■支払い途中で乗り換え!? 残価設定ローンの使い方
販売現場で話を聞くと、「厳密に走行距離オーバーや、内外装の傷や汚れを指摘して追加分を請求することは、常識的な範囲のオーバーならば、客商売でもあるし請求できない」と、複数のディーラーで聞いている。
ただ、導入してしばらくすると、新車への乗り換えではなく、車両返却が目立つようになり、販売現場を少々慌てさせたという話も聞いている。囲い込みを狙っているので、他メーカー車への乗り換えとなると、何かと面倒ということもあり、利用も伸び悩みを見せていたようである。
しかし、ここ数年では、残価設定ローンが認知され利用が目立ってきた。それは残価設定ローンも進化を遂げてきており、使い勝手がよくなっているのもその背景にはある。まずは、支払途中でも、下取り査定に柔軟に対応してもらえるようになったことがある。
いまどきの設定残価率は5年払いで35%ぐらいが一般的。ただ、これはかなり安全圏といってもいい残価率でもあるので、いまどきの新車ディーラーでは支払途中での新車への乗り換えを勧めるのが当たり前となっている。
支払最終回まで払い続け完済するより、支払途中のあるタイミングで下取り査定を行い、算出された下取り額で残債整理をすると、ケースによっては“お釣り”が残り、乗り換える新車の支払いにまわすこともできるのである。「完済せずに乗り換える」のが、残価設定ローンの賢い使い方とまでいわれている。
支払途中での乗り換えが目立ってきているので、いまでは他メーカー車で残債が残っていても、そのまま下取り査定を行い、新車の購入が決まれば、下取り車の残債処理や所有権解除を行ってもらえたり、買い取り専業店でも一部では、支払途中であっても買い取りに応じるところも出てきている。
ただ気になるのは、長い間表向きでは“禁じ手”とされていた、“借り換え”がメーカー系信販会社でさえ行えるようになってきていること。
借り換えとは、支払途中のクルマを下取り査定額により残債整理をしようとしたら、下取り査定額では残債が処理しきれなかった場合、処理しきれなかった残債分を乗り換え予定の新車のローンの元金に上積みして支払いを行うことである。
例えば、単純に新車を購入するだけならば、250万円の割賦元金で済んでいたのを、下取り車の残債のうち処理できなかった分として50万円あったとすると、この50万円を元金に上乗せし、割賦元金を300万円として支払いを行うことだ。
直近では、借り換えに躊躇せず新車へ乗り換えるひとも目立ってきており、売る側のセールスマンが逆に躊躇することもあると聞く。
■残価設定ローンの2つの形を覚えよう
残価設定ローンには、“残価保証型”と、“再査定型”が存在する。
前者は過走行や内外装の傷や汚れなどで一定マイナスポイントを超えない限りは、たとえ設定残価より市場相場が下がっても残価が保証されるが、後者では支払最終回時にその時の相場をベースとした再査定を行い、精算することになるので、追加払い発生リスクは増大する。
日系ブランドではレクサスを除き、すべてのブランドでは残価保証型となっており、輸入車では残価保証型と再査定型を併用するブランドも目立っている。併用するディーラーでは、リスクが高いとして再査定型のほうが金利は低い。
メルセデスベンツは残価保証と再査定を併用しているブランドのひとつだが、メルセデスベンツでは、「設定残価より、実際の相場のほうが高くなることが多い」として、再査定型をけっしてネガティブには捉えていない。
輸入車の下取りには二の足を踏む、日系ブランドディーラーでも、メルセデスベンツなどドイツ系高級ブランドに限っては“ウエルカム”となるほど、日本では圧倒的なブランドステイタスを誇るので、納得できる話である。
消費者意識の変化も大きいようである。いまどきでは、新車購入予算として300~400万円を現金で用意するのは至難の業。そのため、現金一括払いでのクルマの乗り換えタイミングでは、初度登録(軽自動車は届け出)から13年超で自動車税がアップするか、致命的な故障が発生するまでと長期化してしまう。
その一方で、ローンの月払いを、電気料金や水道料金といった公共料金のように、“家計の一部”と捉えるひとが増えてきている。つまり、月々の支払い額がそのまま、あるいは許容範囲の上乗せならば、新車へ短期間で乗り換え続けるひとも増えている。
そのため、ローンの組み方もフルローンが目立ってきているという話も聞いている。アメリカや意外なところでは東南アジアも含み世界的には、新車購入時にローン(あるいはリース)を組むのは当たり前。
そのため商談も支払総額ではなく、月々の支払い額ベースで値引き交渉が展開されるのである。何かと“ガラパゴス”といわれる日本だが、新車の買い方は急速にグローバル化しているように見える。
事実、過去の折り込みチラシでは、“いまなら20万円引き”といった表示が目立っていたが、いまでは(ウエブチラシなど)低金利や月々の支払い額などを強調したものへ、買い得感の煽り方も変化してきている。
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