最激戦区にドイツから殴り込み!! 名門VWのSUVはいまも質実剛健か


 VWグループジャパンは、2020年に2台の新型SUVを日本市場へ投入した。一台目が2月に登場した「T-Cross」、そしてもう一台は7月登場の「T-Roc」だ。

 この2台に「ティグアン」を加えたSUV3兄弟は、そのどれもが欧州市場で爆発的な人気を誇っている。

 しかも、従来の「質実剛健で真面目」といったVWのイメージから脱し、明るくポップなボディカラーを採用するなど、商品力に磨きをかけており、日本においても、国内外のSUVを相手に善戦している。
 
 VWグループジャパンは2020年12月4日に、T-Roc/T-Crossに一部仕様変更を行った。新ロゴへの変更、新オンラインサービス「We Connect」に対応したインフォテイメントシステム「Discover Media」のアップデート、T-Crossへのデジタルメータークラスターの採用などが主な内容だ。
 
 2020年12月上旬、VWグループジャパンは、それらのお披露目も含め、「T-Cross」と「T-Roc」、そして「ティグアン」を含めたSUVオールラインナップ試乗会を開催した。
 
 人気のSUV3兄弟の実力は、一体どれほどのものなのか? モータージャーナリストの吉川賢一氏が解説する。


文/吉川賢一
写真/佐藤正勝 VW

【画像ギャラリー】VWのSUVは国産SUVとどう違う? 33点の詳細写真をチェック!


T-Cross TSI 1st Plus /337万9000円  

ボディサイズは全長4115×全幅1760×全高1580mm、ホイールベースは2550mm。エンジンは116ps/20.4kgmの1L、直3インタークーラー付きターボ。車重は1270kg。トランスミッションは7速DSG。WLTCモード燃費は16.9km/L
VWの最小SUVのT-Cross。エントリーモデルとはいえ作りはいい。タイヤサイズは215/45R18

 最初に試乗したのはT-Cross 1st Plus。全長4115mmという、非常にコンパクトなサイズは、ハッチバックのポロ(全長4060mm)に次ぐ小ささだ。

 T-Crossの欧州地域でのライバルは、ルノーキャプチャー、プジョー2008、トヨタヤリスクロスといったところだ。

 約338万円の車両価格だけを見れば、「国産よりも割高な輸入車」という印象を受けてしまうが、実はACC(アダプティブクルーズコントロール)や、ブラインドスポットディテクション、LEDヘッドライト、インフォテイメントシステムのDiscover Pro(SSDナビ、オーディオ、TVなど)が標準装備となる。それを考えると、リーズナブルだといえよう。

 試乗したのはTSI 1st Plus、18インチタイヤを履いた上級モデルのほうだ。ドアを開けた瞬間、「バスッ」という音の質に「作りのよさ」を感じた。

 近年は国産車も、このドアを開閉した際の音に重厚感が増してきてはいるが、T-Crossのそれは、やはりドイツ車らしさを感じさせるものだ。
 
 久しぶりに見た手動式のサイドブレーキもドリンクホルダーとレイアウトでケンカにならなければ、このタイプであっても問題はないだろう。ただし、ACCの停車時のホールド時間が5秒程度と、短いのはいただけない。
 
 軽自動車の排気量658㏄に348㏄増やした1L(正確には999cc)という排気量で、どうしてこれほど力強い加速や巡行走行ができるのだろうかと、本当に驚かされる。

 7速DSGの低速発進時の動作を気にする方も多いが、少なくともこのT-Crossに関しては、違和感などは全くなく、ごく自然な動作だ。

 回転数をさほど上げずに、「クン、クン! 」とシフトアップをしていくので、イメージ通りの加速に乗せやすい。

 一般道やワインディングでの身のこなしは、ボディサイズに対してオーバースペックな18インチタイヤ(ピレリCinturate P7)と、1270kgという、やや軽めの車重の恩恵もあり、グイグイと旋回をする。

 路面に張り付いたような動き、とまではいかないが、一般道を流す程度では、タイヤのグリップ不足を感じることは全くなかった。

 乗り心地は、ボディの上下動をしっかりと抑制し、フラットに保つようなセッティングだ。

 そのため、中低速で走るワインディングや高速巡行は大の得意だ。半面、段差乗り越し時の突き上げは大きめだ。

 「ドタン!」といったインパクトノイズと鋭いショックは、後席のほうがよりきつい。原因は45扁平のタイヤにあるのは間違いない。

 デザインを楽しむコンセプトのために18インチを採用したのだろうが、T-Crossには17インチが限界だと思われる。17インチで、カッコよいホイールデザインを望みたいところだ。

ポップなデザインのT-Cross。8インチの純正インフォテイメントシステムのディスカバリープロやスマートフォンワイヤレスチャージングシステムなども採用
後席スペースは、ひざ前にコブシ2個、頭上はこぶし1個半ほど入る広さだ。後席から前方もよく見えるので居住性が良い


■お薦め度:T-Cross TSI 1st Plus /90点(100点満点中)

T-Roc TDI Style Design Package /404万9000円) &TDI Sport/418万9000円

T-ROC TDI Style Design Package。ボディサイズは全長4240×全幅1825×全高1590mm。ホイールベースは2590mm。車重は1430kg。エンジンは150ps/34.7kgmを発生する2L、直4ディーゼルターボ。タイヤサイズは215/55R17。WLTCモード燃費は18.6km/L
T-ROC TDI Sport。150ps/34.7kgmの2L、直4ディーゼルターボに7速DSGを組み合わせる。タイヤサイズは215/50R18

 T-Rocのボディサイズは、国内で競合となる、トヨタC-HRやホンダヴェゼル、日産キックスと比べ、全長は短く、車幅はワイドな寸法だ。

 日本での知名度はそれほど高くはないが、ドイツ本国では、2019年の販売台数が20万7863台(参考:JATOデータベース)と、ティグアン(約22万台)に次いで売れまくっているSUVだ。

 トレーリングアーム式のリアサスを用いたコンパクトSUVと考えると、405万円という価格はずいぶん高く感じるが、ナビやオーディオ、コネクティッド機能を有した8インチタッチスクリーンモニターのDiscover Proや画面全体に地図表示ができるデジタルメータークラスターも標準装備。

レッドステッチが入った専用ステアリングやスポーツシートが装着されたT-Roc TDI Sportのコクピット

 また、全車速追従機能付のアダプティブクルーズコントロールやレーンアシスト機能も、もちろん付く。そうなるとT-Cross同様、T-Rocもコストパフォーマンスはかなり高い。

 走りは期待以上だった。コーナーでのステアリングの操舵力は軽く、楽にレーンキーピングができる。

 VWゴルフよりは視界が高めとなってはいるが、交差点やコーナーでのボディモーションはよく抑えられており、加速減速、交差点などでの姿勢変化も少ない。「ゴルフ並み」とまではいかないが、安心感の高いハンドリングの所作だ。

 また、素の直進性が高いことで、修正操舵もごく少なくて済む。そして、ACC作動時には、アクセルペダルの右側にある足置き台が、絶大な威力を発生する。

 両足でステップを踏む姿勢を取ると、足だけでなく腰や背中まで、力が抜ける。ぜひ国産メーカーにもマネしてほしい装備だ。

 乗り心地は、中低速ではやや硬めで、路面の継ぎ目やマンホールなどでは、ゴツンというショックを感じる。

 特に、リアタイヤが地面から受ける当たりが硬く感じ、突起ショックのレベルは国産SUVの平均点以下だ。17インチを履くベースのTDI Styleであれば、路面との当たりは若干マイルドになるが、まだ硬さが残る。

 TDI Sportは、2LディーゼルターボのTDI(150ps/34.7kgm)と7速DSGの組み合わせとなる。

 出足の力強さと、加速のよさが魅力だ。1430kgのT-Rocを簡単に高速度域まで加速させてくれる。車速ゼロからの発進、緩加速、合流の強加速、高速巡行走行など、シーンを問わずに力強い。

 しかもそれを、2000rpm程度の低い回転数でやってのける。ガラガラとしたエンジンノイズも、加速する時にはむしろ力強く感じる。国産のハイブリッドやEVの静かな走りもよいが、ロングツーリングにはやはりディーゼルが向いている。
 
 高速巡行を得意とするVWのディーゼルエンジンがいいのか、一般道での静かさと燃費に勝る国産ハイブリッドがいいのかは、クルマの使い方によって変わってくるが、T-Rocはデザインのよさが決め手となると思う。

 筆者はT-Rocのリアスタイルが気に入っている。T-Rocのお洒落な外観は、見る人の目を引くことができるはずだ。

後席スペースは、ひざ前にコブシ2個、頭上はこぶし1個半ほどだ。T-Crossとほぼ同じ程度の広さだが、シートの質感はT-Rocのほうが高い印象がある
クーペSUVルックのT-Roc。都会に映えるモダンなデザインだ


■お薦め度 :T-Roc TDI Style Design Package/85点、 TDI Sport/83点(100点満点)

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