■セダン RV ミニバン SUV…ユーザーの嗜好の狭間で試行錯誤を重ねたウイングロード
サイズも価格も手頃で、それなりに重宝されていた日産 ウイングロード。しかしそれが3代目で消滅してしまった理由。
それは、コアな自動車好きではない一般的なユーザー――つまりは新車という商品の主なユーザーの「嗜好の変化」です。
1970年代から80年代にかけては、それこそ「街道レーサー」的な国産スポーツモデルや「ホットハッチ」と呼ばれる車、あるいは「上質なセダン」が一般的にも人気を集め、それらを所有し運転することが「カッコいい」とされていた時代でした。
しかし1990年代初頭頃からは、当時の言葉で言う「RV」に乗り、車で走ること自体ではなく「車に乗ってどこかへ行き、行った先で何らかの野外活動を楽しむ」ことが「カッコいい/ステキ/楽しい」と認識される時代になりました。
そういった野外活動によくマッチするのが、いわゆるクロカン四駆やステーションワゴンです。
そのため、四輪駆動車の性能とイメージを好む人は三菱パジェロなどを購入し、悪路系に興味と必要性がない人は、各社から出ていたステーションワゴンをこぞって購入しました。
そういった流れのなかで初代ウイングロードは誕生し、2代目後期型のプチヒットへとつながっていくわけですが、そうこうするうちに、世の中には「コアな自動車好きではない人にとってはもっといいモノ」が台頭してきました。
それは「ミニバン」です。
コアな自動車マニアや運転自体がお好きはさておき、2000年代以降の一般期なユーザーは、背が高くて室内が広い車のほうが「便利でおトクで快適」と考えます。
そのため当然ながら、ある意味狭苦しい(?)ステーションワゴンよりも、広々としたミニバンを選択するようになります。
もちろん「俺は(私は)ミニバンの運転フィールは好かん!」という車好き、運転好きもそれなりにいますので、そういった人は、ミニバンではなくステーションワゴンを買ったでしょう。
しかしそういった人は「マニア」ですので、日産 ウイングロードのような車種ではなく、より本格的なスバル レガシィ ツーリングワゴンあたりを選ぶのが一般的です。
まぁ中には「このシンプルな下駄っぽい感じが逆に最高なんだよ!」という感じでウイングロード的なワゴンを買った人もいました。
しかしそういった嗜好を持つ人の数は、「ミニバン的なモノを好む主流派」や「レガシィ的なモノを好む王道愛好家」と比べれば少なかったでしょう。
さらに加えて日産ウイングロードは3代目へのモデルチェンジ時に、シンプル系のデザインからゴテゴテ系のデザインに変わってしまいました。
そのためウイングロードは「シンプルな下駄」を好む層からの支持すらも失ったのです。
そうこうするうちにミニバンブームは下火となりましたが、今度は「SUVブーム」が勃興。
そうなると、言わば「中途半端なステーションワゴン」である3代目のウイングロードには出る幕がなくなるため、放置の末に廃番となったのでした。
相変わらずSUVブームは続いていますが、新型スバル レヴォーグのような本格系ステーションワゴンは今後、まあまあ盛り上がるかもしれません。
しかしウイングロード的な「悪くはないし便利なんだけど、(一般的なユーザーの視点で言うと)もっと便利なモノがほかにある」と考えられてしまう5ナンバーサイズの安価なステーションワゴンは、今後もしばらくは「出る幕がない」という状態が続くことでしょう。
■日産 ウイングロード(3代目)主要諸元
・全長×全幅×全高:4440mm×1695mm×1505mm
・ホイールベース:2600mm
・車重:1220kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1498cc
・最高出力:109ps/6000rpm
・最大トルク:15.1kgm/4400rpm
・燃費:17.2km/L(JC08モード)
・価格:190万800円(2014年式 15M)
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