがホンダの意欲作、エレメントだ。
ライフガードステーションをモチーフにしたエクステリアデザインは個性的で、シンプルな面だけの構成だが、力強いし、迫力もある。
ドアは左右に開く観音開きとした。Bピラーレスだから開口は大きいし、開放的だ。また、リアには上下に2分割で大きく開くクラムシェルテールゲートを採用した。機能性に関しては満点だったのだ。
これまたアメリカからのいわゆる逆輸入車である。日本にはアコードと同じ2.4Lの直列4気筒DOHC i-VTECエンジンにインパネシフトの4速ATを組み合わせた仕様が導入された。駆動方式はデュアルポンプ式のフルタイム4WDだ。
キャビンは広く、前席はウォークスルーできるから、座席の移動もラクだった。シートは防水処理し、しかも大振りだから気持ちよく座れる。ラゲッジルームも防水性を持つワイパブルフロアだ。たくさん荷物を詰めるだけでなく、ロアゲートに座ることもできる。
日本での発売は2003年4月だった。アメリカ育ちらしい楽しい気分にさせてくれるレジャーカーで、ワゴンにもミニバンにも、そしてSUVにもなる多彩な感覚も魅力だ。
が、デビューが早すぎたのか、日本では鳴かず飛ばずで2005年夏に販売を終了している。1815㎜の全幅も、当時としては広かったから二の足を踏んだ人も多かったのだろう。今なら売れていたはずだ。その証拠に、今でも中古車は高値を付けている。
■時代が早すぎたクロスオーバーSUVの先駆け
●スズキ X-90(1995年10月〜1998年12月)
1993年秋の第30回東京モーターショーに、スズキは初代エスクードのショートボディをベースにした2シーターのクロスオーバーSUVを参考出品している。それが「X90」だ。
全長はベースとなったエスクードより長く、全幅も広げられているが、背は低い。ラダーフレームだが、オンロードでの走りを強く意識し、キュートなデザインと開放感あふれるガラス製のTバールーフが目を引いた。インテリアもセダンライクなデザインだ。
エンジンはエスクードと同じ1.6ℓのG16A型直列4気筒SOHC4バルブを搭載している。駆動方式はハイ/ロー2段の副変速機を備えたパートタイム4WDだ。
1995年10月、このショーカーは「X-90」と表記を変え、市販に移された。今につながるクロスオーバーSUVの先駆けで、メインターゲットは北米である。
が、日本では販売が低迷し、1998年に販売を終了している。販売台数は1300台あまりにとどまり、不人気車のレッテルを貼られたが、企画そのものは悪くなかったと思う。
致命的だったのは、2人乗りだったし、時代が早かったことだ。4人乗りだったら違う評価になっていたはずである。ちょっと先走りしてしまったようだ。
■あえて全高を低く抑えたスペシャリティKカー
●ダイハツ ソニカ(2006年6月〜2009年6月)
フルオープンのコペンによって新境地を切り拓いたダイハツは、2005年秋の東京モーターショーに「Sケーツアラー」を参考出品した。これを量産に移したスペシャリティ感覚の軽自動車がソニカだ。
2006年6月に登場したが、主流となっているハイトワゴンではない。全高を立体駐車場が使える高さに抑え、シルエットもクーペのように伸びやかだった。今見ても洗練されたデザインだと思うし、インテリアの見栄えもいい。
エンジンは直列3気筒658ccのDOHCとDOHCターボを搭載。無段変速機のCVTも世界初のインプットリダクション式3軸ギアトレーンを採用した。当時のダイハツとしては珍しくスタビライザーを全車に標準装備し、ハンドリングは軽快だ。安心感のある走りを披露し、静粛性も軽自動車レベルを超えている。
上質な軽スペシャリティだったが、広さと積載能力を優先する人が多かったため、強固なハイトワゴンとスーパーハイトワゴンの牙城を切り崩すことはできなかった。販売は低迷し、3年ほどで生産を終了。1代限りで消えていったのである。
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