ナルディやMOMOは何処へ!? 新車のハンドル なぜ一流ブランドは激減してしまったのか

 国産車において、かつてはメーカー純正で「モモ」や「ナルディ」といった有名ブランドのステアリングが装着されることは珍しくなかった。

 しかし、15年ほど前からその傾向は薄くなりはじめ、現在は有名ブランドのステアリングが装着されている新車はほとんどなくなった。

 なぜ、有名ブランドのステアリングは新車から激減したのか? 本稿ではノーマル状態での有名ブランドのステアリング装着の移り変わりを振り返りながら、現在そういったクルマが絶滅状態になっている理由をメーカーに取材、その裏には技術の進化があるようだ。

文/永田恵一
写真/SUBARU、HONDA、MAZDA

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■有名ブランドのステアリング 新車装着の推移は?

写真は2001年に登場した2代目シビックタイプR。このモデルまではMOMO製ステアリングが純正採用されていた
写真は2001年に登場した2代目シビックタイプR。このモデルまではMOMO製ステアリングが純正採用されていた

 1990年代終盤までノーマルのステアリングはスポーツモデルでも「径が大きく、触り心地もイマイチ」ということがほとんどだった。そのなかで、こだわりのある人でもノーマルのステアリングで満足できたのは、R32型スカイラインのGT-R、GTS-tタイプM、GTSタイプSの3本スポークくらいだったように思う。

 そのため、特にエアバッグが普及していなかった1990年代後半までは、スポーツモデルのユーザーが、ステアリングを自分の好みのブランドのものに換えることは、カスタマイズの第一歩といえるくらいポピュラーなことだった。

 昭和の時代から自動車メーカーにもそういった認識はあったようで、1980年代中盤にいすゞがジェミニなどの独イルムシャーや英ロータスチューンを追加した際にステアリングをノーマル状態でモモ製としたあたりから、新車のノーマル状態で有名ブランドのステアリングが付くことは珍しくなかった。

 例えば、日産/7代目スカイライン GTS-Rの「イタボルランテ」、トヨタ/初代スープラ、4代目スターレットなどの「モモ」、マツダ/初代ロードスターがグレードによっても「モモ」と「ナルディ」、スバル/レガシィに「モモ」、インプレッサに「ナルディ」、三菱自動車/ランサーエボリューションに「モモ」、ホンダ/タイプRに「モモ」といった具合だ。

ナルディ製ステアリングが純正採用された2代目ロードスターVS
ナルディ製ステアリングが純正採用された2代目ロードスターVS

 スポーツモデルにおける有名ブランドのステアリング純正装着は、エアバッグが標準装備されるようになった1990年代後半以降も続き、日産車ではディーラーオプションでエアバッグ付の有名ブランドのステアリングがオプション設定されていた時期もある。

 しかし2000年代後半、3代目ロードスター、4ドアセダンの3代目シビックタイプR、ランサーエボリューションⅩ、3代目インプレッサあたりから有名ブランドのステアリングの装着は見なくなり、現在も続けているのはダイハツコペンのS系とGRスポーツくらいである。

■なぜ有名ブランドのステアリングは激減? メーカーの見解は

こちらが2代目ロードスターに採用されたナルディ製ステアリング
こちらが2代目ロードスターに採用されたナルディ製ステアリング

 なぜ激減したのか? 以下のとおり大きく4つの理由が浮かぶ。

●各メーカーの純正ハンドルが良くなった

 スバルに社外製ステアリングホイールの純正採用が減った理由を聞くと、「技術の進化で、社外製を採用しなくても高品質なステアリングを提供できるようになったため(高触感革を採用したステアリング等)」との回答が得られた。

2代目インプレッサでは写真の改良モデルからMOMO製ステアリングの純正採用がなくなっていった
2代目インプレッサでは写真の改良モデルからMOMO製ステアリングの純正採用がなくなっていった

 確かに1990年代終盤から、トヨタ/2代目スープラの後期モデル以降、日産/10代目スカイライン以降、ホンダ/S2000以降、スバル/2代目インプレッサWRX STI(C型)以降で、エアバッグの小型化が進んだこともあり、軽量化され見た目もシャープ、径も小さい方向になった。

 これにより、スポーツモデルでもノーマルのままで満足できるステアリングが増えてきたため、有名ブランド製ステアリングの必要性が薄くなったのもうなずける。

●ステアリングスイッチの増加

コペン GR SPORTに装備されるモモ製ステアリング
コペン GR SPORTに装備されるモモ製ステアリング

 同様の質問に対して、マツダからは「エアバッグの他にADAS(運転支援システム)やオーディオのスイッチなどが増え、ステアリング周りの機構が多様化・複雑化しているため、純正で対応し、社外製の採用が減少しました」という回答があった。

 現在のクルマのステアリングは、上記以外に走行モードやメーター表示などの切り替えスイッチなども付き、操作パネルの1つのような役割もしている。

 前述した現行コペンに装着されるモモのステアリングに付くのはオーディオのスイッチだけなので対応も可能なのだろうが、左右のスポークにスイッチが付くステアリングを海外のステアリングメーカーに対応してもらうというのは無理のある話だ。

●D型ステアリングの増加

S660の純正ステアリングホイール。下側が平らなため、乗り降りの際に膝が当たりにくい
S660の純正ステアリングホイール。下側が平らなため、乗り降りの際に膝が当たりにくい

 乗り降りの際に太腿が当たらない等のメリットを持つD型ステアリングは、スポーツ走行などでカウンターステアを当てる際などの操作性の問題もあるが、GT-Rをはじめとした日産車やWRX、S660など日本車でもそれなりに装着例がある。

 海外のステアリングメーカーに、エアバッグやスイッチが多数付く挙句、D型のステアリング形状に対応してもらうというのも、やはり無理があるだろう。

●ステアリングの種類が減少

 近年の新車では同じメーカー内でもステアリングの種類がだいぶ種類が減っている。これは選択と集中により「いいものを低コストで提供する」という動きで、確かにいいステアリングも増えている。

 こうした動きが進んでいるなかで、安くないであろう有名ブランドのステアリングを増やすのはやはり難しい。

 これだけ時代の変化があれば、ノーマル状態で有名ブランドのステアリング装着したクルマが激減したというのは納得はできるだろう。

◆  ◆  ◆

 ここ数年、ナンバー付のワンメイクレース車やラリー車でもステアリングはノーマルのままということが増えており、それは「ノーマルのステアリングが劇的によくなった」という象徴でもある。

 それだけに今後ノーマル状態で有名ブランドのステアリングが装着されることやステアリングを交換するというカスタマイズは、一般的には過去の懐かしい話となりそうだ。

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