現行ノートとキックスはe-POWERしかラインナップしなかった理由
そして新型ノートやキックスは、e-POWERしか用意していない。この背景にも2つの理由がある。ひとつ目は前述の通りe-POWERの販売比率が高いことだ。
2つ目にはコスト低減がある。低価格のノーマルエンジン車を用意すると、エンジンなどに複数のメカニズムが必要になり、インパネやシートなどの内装まで作りわけなくてはいけない。
NAエンジン車はハイブリッドよりもライバル同士の価格競争が激しく、販売の好調な軽自動車とも競い合う。新型ノートはインパネからシートまで、内装の質を高めたが、同じものを150万~160万円のNAエンジン車に搭載するのは難しい。そうなると内装まで作り分ける必要が生じる。
これらの課題に対応すべく、選択と集中によって、新型ノートとキックスはe-POWER専用車になった。グレードも少ない。
新型ノートは3種類のみで、実際に購入されるのは運転支援機能のプロパイロットを唯一オプション装着できるXに限られる。
キックスはタイの工場で生産される輸入車でもあるから、グレードはXのみで、パッケージオプションを選べるだけだ。
新型ノートe-POWERの魅力とは?
新型ノートを運転すると、e-POWERの魅力を引き出す作りになっている。プラットフォームは、主に業務提携を結ぶルノー側が新規に開発を行い、新型になったルノールーテシアと共通だ。乗り心地、走行安定性、操舵に対する反応の正確性などを高い水準で両立させている。
内装も上質だ。プロパイロットやLEDヘッドランプをオプション装着すると、価格は割高になるが、車両自体の造りはライバル車のヤリスを上まわる。フィットに比べると、後席と荷室の広さでは負けるが、走行安定性と乗り心地では勝る。
2021年後半には新型エクストレイル登場
そして今後は、エクストレイルもe-POWERを搭載して登場する。北米ではエクストレイルの海外版となるローグがすでに発売されている(エンジンは2.5L、直4)。それなのに日本で安全面を含めて商品力の劣る旧型エクストレイルを売るのは好ましくないが、2021年の後半には次期型が登場する見込みだ。
次期エクストレイルの基本部分は海外の新型ローグと共通だが、パワーユニットは異なる。次期エクストレイルにはe-POWERが搭載され、次期アウトランダーと同様のPHEV(プラグインハイブリッド)を採用する可能性も高い。日産/三菱/ルノーの業務提携に基づき、次期アウトランダーを含めて、次期エクストレイルやローグと基本部分の共通化を進めるからだ。
このほかエクストレイルでは、価格の割安な2LのNAエンジンも加える。ノートやキックスよりも大きなミドルサイズカーだから、e-POWER搭載車の価格は、セレナe-POWERハイウェイスターと同等の330万~380万円だ。これだけでは価格帯が大幅に高まるので、270万~330万円のNAエンジン車も用意する。
以上のように、これから日産の国内における小型/普通車は、売れ筋車種についてはe-POWERが中心になる。コンパクトサイズはノートとキックス、ミドルサイズはセレナと次期エクストレイルという構成だ。これに軽自動車のデイズとルークスも加える。
イメージリーダーカーはフェアレディZだ。エルグランドは発売から10年を経過しながら、フルモデルチェンジではなくマイナーチェンジを実施した。同じパターンだった最終型のエスティマと同様、現行型が最後になる可能性もある。セダンも人気の乏しいカテゴリーだから、力が入りそうもない。
アリアなどの電気自動車は充実させるが、気になるのは将来に向けた環境技術だ。日本では総世帯数の約40%が集合住宅に住み、自宅に充電設備を設置できないユーザーも多い。電気自動車は大切な商品だが、直近で大量に売るのは難しい。
そうなると国内市場の主力車種は、前述のe-POWER搭載車と軽自動車だ。これからも少数精鋭で戦う。だからこそ各車種を大切に扱う必要があり、新型ノートは上質な国内専用車に仕上げた。
言い換えれば新型ノートを丁寧に作り込んだ背景には、国内で販売する日産車の数を抑える目的もある。ノートが国内販売を支える大切な柱になり、1車種でしっかりと稼いでもらう戦略だ。
セレナや次期エクストレイルも含めて、各車種の役割が今まで以上に重くなり、優れた商品力で販売の回復を目指す。もちろんトヨタとホンダのライバル車を駆逐することが前提だ。
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