■不発に終わった? レパードJ.フェリーの挑戦
ある意味力作であり、いわゆる「いい車」ではあった日産 レパードJ.フェリーが、不人気車のまま“生涯”を終えた理由。
それは、結論として「挑戦しすぎた」ということなのでしょう。
さまざまな裏事情はあったはずですが、とにかくレパードJ.フェリーのデザインは、日本の既存の高級セダンに対する明らかな“挑戦”でした。
前段で申し上げたとおり、当時の国産高級セダンやドイツ系のそれというのは「威圧感」「重厚感」「高級感」「速そうな感じ(ウェッジシェイプ)」を重視するのが当たり前で、そしてそういった要素を上手に表現しているモデルがよく売れました。
しかしレパードJ.フェリーは、先に挙げた4項目のうち「高級感」は重視していましたし、「重厚感」もそれなりにあったと思いますが、「威圧感」や「速そうな感じ」とは真逆のデザインでもって日本市場に挑戦しました。
「押し出し感とか、もう古いよ! これからの高級セダンに大切なのは“エレガンス”だよ!」
日産の「中の人」がこのような言葉づかいだったかどうかは知りませんし(たぶん違うでしょう)、エレガンスの時代が本当にやって来るのはもう少し先だろうが、自分(J.フェリー)はその先駆けになれればいい――ぐらいに考えていた可能性も高いとは思います。
だがいずれにせよレパードJ.フェリーは、それまでの国産高級セダンとはまったく異なる文脈で勝負をかけました。
前述してきたとおりの、日本ではタブーとされていた尻下がりの柔らかなフォルム。メルセデスではなく「ジャガー」のそれを思わせる、柔らかだがフラットな猫足。
そういった部分を、自分でカネを出して買うわけではないジャーナリストたちはかなり高く評価しました。
中にはご自分で買ったジャーナリストもいたでしょうし、また彼ら・彼女らがメーカーからカネをもらってヨイショをしていたわけでもありません。心底、J.フェリーのことを「イイ!」と思ったのです。
しかしたまに試乗車を借りるのではなく、自分自身の500万円ぐらいのお金を出す必要がある一般ユーザーは、そう簡単に「イイ!」と思うことができませんでした。
「いや、乗ればそりゃいい車なのはわかるけど、このブルーバードみたいなカタチに500万円も出すのはちょっと……」という感じだったのでしょう。気持ちはよくわかります。
このようにして「柔らかな高級セダン」という1990年代初頭の挑戦は、不発に終わりました。
そしてレパードJ.フェリーの生産終了から四半世紀ほどが過ぎた今、世の中は「いかつくない、柔らかな高級車」もユーザーから支持される状況へと変化したのでしょうか?
……もちろん、当時よりは「それ」が受け入れられているように見えます。
しかし最近の高級ミニバンや高級セダン/クーペのバカでかいフロントグリルを見ていると、「……結局はあんまり変わってないのかな?」とも思う筆者ではあります。
■日産 レパードJ.フェリー 主要諸元
・全長×全幅×全高:4880mm×1770mm×1390mm
・ホイールベース:2760mm
・車重:1650kg
・エンジン:V型8気筒DOHC、4130cc
・最高出力:270ps/6000rpm
・最大トルク:37.8kgm/4400rpm
・燃費:7.6km/L(10モード)
・価格:469万円(1992年式 タイプX)
コメント
コメントの使い方