レクサス日本上陸から15年 販売過去最高の裏で見え隠れする「足りないもの」


レクサスのおもてなし精神

東京・高輪に開設されたレクサスショールーム

 ここで思い出すのはレクサスが国内市場に初めて参入した時のことだ。東京・高輪に完成したショールームにプレス関係者を招き内覧会を催した。

 これまでの自動車ディーラーとは異なるデザイン優先のショールームや建物の中に入ると、優雅な空間が広がっていた。

 商談用のソファーに座ると、係の女性がやってきて、膝まづいて、こちらの要件を聞いてきた。レクサスの「おもてなし」だった。 

 あの時から15年。今でもレクサスのショールームはあの時と同じようにラグジュアリーな雰囲気の空間が残されている。

 開業当時からの「おもてなし」の心が、今でもレクサスのディーラーにはきちんと残されているのだ。

 レクサスを立ち上げるキッカケになったのは、世界で通用する高級車作りにチャレンジするためだった。

 それには既存のトヨタブランドでは力不足と考え、新しいブランドを作り出したのだ。新しい高級ブランドはプライドと同時に、商売としての利点もあった。

 高級車は価格も高い。高く売れるクルマを作り、値引きもせず、定価で販売すれば1台当たりの儲けも大きい。

 実際にレクサスの販売台数はトヨタ系の販売店に比べて販売台数は少ないが、経営は安定してるという。

 それまでアリストという名のアッパーミドルセダンを3代目にフルチェンジし、GSというレクサスのモデルにしたが、アリスト時代は3Lで400万円を切っていた価格を、3.5Lにして520万円にアップしたのだ。それでもGSは売れた。

 当時、ディーラーに行くと、慇懃無礼とも思えるセールスマンと高級なインテリアの店内に圧倒された、という話を耳にした。

 セールスマンは、高級輸入車販売で有名なヤナセから大勢、引き抜いている、という実話も耳にした。そして、商談に入ると、値引きは一切なし。値引きを持ち出す雰囲気を作らせなかったのだ。

 このディーラーのホスピタリティは今も変わっていない。「おもてなし」の精神。レクサス開業当時からのディーラーの心意気は変わっていないのだ。

今のレクサスに足りないものはクルマを製造する側に……

2020年初冬の発売を予定しているLSのマイナーチェンジモデル。小型3眼ランプユニットとL字を際立たせたクリアランスランプの下に「ブレードスキャンAHS(アダプティブハイビームシステム)」を採用。また先進運転支援システム「Lexus Teammate」や静粛性、乗り心地が向上
量産車初のデジタルサイドミラーを採用したミドルセダンのESは2018年10月に発売
2020年11月5日に発売されたビッグマイナーチェンジ版のレクサスIS。デビューから7年で、フルモデルチェンジかと思われたのだがビッグマイナーチェンジにとどまった

 ここまでレクサスに関して、ディーラーやセールスの話を展開してきた。つまりクルマを売る側の話だ。今度は、レクサス=トヨタは自動車メーカーだから、クルマを製造する側として見ていきたい。

 15年前、レクサスが立ち上がった時、レクサスセンターの役員、デザイナー、エンジニアたちは、レクサスブランドを構築するために一丸となっていた。

 メーカー(トヨタ)も、レクサスの人員はレクサスらしさを行き渡らせるためにトヨタから送りこまない、と言っていた。高級車作りには、それなりの知識と意識が必要だから、とも言っていた。

 ところが何年か経過し、レクサスから役員が一人、二人と交代していくとメンバーチェンジが始まった。エンジニアも交代し始めた。

 「高級車作りはそれなりの経験や体験がなければ」と言っていたのだが、ある時、試乗会でエンジニアと話をしていたら、実はカローラの開発を最近までやってました、という人がいて結構驚いたことがあった。カローラからレクサスだ。「今、勉強中です」と言ったエンジニアの顔が忘れられない。

 最近では、現行LSがデビューした今から3年前のこと、試乗してみると4WDモデルの足回りにやや不安なところがあった。

 それをエンジニアに伝えたところ、「4WDはまだちゃんとしていないんです」と言われた。LSといえばレクサスの最上級フラッグシップモデル。それを一部とはいえ未完のまま発売してしまう、ということに驚かされた。

 さらにLSの後に発売されたESに試乗してみると、これがかなり完成度が高く、走行性能ではLSを上回る部分もあった。

 このことをESの担当者に伝えると、「あっち(LS)はいろいろとあって」というようなことで言葉を濁されてしまった。 

 クルマ作りに関して、レクサスの完成度はまだまだ。デザインに関しては、スピンドルグリルで一体感を表現することでは成功したといえるが、総合的なクルマ作りに一本貫いている信念は見えてこない。ここがメルセデスやBMWとの違いではないだろうか。

 先日、ある中小企業の経営者が、税理士からアドバイスされた。

 「メルセデスやBMWは買わないで下さい。お金があっても、せめてレクサスかアウディを」と言われたそうだ。

 メルセデスベンツSクラスのエントリーモデル、S450が1192万円、レクサスLS500バージョンLが1345万円。

 でもたいていの人はSクラスのほうが断然高価で、ステータスがあると思うだろう。それでよいのだろうか?

 レクサスに足りないもの、つまりレクサスが目指してほしいのは、日本的高級車ではなく世界の高級車オーナーに認められるクルマ作りなのだ。

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