■中古車は高騰も当時は鳴かず飛ばず NXクーペ惨敗の背景
北米ではセクレタリーカー(この呼称はほんと、ちょっとどうかと思いますが)としてよく売れたNXクーペ(NISSAN 100 NX)が日本市場では惨敗を喫し、発売からわずか4年で販売終了となった理由。
それは、「日本にはセクレタリーカーなるものの市場がほぼ皆無だったから」ということに尽きるでしょう。
アメリカというのは、日本とは広さのスケール感がちょっと違いますので、都市部の(俗に言う)キャリアウーマンであっても自家用車で通勤する必要があるケースは多いものです。
そしてその通勤にあたっては、筆者はアメリカ人女性ではないので「なぜ?」という理由は正直わかりませんが、とにかくなぜか昔は「小ぶりなクーペ」が好まれ、そのことが「セクレタリーカー」という、今となってはちょっとどうなのかという呼称の人気ジャンルを作りました。
しかし日本では、都市部の俗に言うキャリアウーマンの通勤は、主には電車やバスなどの公共交通機関で済んでしまいます。
そして「自家用車での通勤が必要」というケースでも――もちろん人それぞれではあるのですが、基本的にはクーペではなく「やや小ぶりな2BOXスタイルの軽自動車またはコンパクトカー」が好まれる傾向があったように思えます。
それゆえ当時の女性からすると、NXクーペ的な車については「あまり興味がない」と言うほかなかったのが正直なところでしょう。
一方の「野郎」こと男性。これは、クーペスタイルの車を好む人もいまだに多いですし、1990年代前半ぐらいのまで時代であれば、現在よりも断然多かったはずです。
しかしそういった男性ドライバーが好むクーペは、例えば当時のFD型マツダ RX-7のような「スポーツカー」か、RX-7ほどの動力性能はないにしても、それに準じた性能はいちおう堪能できるS13型日産シルビアのような「スペシャルティクーペ」である場合が多いものです。少なくとも、NXクーペ的なクーペではありません。
まぁなかには「オレ、北米で言うセクレタリーカーみたいなクーペが大好きなんだよね」という男性もいたことでしょう。しかしそういった男性というのは客観的に見て、かなりの少数派でしかありません。
つまり日産 NXクーペとは、まとめますと「……なんで日本に導入したの?」と、日産の人に聞きたくなるクーペでした。女性ユーザーにも男性ユーザーにも、日本ではほぼ売れないだろうことはあらかじめ見えていたのに、なんでわざわざ売ろうと思ったのか?
そのあたりは当時の日産の担当者や関係者に取材してみないことにはわかりません。
ただ、ごく一部に存在する「オレ、北米で言うセクレタリーカーみたいなクーペが大好きなんだよね」というタイプの人に対してNXクーペの中古車は今、そこそこウケている模様です。
といっても筆者が確認した限りでは全国で3台しか流通していないのですが、一番安い物件でも38万円というまずまずのプライスが付いており、最高値の「実走4万kmの5MT車」には、なんと100万円以上の値札が付いています。
■日産 NXクーペ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4140mm×1680mm×1315mm
・ホイールベース:2430mm
・車重:1030kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1596cc
・最高出力:110ps/6000rpm
・最大トルク:15.0kgm/4000rpm
・燃費:13.4km/L(10モード)
・価格:162万7000円(1990年式 タイプB Tバールーフ)
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