レクサス日本上陸から15年 販売過去最高の裏で見え隠れする「足りないもの」

今のレクサスに足りないものはクルマを製造する側に……

2020年初冬の発売を予定しているLSのマイナーチェンジモデル。小型3眼ランプユニットとL字を際立たせたクリアランスランプの下に「ブレードスキャンAHS(アダプティブハイビームシステム)」を採用。また先進運転支援システム「Lexus Teammate」や静粛性、乗り心地が向上
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量産車初のデジタルサイドミラーを採用したミドルセダンのESは2018年10月に発売
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2020年11月5日に発売されたビッグマイナーチェンジ版のレクサスIS。デビューから7年で、フルモデルチェンジかと思われたのだがビッグマイナーチェンジにとどまった
2020年11月5日に発売されたビッグマイナーチェンジ版のレクサスIS。デビューから7年で、フルモデルチェンジかと思われたのだがビッグマイナーチェンジにとどまった

 ここまでレクサスに関して、ディーラーやセールスの話を展開してきた。つまりクルマを売る側の話だ。今度は、レクサス=トヨタは自動車メーカーだから、クルマを製造する側として見ていきたい。

 15年前、レクサスが立ち上がった時、レクサスセンターの役員、デザイナー、エンジニアたちは、レクサスブランドを構築するために一丸となっていた。

 メーカー(トヨタ)も、レクサスの人員はレクサスらしさを行き渡らせるためにトヨタから送りこまない、と言っていた。高級車作りには、それなりの知識と意識が必要だから、とも言っていた。

 ところが何年か経過し、レクサスから役員が一人、二人と交代していくとメンバーチェンジが始まった。エンジニアも交代し始めた。

 「高級車作りはそれなりの経験や体験がなければ」と言っていたのだが、ある時、試乗会でエンジニアと話をしていたら、実はカローラの開発を最近までやってました、という人がいて結構驚いたことがあった。カローラからレクサスだ。「今、勉強中です」と言ったエンジニアの顔が忘れられない。

 最近では、現行LSがデビューした今から3年前のこと、試乗してみると4WDモデルの足回りにやや不安なところがあった。

 それをエンジニアに伝えたところ、「4WDはまだちゃんとしていないんです」と言われた。LSといえばレクサスの最上級フラッグシップモデル。それを一部とはいえ未完のまま発売してしまう、ということに驚かされた。

 さらにLSの後に発売されたESに試乗してみると、これがかなり完成度が高く、走行性能ではLSを上回る部分もあった。

 このことをESの担当者に伝えると、「あっち(LS)はいろいろとあって」というようなことで言葉を濁されてしまった。 

 クルマ作りに関して、レクサスの完成度はまだまだ。デザインに関しては、スピンドルグリルで一体感を表現することでは成功したといえるが、総合的なクルマ作りに一本貫いている信念は見えてこない。ここがメルセデスやBMWとの違いではないだろうか。

 先日、ある中小企業の経営者が、税理士からアドバイスされた。

 「メルセデスやBMWは買わないで下さい。お金があっても、せめてレクサスかアウディを」と言われたそうだ。

 メルセデスベンツSクラスのエントリーモデル、S450が1192万円、レクサスLS500バージョンLが1345万円。

 でもたいていの人はSクラスのほうが断然高価で、ステータスがあると思うだろう。それでよいのだろうか?

 レクサスに足りないもの、つまりレクサスが目指してほしいのは、日本的高級車ではなく世界の高級車オーナーに認められるクルマ作りなのだ。

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