毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 NXクーペ(1990-1994)をご紹介します。
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文/伊達軍曹、写真/NISSAN
■北米の働く女性をターゲットに誕生したNXクーペ
北米市場では、当時の言葉で言うセクレタリーカー(働く女性のための通勤車)としてヒットするも、日本では女性セクレタリー(女性秘書)にも、そしてクーペを好む男性ドライバーにもいっさい刺さらず、1代限りであえなく消えていった小ぶりな2ドアクーペ。
それが、日産NXクーペです。
日産NXクーペは、1986年に北米でデビューした「NISSAN PULSER NX」の後継モデルとして1990年に登場した、7代目B13型サニーをベースとする小型の2ドアクーペ。ちなみにPULSER NXは、日本市場名で言うところの2代目日産エクサです。
1970年代後半から女性の就業率が高まったアメリカでは、1980年代から90年代にかけて女性の社会進出がさらに進み、高学歴女性がオフィスまで通勤するための車=セクレタリーカーの需要が増加しました。
まぁオフィスで働く女性を「セクレタリー(秘書)」とひとまとめに呼ぶやり方は、現代ではまったく通用しないでしょうが、とにかく当時のアメリカでは「比較的安価で小ぶりな、2人乗りまたは2+2のスペシャルティクーペ」が、女性オフィスワーカーによく売れていたのです。
その流れのなかで1986年に登場したのが、パルサーをベースにNDI(Nissan Design International。現在はNDA=Nissan Design America)がデザインしたPULSER NXでした。
そしてその後の社会の伸張につれて、パルサーよりひと回り大きなサニーをベースとする後継モデルとして1990年に登場したのが日産 NXクーペ(アメリカ名はNISSAN 100 NX)。こちらも、デザインはNDI(後のNDA)が担当しました。
日本仕様のNXクーペの基本部分は7代目のB13型日産サニーと共用で、日本仕様に用意されたパワートレインは1.5L/1.6L/1.8Lのそれぞれ直列4気筒自然吸気DOHC+5MTまたは4速AT。
エンジンがフロントに横置きされるのは(当然ながら)サニーと同様ですが、エンジンフードを低く抑えるために、補機類の配置などは変更されています。駆動方式はFFのみです。
3種類のエンジンとTバールーフの有無、足回りのセッティングの違いで計7種類のグレードが用意されましたが、販売はまったく振るわず。1994年4月には早くも販売終了となり、そのまま1代限りの車として消えていきました。
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