■伝説は終わらない! 特別仕様車マスタング・ブリット登場!
本作の監督であるイギリス人のフィルムメーカー、ピーター・イェーツはマックィーンのチョイス。その起用理由は、彼が本作の前に監督した作品『大列車強盗団』(67)でロンドンの街を走り抜ける見事なカーチェイスシーンを演出し、それをマックィーンが気に入ったからだ。
ちなににイェーツは役者からレーシングドライバーになり、その後に映画の録音マン、助監督を経て監督になったというユニークな経歴の持ち主。カーアクションの演出が上手いのは、その経歴のせいなのかもしれない。
また、フォードのマスタングにとってもこの映画の存在は大きくて、『ブリット』公開50周年だった2018年、特別仕様の“マスタング・ブリット”を発売したほど。そもそもこの映画が公開されてからは、マックィーンが乗ったマスタングは“マスタング・ブリット”と呼ばれていた。
もうひとつ、車とは関係ないが、マックィーンの刑事ファッション。タートルネックのセーターに、エルボーパッチ付きのツイードのジャケット、ステンカラーコートにデザートブーツという、このコーディネートもかっこよくて、当時の刑事さんたちが大いに真似っこしたというエピソードも残っている。
さらにもうひとつ、オープニングデザインも、とんでもなくスタイリッシュでスマート。
ラロ・シフリンのクールなテーマ曲と相まって、これまた映画のオープニングを語るときには欠かせないと言えるほど有名。これが代表作のひとつになったパブロ・フェロもスタンリー・キューブリック等に愛された天才デザイナーだ。
こうやって書いてみると「クール」とか「かっこいい」という言葉ばかりが羅列されているが、実際そういう映画なんだから仕方ない。
唯一のマイナスポイントはストーリーの弱さ。通常はそれが致命的な欠点になるのだが、それさえもマックィーンのかっこよさやカーアクション、スタイリッシュな映像や音楽がちゃんとカバーしているのだがら、『ブリット』おそるべしなのだ。
観たことのない人は是非! と全力でおススメしたい。
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●解説
シカゴのギャング組織撲滅のため、証人保護を命じられたサンフランシスコ市警の刑事フランク・ブリット。だが、証人は何者かに襲われ瀕死の重傷を負ってしまう。
スティーブ・マックィーンのスピード狂っぷりが堪能できる刑事アクションの傑作。共演に『映画に愛をこめて アメリカの夜』(73)のジャックリーン・ビセット。監督は『ホット・ロック』(71)のピーター・イェーツ。彼の代表作となった。(1968年製作/114分/アメリカ映画)
●渡辺麻紀(わたなべまき)/映画ライター。SF雑誌の編集を経てフリーに。雑誌は『SFマガジン』『アニメージュ』等、WEBは『ぴあ』『TVブロス』等に執筆中。
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『ブリット』
日本語吹替音声追加収録版ブルーレイ ¥6,369(税込)/DVD ¥1,572(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
Bullitt (c)1968, Package Design & Supplementary Material Compilation (c)2008 Warner Bros.Entertainment Inc. Distributed by Warner Home Video. All Rights Reserved.
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