日産のe-POWERは再びトヨタとホンダを駆逐できるのか?

ノートとセレナにe-POWERを追加して販売が伸びた2つの背景とは?

2016年8月に発売、2018年3月にe-POWERが追加された現行セレナ。2019年8月のマイナーチェンジでは、緊急ブレーキなどを含む全方位運転支援システムを全車標準装備
2016年8月に発売、2018年3月にe-POWERが追加された現行セレナ。2019年8月のマイナーチェンジでは、緊急ブレーキなどを含む全方位運転支援システムを全車標準装備

 ノートとセレナがe-POWERの追加で売れ行きを伸ばした背景には、2つの理由があった。ひとつ目はe-POWERの商品力が高いことだ。ハイブリッドだから燃費性能が優れ、e-POWERはエンジンが発電を行って駆動はモーターが担当するから、加速感も滑らかでノイズも小さい。

 モーターは瞬発力が強いため、アクセル操作に対して車両が機敏に反応するメリットもある。つまりe-POWERは、燃費、動力性能、滑らかさ、静粛性などをバランス良く向上させて、魅力的なパワーユニットになった。

 さらにe-POWERでは、エコ/スポーツモードを選択すると、アクセルペダルを戻すと同時に強めの回生が行われる。減速エネルギーを使って発電を行い、駆動用電池に充電する制御が活発になるわけだ。

 そのためにエコ/スポーツモード時に、アクセルペダルを大きく戻すと、速度も大幅に下がる。この特性を利用すると、アクセル操作だけで速度を自由に調節できる。強めの減速を必要としない街中の通常走行では、ブレーキペダルを踏む機会がほとんどないほどだ。

 この「ワンペダル走行」は、e-POWERの副産物と考えられる。ハイブリッドを含めたほかのクルマとは運転感覚が異なるので、違和感が生じたり好みに合わないこともあるが、日産は上手に宣伝してe-POWER搭載車の好調な売れ行きに結び付けた。

e-POWERの「ワンペダル走行」イメージ図
e-POWERの「ワンペダル走行」イメージ図

 ノートとセレナがe-POWERで売れ行きを伸ばした2つ目の理由は、日産車のラインナップ事情だ。2011年以降の日産では、リーマンショックによる世界的な不況の影響もあり、国内で発売される新型車が滞っていた。

 特に2015年頃になると、ティーダなども廃止され、好調に売れる日産車は、先代ノート、先代セレナ、現行エクストレイル、先代型のデイズやデイズルークスに限られていた。そのために売れ行きも下がり、国内における日産の販売順位は、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位となっていた。

 その一方で日産は保有台数が多いから、乗り替えを希望するユーザーも豊富だ。2012年には先代ノートが登場したが、ティーダなどのユーザーから見ると物足りない。購入したい車種が見つけられずユーザーが困っていた時、2016年にノートにe-POWERが加わって乗り替え需要が集中した。

 e-POWERは前述の通り加速が滑らかでノイズは小さい。ワンペダル走行にも新鮮味がある。当時は先進性を実感できるハイブリッドだったから、ノーマルエンジンを搭載するノートに比べると、満足感も高く売れ行きも伸びた。

 一時はノート全体の約80%をe-POWERが占めた。前述の通り2018年には、小型/普通車の登録台数1位にもなった。セレナも事情は似ている。売れ行きを伸ばせるミドルサイズ以上の日産車が乏しく、販売力がセレナに集中した。

 当時、トヨタの販売店からは「売れ筋の商品が限られる中で、日産の販売会社があれだけのセールスを保てるのは立派。販売力でしっかりと勝負している」という声も聞かれた。

 このようにe-POWERは、CM効果まで含めた商品力と「e-POWERしか売れるクルマがない」切実な事情によって売れ行きを伸ばした。

 e-POWERが成功したと一概に喜べる状況ではなかったが、日産はそのように受け取り、当初は日本向けだったe-POWERを環境技術の中心に位置付けている。燃費向上のニーズは海外が日本よりも強いほどだから、e-POWERの開発は世界的にもタイムリーであった。

次ページは : 現行ノートとキックスはe-POWERしかラインナップしなかった理由

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