もともと売れていたのになぜ!? 最後はライバル車に負けた人気車 4選

■マツダ2(旧デミオ)

ライバル車の登場が相次いだマツダ2(デミオ)。予算に余裕のあるユーザーが新型となったマツダ3に移行したのも要因となった
ライバル車の登場が相次いだマツダ2(デミオ)。予算に余裕のあるユーザーが新型となったマツダ3に移行したのも要因となった

 マツダではロードスターやSKYACTIV-Xを搭載するマツダ3の印象が強いが、2020年に日本国内で最も多く売られたマツダ車は、マツダ2(旧車名:デミオ)で月平均2364台が登録された。

 現行型の発売は2014年で、2015年には月平均で6468台が登録されている。最終型ヴィッツと同等の台数であった。ところが2016年には21%減り、2020年は前述の2364台だ。コロナ禍の影響を受けたとはいえ、マツダ2の売れ行きは5年前の37%まで激減した。

 背景にはライバル車の相次ぐ登場があった。2016年にはノートにe-POWERが加わり、2017年にはヴィッツもハイブリッドを設定した。同年に現行スイフトも発売されている。直近では2020年に新型ヤリス、フィット、ノートが登場した。

 また2019年にはひとまわり大きなマツダ3も新型になり、予算に余裕のあるユーザーは、購入車種のサイズアップを図った事情もある。

■トヨタ C-HR

爆売れした分なのか、落ち方も早かったトヨタ C-HR。同社のRAV4にも需要を奪われた
爆売れした分なのか、落ち方も早かったトヨタ C-HR。同社のRAV4にも需要を奪われた

 トヨタ車で販売の急落した車種としてC-HRも挙げられる。登場は2016年の末で、2017年には月平均の登録台数が約1万台に達した。プリウス、ノート、アクアに次ぐ売れ行きだ。ところが2018年は急落して、対前年比が35%減少した。

 さらに2019年にも27%減り、2020年も39%のマイナスだ。2020年の月平均登録台数は2806台だから、約1万台の2017年に比べると、コロナ禍の影響があったとはいえC-HRの売れ行きは約3年間で30%以下まで落ち込んだ。

 ここまで下がった理由は、C-HRの商品特性にある。外観が個性的で、実用性よりも趣味性で売れる商品だ。このような車種はすぐに欲しいと思わせるから、ユーザーは、愛車の車検期間が残っていても即座に乗り替える。

 従って発売直後には売れ行きが急増するわけだ。その代わり生活必需品的な実用重視の車種ではないから、需要が一巡すると早々に売れ行きを下げる。以前の日本車には、このような売れ方をするスポーティクーペが多かった。

 そして2019年4月には現行RAV4が登場した。RAV4の価格は、同等の装備を採用したC-HRよりも40万円前後高いが、そのぶん後席と荷室も広い。C-HRはコンパクトSUVだが、RAV4は立派なミドルサイズだ。

 しかもRAV4には野性味が感じられ、最近のSUVの原点回帰を求めるユーザーの好みに合う。これらの条件が重なり、RAV4はC-HRのユーザーを奪った。販売店からも「ファミリーのお客様は、最初はC-HRを検討しながら、最終的にRAV4を買うことがある」という話が聞かれる。

■ホンダ ステップワゴン

ホンダ ステップワゴン。低車床が災いしたか、モデルチェンジで背を高くしたが人気はヴォクシーなどに奪われたままだった
ホンダ ステップワゴン。低車床が災いしたか、モデルチェンジで背を高くしたが人気はヴォクシーなどに奪われたままだった

 1996年に発売された初代ステップワゴンは、全高が1800mmを超えるハイルーフの国産ミニバンでは、最初の前輪駆動車だった。

 後輪駆動のライバル車に比べて床が低いから、乗降性が優れ、室内高にも余裕がある。低重心で走行安定性も良く、ミニバンの定番車種になった。1997年には月平均で約9200台を登録している。2001年には2台目になり、月平均で約1万台が登録された。

 ところが2005年登場の3代目は売れ行きを下げた。プラットフォームを刷新して床を従来以上に低く抑えたから、充分な室内高を確保したうえで、全高を1800mm以下に設定している。

 ミニバンの機能を下げずに、乗降性や走行安定性を向上させたが、背を低く抑えたことで「車内が広そうに見えない」、「堂々とした存在感が乏しい」、「視線が低めで車内から周囲を見下ろす気持ち良さが薄れた」と市場から批判された。

 そこで2009年に発売された4代目、2015年登場の現行型は再び背を高めたが、売れ行きは伸びない。現行型は2016年に月平均4373台を登録してノアやフリードと同等になったが(それでも初代/2代目の発売直後の半数以下)、2017年には3871台に下がった。

 この後にハイブリッドを設定した効果で盛り返したが、2020年は2870台だ。ヴォクシーの5793台に比べて大幅に少ない。

ステップワゴンの人気低下にはフリードの存在もある。同等の仕様で50万ほど安く、外見も立派に見えるので「フリードで充分」と思わせてしまうのだ
ステップワゴンの人気低下にはフリードの存在もある。同等の仕様で50万ほど安く、外見も立派に見えるので「フリードで充分」と思わせてしまうのだ

 ステップワゴンが伸び悩む背景にはフリードの存在がある。フリードはコンパクトミニバンだが、全高は1700mmを上まわり、外観は立派に見える。しかも価格は装備が同等の仕様同士で比べて約50万円安い。「フリードで充分」と思わせる。

 その点でトヨタのシエンタは、薄型燃料タンクの採用で床を低く抑え、居住性と積載性に余裕を持たせながら全高は1700mm以下だ。ワゴン風のミニバンに仕上げ、ヴォクシーやノアとの直接競争を避けている。

 またステップワゴンの販売低下には、軽自動車の好調な売れ行きも影響した。2020年に国内で売られたホンダ車の半数以上が軽自動車だ。しかもN-BOX+N-WGN+フィット+フリードの販売台数を合計すると、2020年に国内で売られたホンダ車の69%を占める。

 この状況では、ホンダのブランドイメージも変化する。中高年齢層にとって、ホンダはスポーティで個性的な商品を開発するメーカーだが、若年層にはもはや小さなクルマのブランドだ。

 軽自動車やコンパクトな車種が好調に売れると、ステップワゴンを積極的に売り込む余裕もなくなる。ステップワゴンの販売低下は、軽自動車を筆頭に、一部のホンダ車が好調に売れたことの裏返しでもある。

*   *   *

 このようにさまざまな事情により、クルマは売れ行きを下げていく。先に紹介したマツダ2などは細かな改良を頻繁に行って商品力を維持しているが、それでも販売低下は避けられない。同じメーカーが手掛ける車種のフルモデルチェンジなども含めて、いろいろな事情が影響を与えている。

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