■推進される電動化と自動運転
技術的な領域では次世代車政策について、バイデン政権はどのように動くのか?
まずは、パワートレーンの電動化だ。トランプ政権下でも、直近のアメリカ市場ではデトロイト3が電動化戦略に積極的だ。
具体的には、フォードが「マスタング」のクロスオーバーである「マッハE」。GMはGMCブランドで「ハマー」をスーパーEVとして復活させると発表した。両モデルとも、発表直後から安定した受注を確保している。
また、ステランティスはジープ電動化ブランド「4xe(フォー・バイ・イー)」の訴求を進めている。まずは都会派SUVの「レネゲート」を日本を含めて市場導入し、またアメリカでは「ラングラー ルビコン」の「4xe」をすでに発表。同社本社関係者によると、カリフォルニア州内の過酷なオフロードで走行会を実施し、各方面から高評価を得ているという。
こうした電動化のトレンドが、バイデン政権では一気に加速しそうだ。
※編集部注:ステランティスはフィアット・クライスラー・オートモビルス(FCA)と プジョーS.A.(グループPSA)が合併して生まれた新たなグループ
最も大きな理由は、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が2020年9月に発表した、「2035年までにインターナルコンバッションエンジン(内燃機関)の新車販売禁止」という政策だ。
同州は1990年から、世界に先駆けてEVなど次世代環境車について、自動車メーカーに対する事実上の販売台数義務化を課している。これが、ZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法)だ。トランプ政権では、このZEV法と連邦政府環境局EPAによる燃費規制が、ダブルスタンダードとなっていることに懸念を示しており、連邦政府による基準の統一化を訴えてきた。
カリフォルニア州は民主党の支持者が多く、ニューサム知事も民主党に属していることから、バイデン政権ではZEV法を積極的に取り入れる可能性もある。また、合わせてトランプ政権が完全否定し、大幅な規制緩和を計画していた、オバマ政権下で決まった企業別平均燃費(CAFE)の厳格化についても、これを継承する可能性が高い。
日本としても、菅政権が掲げる「2050年カーボンニュートラル」を鑑み、一部報道にあった「2030年前半(または半ば)のガソリン車(内燃機関車)の新車販売禁止)」と、バイデン政権での電動化推進政策が今後、連携していくことが予想される。
次に、自動運転だが、こちらもバイデン政権になって普及政策が一気に進む可能性がある。
なぜならば、オバマ政権が自動運転政策に積極的な姿勢を示してきたため、トランプ政権発足後に、それまでのイケイケなムードが一気にトーンダウンしたからだ。
実際、筆者は2010年代前半からアメリカ政府機関が関与する自動運転関連の国際カンファレンスを現場で取材してきたが、トランプ政権になってから、自動運転に関する連邦政府の所管機関であるDOT(運輸省)やNHTSA(運輸省道路交通安全局)の態度が一変した。
日系メーカーの自動運転開発統括者らは「明らかに風向きが大きく変わった」と表現した。
このほか、IT産業のメッカであるシリコンバレーでは、次世代車開発のキーワードであるCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリングなどの新サービス・電動化)や、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)に関連する大小の企業が混在している。そうした領域のビジネスマンと、バイデン政権がどのように付き合っていくのか?
自動車産業の飛躍に向けて、シリコンバレーの彼らとさらに踏み込んだ議論が必要不可欠だ。
以上見てきたように、バイデン政権ではオバマ政権が築いた政策を上手く応用しながら、新しい自動車産業政策を描いていくことになろう。
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