リコール=欠陥車というイメージは本当に合っている? 千差万別で意外とわかりにくいリコールの実態とは?
車を回収し、無償で修理する「リコール」。もちろん回収するからには何か問題があるわけで、直近でも例えばトヨタのヤリスが昨年末にリコールを届けている。
しかし、ひと口にリコールといっても実は、危険度が高いものから軽微なものまでさまざま。必ずしもリコールは「悪」ではなく、むしろその対応がブランドイメージを上げることもある。
果たして、重大度が高いものとそうでないリコールとは? 以下、国沢光宏氏が解説する。
文/国沢光宏
トップ画像/KATSU-Stock.Adobe.com
写真/トヨタ、編集部
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ブランドイメージを左右するリコール対応

皆さん「欠陥車」と聞くと、どんなイメージを持つだろうか? きっと走っていて突如ブレーキ効かなくなったり、エンジンルームから突如火が出たり、ハンドル切っても曲がらないような恐ろしいクルマなど考えるに違いない。
多くの人はリコール=欠陥車という理解になり、恐ろしく危険なクルマだと思ってしまいがち。
「危ないクルマを俺に売りつけやがって!」と激怒する人もいるようだ。先代フィットのハイブリッドなどトータルで6回もリコールを出した個体があり、ディーラーにとって地獄のような日々だったそうな。
他のメーカーのディーラーに転職した優秀な営業マンも多かったと聞く。いずれにしろリコールは大きなイメージダウンになります。
ちなみにリコールという英語を日本語にすると「欠陥」でなく「回収」。販売した商品に問題あれば消耗品だと回収。長く使うようなクルマなら良品にして返却することをいう。
欧米ではリコール出しても大きなイメージダウンにならず、むしろ的確なタイミングでリコールを出し、キチンと対応することでブランドイメージを高められる。
妙な表現方法ながら、アメリカにおける日本車で最も成功したリコールは、初代セルシオ(現地ではレクサスLS400として販売)だと思う。メルセデスでもリコール出たらディーラーにクルマを持って行かなければならない。
けれど、レクサスは希望すればユーザーの自宅までクルマを引き取りに行き、満タンで返却した。これでユーザーの信頼を得た。
一番の失敗は前述のフィットだろう。度重なるリコールで顧客が怒り、対応疲れしたディーラーも充分な対応をできる余裕なし。実際、アメリカだって続けて6回リコール出したら日本よりはるかに厳しい社会的な制裁を受けることだろう。
ということでリコールは恥ずべきことじゃないと思うが、何度も出したら大きなダメージになります。
「サービスキャンペーン」はリコールと何が違う?
さて、リコールと同じような不具合ながら「サービスキャンペーン」というのがある。これまで最も大きな規模のサービスキャンペーンは、50系エスティマなどに搭載されていた2.4L・4気筒ガソリエンジンの例でしょう。オイル消費量が極端に多いエンジンもあり、ピストン交換などしなければならないほど。
リコールとサービスキャンペーンの違いは、明確な基準がないようだ。前述エスティマの場合、最悪エンジンオイル減って焼き付く。かといえばインプレッサのように、取扱説明書の誤記載(注1)だけでリコールすることもある。
ボーダーラインは国交省の担当者の判断になるのだろう。取材していても「あれれ?」と思うケースが多い。
ちなみにリコールの場合、そのクルマが稼働している限り改修しなければならないと義務付けられている。極端な話、20年後でも対応しなければならないようだ。
サービスキャンペーンであれば“時効”があり。トヨタの2.4Lも新車登録日から9年となってます。その間に受けなければ権利なくなるということ。