2020年12月4日、三菱『エクリプスクロス』がマイナーチェンジ。全長が140mm伸び、ソリッドな顔つきなどデザインが一新されたが、最大の注目点はPHEVモデルが加わったこと(一方で2019年に追加されたディーゼルが今回廃止されたが……)。
三菱が得意とするPHEVがどのように進化しているのか!? 同じ“電動車”を愛車にする片岡英明氏に「普段使いのPHEVモデル」としてどうか、試してもらった。
文/片岡英明
撮影/平野学
初出/ベストカー2021年1月26日号
【画像ギャラリー】単なる仕様追加にあらず! 新型エクリプスクロスPHEVの魅力を写真でチェック!!
■EVを愛車にする筆者が気になるPHEV!
ボクが電動車に興味を持ったのは、発売前に乗せてもらった三菱『i-MiEV』の気持ちいい走りに魅せられたからだ。モーターは瞬時にパワーとトルクが立ち上がり、シームレスな加速を披露した。しかも驚くほど静か。この印象は強烈で、その後縁あってBMW『i3』が愛車となった。
EVの弱点のひとつは航続距離が短いこと。だからそれを延ばせるレンジエクステンダーモデルを購入。現在の愛車はピュアEVのホンダ『ホンダe』だが、ロングドライブでの安心感はエンジン付きのレンジエクステンダーにかなわない。
そんなEV偏執狂のボクだから、レンジエクステンダーより実用性の高い三菱のプラグインハイブリッドには期待を持っている。モーターを前後に配し、4輪の駆動力と制動力を最適に制御することで優れた操縦安定性を実現する車両運動統合制御システムの「S-AWC」を採用したアウトランダーPHEVは、電動車両の新しい姿を見せてくれた。
当然、最新のエクリプスクロスPHEVにも興味津々。今回、念願の試乗だ。ご存じのようにハイブリッドシステムに充電ポートを追加し、家庭などで充電してモーター走行による距離を延ばしたのがPHEV。駐車中に充電するから発電にエンジンを使うことが減り、燃費がよくなるのである。
■ガソリン車には真似できないパワーとトルクが瞬時に!
エクリプスクロスPHEVの基本的なメカニズムはアウトランダーのものと変わっていない。車両重量も大差ないが、ステアリングを握ってみると、走りの印象は大きく違う。ただのエコカーでは終わっていないのだ。
「EV走行モード」は、街中を主体にした走りで真価を発揮すると感じる。ガソリンエンジンには真似のできない上質な走り味に魅了された。特にパワーとトルクが瞬時に立ち上がり、レスポンスも鋭いからスッとクルマが前に出るのだ。ウィンカーの音が耳障りと感じるほど静粛性も高かった。
エンジンで発電し、モーターで走る「シリーズ走行モード」は、基本がモーター走行になる。瞬時にパワーが湧き出し、軽やかにスピードを乗せていく。エンジンで走る時の静粛性も、兄貴分のアウトランダーより上の印象だ。
さらに「パラレル走行モード」ではエンジンが主役になる。効率のよい回転域を使うため滑らかに加速し、モーターが後押しすると身軽になると感じた。
全体を通して制御がより緻密になり、洗練された印象だ。
■懐が深い制御に驚く!
ハンドリング性能はアウトランダーよりはるかにスポーティ。ボディを含めた剛性が高く、足の動きも軽やかだ。狙ったラインにたやすく乗せることができ、連続するコーナーもリズミカルに駆け抜けていく。自然な操舵フィーリングと群を抜くトレース性の高さが光っている。
懐が深くコントロールできる領域が広い、システムの制御は絶妙だ。4WDを意識させることなく、気持ちいい走りを実現。それを体感できた。意のままにクルマが動き、運転する楽しさもある。エクリプスクロスPHEVの最大の特徴であり、魅力と言えるだろう。
魅力といえば、ビッグMCといえるほどフロントマスクは凛々しく変わり、リアのダブルウィンドウを廃したことで後方視界もよくなった。姿も進化した、ということだ。
1充電で57.3km(WLTCモード)をモーター走行できるからチョイ乗りではガソリンを使わないし快適性も高い。また急速充電器を使える点も高ポイント。“クルマ魅力値”がかなり高いモデルである。