世界に誇れる!!! 日本車の凄いエンジン7選

 今、日本車のエンジンが凄い! 日産が発表した世界初の可変圧縮比エンジンと、マツダが開発した世界初の圧縮着火エンジンSKYACTIV-Xは、世界に衝撃を与えた。

 ハイブリッドや電気自動車、燃料電池車が台頭してくる時代のなかにあって、まだまだガソリンエンジンは健在だと存在感を見せつけたのだ。

 そこで、過去現在の日本車の凄いエンジンはどんなものがあるのか? 逸品ともいえるエンジンはなにか? モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。

文/岩尾信哉
写真/岩尾信哉、ベストカー編集部


■優れたエンジンは高効率であることが不可欠

アクセラプロトタイプに搭載されたSKYACTIV-X

 広い世の中には最高出力、最大トルクが1000ps、100kgmに届くようなスペシャルなエンジンもあって、エンジンのパワーを生み出す技術というものには際限がないのかと思えることもある。

 ただし、最近では”優れた”エンジンと呼ばれるにはパワーとともに高効率であることが不可欠になっている。

 これを成り立たせるにはキーワードがいくつかあり、エンジンの改善要素として「熱効率アップ」「熱損失の低減」といった表現をよく耳にする。

  これまで内燃機関エンジンでは燃料を燃やして生み出すエネルギーの「約3割」しか使っていないとされてきたが、最近ではトヨタの新世代エンジンでは熱効率は「4割」に到達していて(限界は「5割」ともいわれている)、エンジンの能力を使い切る知恵と努力が注ぎ込まれたエンジンが評価されるようになった。

  現代の高性能エンジンではパワーはあって当然、より高いレベルでの燃費など効率の良さを獲得していなければ、評価されない時代になったのだ。

 高効率化を目指した新世代エンジンに共通するのは、吸排気バルブの開閉タイミングを運転状態に合わせて最適制御する可変バルブタイミング機構をはじめとして、吸気バルブが閉じるタイミングを従来よりも遅らせて圧縮行程のポンピングロスを減らすことで効率を高めるアトキンソンサイクル燃焼方式などは当然のように採用されている。

 エンジン全体の改良では、摩擦損失の抑制、吸気バルブの大径化やナトリウム封入による熱損失の低減、吸気ポート形状の設計の見直しや大量EGRの採用など、日本メーカーでは各社共通といえる高効率化技術が使われている。

 これらの技術はそれぞれ結びついて開発されている。たとえば、混合気を無駄なく燃やすために排ガスを循環させるEGR率を高めると、燃焼速度が遅くなるという課題がある。

 そこでどのメーカーのエンジン燃焼室内に生じるタンブル(渦)流を強めて混合気の燃焼速度を速めるために、吸気ポートの形状を直線的に仕立てるなど、設計に工夫を凝らしている。

 さて、日本車の凄いエンジンはどんなものがあるのか? 目を見張るべき逸品エンジンを7車種選んだので解説していこう。

■マツダ/アクセラ(マツダ3)SKYACTIV-X 2L、直4スーパーチャージャーSPCCIエンジン

2018年11月にLAショーで世界初公開された新型マツダ3に搭載されたSKYACTIV-X。アクセラはこの新型からワールドワイドでマツダ3という車名に統一される

 先のロサンゼルスショーにおいて、マツダ3(アクセラ)に搭載されて正式発表されたマツダの次世代エンジン「SKYACTIV-X」は、いま最も注目されているエンジンだ。

 ガソリンと空気の混合気をピストンの圧縮によって自己着火させる“圧縮着火”を世界で初めて実用化した、マツダが「SPCCI」(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)と呼ぶ燃焼方式を採用。

まだ実現は相当先と思われていた夢の燃焼技術「HCCI(予混合圧縮着火)」。ガソリンエンジンで火花点火を利用することによって、スーパーリーンバーン(希薄燃焼)を可能にする圧縮着火を具現化したのが火花点火制御式圧縮着火エンジン(SPCCI、SPark Controlled Compression Ignition)

 従来のガソリンエンジンで難しかった圧縮着火の成立範囲を拡大することで、火花点火と圧縮着火のシームレスな切り替えを実現したという。

 これまで理想の内燃機関として研究開発が進められてきたHCCI(Homogeneous-Charge Compression Ignition:予混混合着火)はガソリンエンジンとディーゼルエンジンの特徴を併せ持つ圧縮着火技術だが、「SKYACTIIV-X」がHCCIエンジンと異なるのは、HCCIでは使用しない点火プラグによる“火花着火”と“圧縮着火”の両方を用いることだ。

 点火プラグによる着火を圧縮燃焼を制御する要素として利用することで、燃焼を制御する範囲を拡大。点火/圧縮の燃焼をよりスムーズに切り替えることに成功したという。

 さらに燃費向上のために、圧縮着火で可能となる燃料噴射量を減らしたリーン燃焼領域では、エア供給機能(スーパーチャージャー)によって吸気の供給量を増加させて空気を燃焼室内により多く押し込むことで、理論空燃費の約2倍の薄さ(半分の燃料消費)で燃料噴射を可能とした。

 このように従来のガソリンエンジンの特徴である高回転域の伸びの良さを活かしつつ、現行の「SKYACTIV-G」に比べて全域で10%以上、最大30%におよぶ大幅なトルク向上を実現した。

 正式な排気量やパワーのスペックなどは明らかにされていないが、マツダによれば、2Lクラスの直4として、デミオ1.5Lガソリンと同等の燃費とロードスター用2L仕様と同等のパワーを得たとしている。ともあれ、実車が実際に日本の路上でどれほどのパフォーマンスを見せるのか今から楽しみだ。

現行のSKYACTIV-Gに対し、燃費を20〜30%向上、トルクを全域で10%以上向上・トルクは全域で10%以上、最大で30%の向上を目指している

■日産/インフィニティQX50  2L、直4ターボ、可変圧縮比エンジン、KR20DDET型

かつて日本でも販売されていたスカイラインクロスオーバーの後継車にあたるインフィニティQX50の最新モデル。ボディサイズは全長4700×全幅1900×全高1676mm。いまのところ、日本導入の予定はない

 北米市場で販売されているインフィニティQX50と日産アルティマに採用された2L直4ガソリン直噴ターボ「可変圧縮比」エンジンは、日本市場には未導入ながら、世界初の量産エンジン用技術として、これまで日産のエンジニアが永年研究開発を進めてきた夢のエンジンといえる。

 VCターボと呼ばれるオールアルミ製KR20DDET型直4エンジンのボア・ストロークは84×88.9~90.1mm。可変機構による圧縮比の変化は、低圧縮比で8:1(排気量:1997cc)、高圧縮比では14:1(同1970cc)となる。

 最高出力と最大トルクはそれぞれ248ps/39.8kgm(米国仕様、プレミアムガソリン仕様)。トランスミッションはCVTが組み合わされ、FFのみの設定となる。

従来エンジンの機械要素で構成できているのがVCターボの凄いところ。コストアップの要因が少ない

 肝心の可変圧縮比を実現するマルチリンクの構造を説明すると、従来のピストンを支えるコネクティングロッドは「アッパーリンク」とされ、クランクシャフトと結合した独特の形状をもつ「ロワーリンク」(マルチリンク)、 これに全体の制御を司る「コントロールシャフト」と最下部にはコントロールシャフトに結合する「アクチュエーターシャフト」と電動機構「VCRアクチュエーター」が備わる。

 これらのリンクの位置関係が微妙かつ複雑に変化して可変圧縮比機能を実現する。この可変圧縮機構の特徴は「アッパーリンク」が上下方向に直線的を動くので、ピストンの上下動から生まれる二次振動がわずかなため、バランスシャフトを必要としないことだ。

 ピストンの横方向の荷重が少なく、フリクションの影響が少ないため(摺動抵抗は従来型から44%減少)、効率向上にも寄与している。

右側がVCターボの仕組み。コンロッドがなくピストンとクランクシャフトはU-リンクとL-リンクのふたつでつながれる(L-リンクはクランクシャフトと一体化している)。またクランクシャフトの下にもコントロールシャフトを挟んでC-リンクとアクチュエーターモーターにつながるA-リンクが存在する。 VCターボはピストンの上下死点の高さを変えることで圧縮比を変化させるがその起点となるのがモーターだ。モーターが時計回り、もしくは反時計回りに回転することでA-リンク→コントロールシャフト→C-リンク→L-リンク(クランクシャフト)→U-リンク→ピストンと力が伝わり、ピストンの上下死点が変化する。そして高くなれば燃費重視の高圧縮比となり、低くなればパワーを出したい時のための低圧縮比となる

 日本の日産横浜工場で生産されるKR20DDET型直4ターボは、従来のMR20DD型2Lガソリン直噴直4エンジンとボアピッチとともに共通とすることで、ヘッドまわりで共通部品が多く使えることになり、コスト抑制が図られた。

 ちなみに、北米仕様の都市高速道複合の燃費は29mpg(24km/L)。置き換えの対象となる3.5L、V6エンジンから約15%の燃費を向上させたとしている。

■トヨタ/レクサスUX  2L、直4、M20A型

レクサスUXは全長4495×全幅1840×全高1540mmとレクサス最小のSUV。2L、直4エンジンは174ps/21.3kgm。ハイブリッドはこれにフロントモーターが109ps/20.6kgm、リアモーター7ps/5.6kgmを組み合わせる。価格は390万〜535万円

 現状で北米/中国市場のカローラ系と、レクサスUXに搭載されている、いわゆるトヨタが開発した“Dynamic Force Engine”のひとつ、2L、直4ガソリン直噴のM20A型エンジンだ。

 まだ採用が始まったばかりで、追って既存の1.8L/2Lの旧世代のZR型などのエンジンから置き換わっていくはずだ。

 トヨタが開発した新世代パワートレーンは、エンジン9機種17バリエーションを展開予定とされ、前述のような熱効率向上の施策はほぼ網羅されている。

 加工技術については、ピストンスカートの摺動面に鏡面加工を施したうえで表面には格子状の細かい溝を与えて、スカッフ(シリンダーの油膜が切れてピストンやシリンダーに引っかき傷が生じる現象)を防ぐ効果を得るなど、惜しむことなく最新技術が導入されている。

M20A型エンジンは自然吸気とハイブリッドの2仕様が用意される。量産エンジンとして熱効率40%を達成したという事実は、トヨタの技術力の高さを物語っている

 この2Lエンジンを含めた新世代ユニットで評価すべき点は、コスト削減と最新技術を広く素早く展開できるように設計段階から仕様を共通化するために、エンジンの“コモンアーキテクチャー”すなわち設計仕様の共通化と生産時のモジュール化を図っていることだ。

 ということは、このエンジンのハイブリッド仕様であるM20A-FXSもコストや技術面で他のエンジンからの恩恵を受けたうえ次期プリウスに搭載される可能性もあるから、その時点でどこまで熟成されているかも注目されることになるだろう。

■ホンダ/欧州シビック 1L、直4VTECターボ

1L、直4VTECターボは欧州シビックに搭載されている。次期フィットにも搭載される見込み

 ホンダが「VTECターボ」として登場させた3種の直噴ガソリンターボ直4のうち、ここでは1.5LとタイプR用2Lエンジンではなく、すでに欧州シビックでは採用済みの排気量を落として高効率化を図った、いわゆるダウンサイジング1L、直4ユニットのVTECターボを推したい。

 前述の1.5Lをボア系を共通としつつ、部品の約50%を新規に開発したとされる小排気量直噴ターボは、2系統の冷却水を設定して、低/高負荷で異なる温度管理を実施するなど、高効率化が図られた。

 このエンジンの出来の良さを想像できるのはなんといっても、豊かなトルクにある。欧州や日本の市場で見られる、リッターカー用エンジンを俯瞰すると、最大トルクはおよそ15.3kgmが上限といえ、この点でこの1L、VTECターボエンジンは20.4kgmとクラストップレベルを誇る低中速トルクを実現、旧世代の1.8L、VTEC直4並みのパワーを得たとしている。

129ps/20.4kgmという20.4kgm(6MT)という高出力を実現した1L、直4VTECターボ。早く日本にラインアップしてほしい

 最高出力は129ps、最大トルクは20.4kgm(6速MT)、CVTは18.4kgm。CVT仕様のNEDC混合燃費は60.1 mpg(約21km/L)とされている。

 今のところ、欧州市場のジャズ(日本名:フィット)への採用拡大が見込まれている1Lユニットだが、S660の小型車として仕立てられた「S1000」の登場を望みたいところだ。

■スバル/WRX STI  2L水平対向4気筒ターボ、EJ20型

現行WRX STIが最後のEJ20エンジン搭載になることはほぼ確実。写真はタイプRA-R

 1989年に初代レガシィに搭載されてから、30年という、この長寿命エンジンをあえて推したいのは、近々に生産中止される運命だからだ。

 このEJ20は、2.5L仕様のEJ25(1994年の2代目レガシィに採用)の登場や、2010年に新世代のFB型(FA型)に主力ユニットの座を譲ったとはいえ、STI仕様などのスバルのスポーツモデルの人気を支え続けてきた。

スバルファンを魅了してやまない名機EJ20がデビューしたのは1989年。初代レガシィから搭載され約30年になるが、現行型のWRX STIに搭載されるユニットと比べると、1994ccの排気量とボア×ストローク比が92×75mmであるという基本レイアウト以外はほとんどすべてが刷新されている。そもそもスバルのエンジンの場合、EJ20という型式は同じでもターボとNAがあったりするなど、過去30年の間には数え切れないほどの仕様違いが存在する。例えば初代WRXの前期型用と後期型用でさえ、ピストンやバルブなどの主要部品で互換性のあるものはほとんどないなど、最強のターボ版ではデビュー後数年ですでに別物化しているのだ。 一方、現在のスーパーGTで使われるモータースポーツ向け最強仕様のEJ20はWRC時代から受け継がれたもので世界チャンピオンを獲得した実績と信頼のあるユニットを延々と磨き続けている

 去る2018年7月に500台限定で販売されたWRX STIの特別仕様車「タイプRA-R」に搭載されたEJ20型水平対向4気筒DOHCツインスクロールターボは、排気量1994cc(ボア×ストローク:92.0×75.5mm、圧縮比:8.0)から最高出力329ps、最大トルク44.0kgmを得ている。

 初代レガシィ搭載時は220ps/27.5kgmだったが、実に109ps、16.5kgmも向上していて、基本レイアウト以外は、1994ccの排気量と、92×75mmのボア×ストローク以外はほとんどすべてが刷新されており、その進化ぶりは凄まじい。

 2020年の登場が予定される次期WRX  STIにはEJ20は搭載されず、FA20直噴ターボエンジンとされているので、EJ20を味わっておきたい人は今のうちに!

■日産/R35GT-R  3.8L、V6ツインターボ  VR38DETT型

VR38DETTは発売当初の480psから、600psに達している(NISMO)

 次期GT-Rの行方が気になるところだが、横浜市鶴見区の日産横浜工場の専用クリーンルームで4人の「匠」と6人の「準匠」によって1基を1名の担当として人手を介して「手組み」される、排気量3799ccのV6ツインターボ「VR38DETT型」エンジン。

世界のスーパースポーツを打ち負かした数少ない日本車のスポーツカー、R35GT-Rが搭載するVR38DETTエンジン

 2007年に登場したGT-Rは480ps/60.0kgmから、現行GT-Rの標準車で570ps/64.5kgm、NISMOが600ps/66.5kgmと手を加えられ続けている。

 登場からすでに11年が経ったが、日本が世界に誇るスポーツエンジンとしての地位は揺るがないだろう。

■トヨタ/レクサスLFA 4.8L、V8 1LR-GUE型

2010年12月に生産が始まり、3750万円で限定500台が販売されたレクサスLFA

 レクサスLF-A専用エンジンとしてトヨタとヤマハ発動機が共同開発した4.8L V10エンジンは、スーパースポーツに相応しい高い応答性実現を目指して開発された。

 1LR–GUE型バンク角72度の広角バンクを採用。チタン製バルブや鍛造アルミピストン、ダイヤモンドライクカーボン (シリコン含有) コートのロッカーアームなど、軽量素材を各部品に与え、独立スロットルの採用や低フリクション設計とされたモータースポーツ仕様の部品を採用した。

 560ps/48.9kgmというスペックを誇り、レッドゾーンはなんと9000rpmから。7000rpmからの吹け上がりは素晴らしい。低回転では重低音を強調し、高回転域では澄み切ったV10サウンドを奏でるようにチューニングされたエキゾーストノートはまさに官能的だ。

チタン製の吸排気バルブやコンロッド、アルミ鍛造製のピストンなどを軽量化。エンジン回転数3700~9000rpmの間で、最大トルク値の90%を発揮

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