■雪載せ車には、意外なほどたくさんのリスクがある
前述のルーフに載せた雪がボディから滑り落ちた時に起こり得るトラブルは、1つや2つではないのである。
まず車速がそれほど高くない状態では、ちょっと強めにブレーキペダルを踏んだことでルーフの雪が自分の前に落ちれば、そこにタイヤが乗り上げてクルマの姿勢が乱れることにつながる。
またワイパーに雪の塊がぶつかることで、ワイパーブレードが折れたりワイパーアームが曲がってしまうこともある。再び雪が降ってきた時にワイパーが壊れていては視界が確保できないから、これは結構なダメージになる。
路面のギャップを通過した際など車体に伝わる衝撃などで、ルーフの雪が落ちて、他車に迷惑をかけることも多いにあり得る。溶けかかっているシャーベット状の雪であれば問題はないが、日陰などに駐車したことで全体が再び凍ってしまうと硬い氷の塊となり、それが落下して後続車のボディを直撃すれば、ボディ外板など簡単に凹んでしまうだろう。
後続車は適切に車間距離を取る必要があり、前方でハプニングが起きたとしても回避できる余裕をもって運転することが義務付けられているが、だからといって落下物を落としたドライバーに責任が課せられない訳ではない。
道交法で積載物は落下しないようしっかり固定することが義務付けられている。だがクルマに積もった雪は積載物にはあたらないだろう。しかし積載物にあたらなくても、雪が氷となってから落ちたことで起こる危険性が予見できるものと判断されれば、落としたクルマのドライバーに責任が及ぶことは有り得る。
そもそも雪を載せたまま走行することで、安全運転義務違反で検挙される可能性もある。首都圏では積雪自体が少ないから、そうしたことはまずないだろうが、寒冷地では実際に検挙されたケースもあるようだ。
中途半端に溶けた雪の塊は重く、表面が凍っていて硬くなっている場合もある。除雪された道路上で、自転車やオートバイの進路上に雪の塊を落とし、それに乗り上げたことで転倒し交通事故などにつながれば、やはり雪の塊を落としたクルマのドライバーが事故の責任を問われることになる可能性は少なくない。
以前であれば、雪を落としたクルマの特定など難しく、これで罪に問われるようなことはなかっただろう。しかし、ドライブレコーダーの装着率が高まっている昨今では、自分が気付かないうちに交通事故の一因を作っていることを、のちに立証されてしまう可能性もある。
ある日突然、警察官が自宅にやってきて、交通事故の当事者として任意同行を求められたり、行政処分を受けることだって有り得るのだ。あるいは損害を受けたライダー、ドライバーから民事訴訟を起こされて、損害賠償を請求される、なんてこともないとは言い切れないのだ。
ルーフに積もった雪は、T字型のワイパーなどで手前に引き落とすようにすると、比較的簡単に(積雪量にもよるが)落とすことができる。ルーフに残したまま走行するのは止めることだ(特に路面に雪がない場合は絶対)。
それとボディサイドの地面に落とした雪が溜まるので、乗り込む際には靴の裏側に雪が詰まってペダル操作のしまわないように注意したい。シートに座ったら、身体を90度回転させて両足先をクルマの外に出し、両靴同士で叩き合って雪を落としてから正しいポジションに座り、フロアマットで水気を落としてからブレーキペダルを踏んでみて、滑らないことを確認してから運転操作する。これは雪道走行の運転準備の基本だ。
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