冬のドライブ前と給油時は要注意!! 知って防ごう あんがい危険なクルマの静電気対策

 空気が乾燥し、湿度の低い時期になってきた。この時期になるとクルマから乗り降りする際にドアノブなどに触れると、「バチッ」という静電気が発生することが多くなる。

 セルフサービスのガソリンスタンドでは、給油ノズルの近くに静電気防止シート(パッド)があり、これにタッチしてから給油するのは習慣化しつつあるが、それでも静電気による火災事故が発生している。

 そこで、軽く見られがちだが、実はかなり危険な”静電気”をどう防いだらいいのか、モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。


文/岩尾信哉
写真/ベストカーweb編集部 Adobe Stock(トビラ写真 Alexander Borisenko@Adobe Stock)

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実はかなり危険な静電気

セルフのガソリンスタンドには静電気除去パッドが設置されている(umaruchan4678@Adobe Stock)

 静電気とは物と物とがこすれ合って、表面にあるプラスとマイナス、それぞれの電荷のバランスが崩れて生まれるエネルギーだ。

 大まかにいうと、電荷の流れが電流だから、電気エネルギーが発生すると考えてよい。帯電(電気エネルギーが溜まる)する原因はさまざまだが、もっとも多いのが摩擦だ。

 なにしろ車両からの乗り降りでシートの表面とこすれ合うことで人の身体が帯電してしまうのがやっかいで、危険なのは溜まった電気エネルギーが一気に放電(外に出ていく)する場合だ。

 金属に触れると「バチッ」と放電するのは、電荷がヒトの身体に溜まってしまい、ヒトの身体と自動車のボディとの電位差が大きくなり、場合によっては数千ボルトの電圧が生み出されることもある。

 ひどい時には手に強い痛みを感じたり、火花が飛ぶレベル(見た経験あり)まで達することもある。

 そこまでになると、セルフスタンドでの給油時には、周囲に揮発したガソリン成分が引火して燃焼したり、最悪の場合には爆発することさえありえる。バイクの給油時の火災事故は時折耳にする話題だろうが、それなりの用心が必要になる。

 総務省消防庁の資料によると、給油する人が歩いた際に衣類の摩擦で帯電が増加したことにより、静電気が手部と接地抵抗の小さい給油ノズル(金属部分)との間で放電。

 スパークによりガソリンべーパー(ガソリンが蒸発して気体となった蒸気)に引火して出火した、との事故事例が報告されている。


■出火年月:平成17年12月12日
・出火場所:江東区
・焼損状況:建物火災(程度:ぼや)
・焼損物件:各若干出火車両:2005年製(ガソリン車、外国車)
・出火時の気象:天気快晴、気温:8.5°C、風速:5.7m、相対湿度:29% ・実効湿度:46%

 出火時の状況を詳細に説明していこう。出火当日は午後1時頃、運転者はガソリンが残り少なくなったため、当該車両を運転してセルフスタンドに入った。

 運転者は停車後、エンジンを切りドアを開けて給油口オープナーで給油口の蓋を開け、鉄板部分を触ってドアを閉め、後ろに回って計量器のところに行った。

 クレジットカードをリーダーに通して音声案内のとおり操作した。なお、この時除電シートには触れていない。

 その後、ノズルを握って給油していたが、給油中の振動が手に伝わっていないような気がしたので3回給油を停止し、その後従業員を探すため車両周囲を歩行(5~6m)している。

 3回目に再度給油を開始してしばらくすると、給油口付近から炎があがった。慌ててノズルを給油口から抜き取ったため、こぼれたガソリンと車両ボディ各若干が焼損した。運転者は、炎を見て「すみません」と大声で周囲に火災を知らせた。

 この声を聞きつけ事務室にいたセルフスタンドの従業員は事務室の消火器(粉末10型)を持ち、出火車両まで行くとすでに火は消えていたが念のため消火器を放射した。

 なお、119番通報はなされていない。その後、店長が事故後の手続きを聞くために消防署に来署したことから火災を覚知したものである(出典:東京消防庁)

 給油をするために給油操作をしたが、(ガソリンが出てくる)振動がなかったので、従業員を呼ぶために5~6m周囲を歩いたことがいけなかったというのだ。

 ちなみに給油を開始する際も、歩いた後も静電気除去シートには触れていなかったそうだ。ほんの十数歩でも、静電気が帯電することは、覚えておいたほうがよい。

 そのほか、給油終了後おつりを受け取りにいっている間に、同乗者が燃料キャップを閉めようとして出火。

 また、給油をしていたがいったん停止して別の作業をし、再び給油をしようとノズルに触れた際に出火。

 バイクのドライバーが手袋をしたまま静電気除去シートに触れたために静電気を十分に除去できずに炎があがった、などという事例があった。

 揮発性の燃料を扱うガソリンスタンドが火気厳禁なのは当たり前だが、セルフスタンドでも静電気を抑えこむことは安全管理上の重要な案件だ。

 いうまでもなく、揮発性(気体になりやすい性質)が高い燃料に引火することを防止するための工夫としては、給油機に設置されたゴム製あるいはシリコーン製の静電気防止シート」(パッド)が貼られ、「給油前に必ず触れてください」との注意書きが記されている。

 フルサービスのガソリンスタンドには静電気防止パッドがないのは、ガソリンスタンドのサービススタッフが、帯電防置処理が施されたユニフォームを着ているために防げているからだ。

静電気の発生を防ぐには

 それでは普段から身体に溜まってしまう静電気の放電を冷蔵庫や電子レンジなど家電製品で付属しているコードを使うように、どうやって「アース」するのか。

 車両に乗り込む際にはドアノブに触れる前に金属製以外のものに触れる。降りる際にはシートに座った状態で金属に触れながら移動することが、静電気の放電についての一般的な対処法になる。

 調べを進めると「地面に触れる」なんていうアドバイスもあるが、コロナ禍のご時世にあって、これはあまり現実的とは思えない。

 ボディに一度触れてからといってもピラーに触る(ピリッとくることもあるが)ことを考えても意外に難しく、油断すると「バチッ」を喰らってしまうこともある。

 金属製キーをドアノブに当てることや、キーホルダー(最近は後述するような静電気除去用製品も販売されている)を備えておくべきだろう。

 それ以前の準備として静電気から身を守る工夫としては、クルマで出かける際の服装にも気を使って、天然素材の衣服を選んだほうがいい。

 フリースなど化学繊維で作られた服装は帯電しやすいので避けるべきで、服の組み合わせに関しても表面がツルツルした生地の上にセーターを重ね着するなどすると摩擦が大きくなって静電気が発生しやすくなる。

 それが無理であれば、衣服に静電気(帯電)防止用スプレーを施しておくことをお薦めする。ちなみに靴のゴム製ソールは静電気を逃がしてくれないのでご注意を。

 もう少し深掘りしておくと、ヒトには静電気を身体に溜めやすい「帯電体質」というものもある。特に冬場は肌が粉を吹いてパリパリになるような乾燥肌の方は保湿クリームをこまめに塗ることをお薦めしたい。

 頭が痛いのは、不摂生でも肌が乾くこともあるというから、体調管理まで気を配ることも必要になってくる。ドライバーとしての工夫のなかでは、クラシックかもしれないが革手袋をはめることも考えてみたい。

アクセサリーで静電気を防止する

 一方、自動車メーカーもボディに貼り付けるプレートなどをアクセサリー用品として設定しており、トヨタやホンダは純正品として静電気除去プレートをカタログに載せている。

 例えば、ホンダのさまざまな純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスは、ホンダ車に共通する仕様として「静電気除去プレート」を販売している。

ホンダアクセスの静電気除去プレート。運転席・助手席共用1個売り。価格:2750円。取付位置:フロントドアパネルラッチ下部(運転席側・助手席側)

 この静電気除去プレートは、ボディコートの施工前に装着したい。運転席、助手席の両方に装着する場合は2個必要だ。

 触れる時間が短いと除電しきれないことがあり、着用している衣類や体質によっては除電に必要な時間が変化することがある、といった但し書きがある。

 一方、日産はサービス対応として、シートの静電気防止加工を実施している。

 「室内静電気除去」はシートに表面加工を施すことで、シートと衣類の摩擦で発生する静電気を除去する。

 具体的には、安全な素材で降車時の静電気を除去。1回の施工でひと冬(6ヵ月)有効。なお、革・人工皮革・ビニール・撥水シートには施工できず、降車時の静電気のみに効果があるとされている。

日産ディーラーで行われている静電気除去の表面加工。1回3300円、作業時間約20分、1回の施工で効果は約6ヵ月。降車時の静電気のみ効果がある。皮、人工皮革、ビニール、撥水シートには施工できない。詳細は日産ディーラーにお問い合わせください(出典:日産自動車)

タイヤから静電気を逃がす工夫とは?

導電スリット(アース)を入れることにより静電気を地面に放出(出典/ヨコハマタイヤ)

 あまりイメージしにくいが、クルマは走行中では車体がホコリや煤に満ちた空気に触れているため、帯電し続けていることになる。

 タイヤのゴム(ラバー)部分は本来が電気が抜けにくいが、それでもタイヤから静電気が離れていくのは、タイヤに電導性が高いカーボンブラック(炭素)が多く含まれているからで、従来では問題にならなかった。

 ところが、最近では燃費向上を狙って転がり抵抗を抑え、ウェット性能を高める効果をもたらすためにラバーに配合されるようになったシリカ(ケイ素などのガラス状成分)は、電気を通しにくく、静電気の発生も防ぎにくくなった。

 このためタイヤメーカーは、走行中に静電気を逃がすことができるように、カーボンブラック内のシリカの量が多いタイヤには、縦方向にカーボンの層を設けて静電気を逃がすように設計された「導電スリット」と呼ばれる構造を採用している。

 具体的にはタイヤを取り巻くトレッド部分に埋め込まれたブロック内の円周方向に、地面に触れるような構造として組み込まれている。

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