LPG車のタクシーはどうなるのか?
乗用車全体の販売では現状でハイブリッドがマーケットでの主役であることはいうまでもなく、タクシー車両の現状がどうかといえば、大枠としては2017年10月に発売されたトヨタジャパンタクシーが確実に増加。
セダン型のこれまで長く使われ続けたクラウンコンフォートやトヨタコンフォート、クラウンセダンのLPG車両は2018年1~2月には新車販売が終了しており、街を走っている車両も徐々に減っていくことになるだろう。
いっぽうで、一部のタクシー運営会社では、シエンタのガソリン仕様車やハイブリッド仕様車をガソリン/LPGのバイフューエル仕様に改造する例もあるようだ。さらにセダンを好む顧客への対応として、カムリ(ガソリンハイブリッド)が少数派ながら見られる。
LPGの大きなメリットはなんといっても燃料代の安さだ。
2021年2月初旬現在の全国平均小売現金価格(石油情報センター調べ)を見ると、レギュラーガソリンが139.6円、ハイオクガソリンが150.5円、軽油が120.1円。そして軽油からさらに約32円も安いのが、オートガス(LPG)の88.1円(東京23区現金価格)である。もはやオートガスの安さは圧倒的である。
ちなみに、タクシー車両のLPG仕様への改造・販売を手がける業者では、LPGの燃料系(燃料タンク搭載含む)の改造費は70万円前後のようで、燃料コストの低さを考えればLPG仕様への改造コストも元が取れると考えることもできる。
このような動きが出てきた理由は、ジャパンタクシーの価格は標準グレードの「和」が333万8500円、上級グレードの「匠」が356万4000円と、設計時にベースとなったシエンタのハイブリッド仕様が222万7500円~258万円であることを考えれば、ジャパンタクシーが高価と捉えられていることだ。
LPGを利用できるバイフューエル仕様への改造の手間をいとわなければ、タクシー車両としてギリギリ成立しそうだ。個人的にはユニバーサルデザインを採用したジャパンタクシーのコンセプトが好ましいが、ビジネス面では難しい部分はあるようだ。
大手タクシー企業に訊くLPG車の実情は? LPGハイブリッドが優位:日本交通
ここからは、具体例として東京の2社と京都の1社の大手タクシー企業が運行させている車両と燃費について概況を確認してみるとともに、今後の車両の導入方針について訊ねてみた。
まず、東京の最大手のタクシー会社のひとつである日本交通に、今後の事情によってはLPGハイブリッドのトヨタジャパンタクシーからガソリンハイブリッド車への仕様の移行はありえるのかと訊ねると、「現時点で予定はありませんが、今後、環境面や経済面等でタクシー用として適する車両が登場すれば、検討することはあり得ると思います」とのことだった。
同じハイブリッドながら、ジャパンタクシーの燃費、耐久性はプリウスα(2021年3月末で生産終了が決定)に比べてどうなのかと訊くと、「ジャパンタクシーは2017年秋の導入からまだ3年ほどであり、耐久性についての比較はなんとも言えませんが、メンテナンスに関しては特に変わりありません」という。
ちなみに日本交通では、プリウスをLPGでも使えるように改造 (ガソリン+LPG+電気の“トリプルハイブリッド”仕様)して使用しており、「燃費に大きな差はないと認識しています」とのコメントだった。
リーフなどのEVの導入予定はあるのかと訊いてみると、リアルな答えが返ってきた。
「リーフは過去に実験的に使用した実績がありますが、航続距離等の問題から現在は使用していません。現時点ではEVの具体的導入計画はなく、今後の検討課題となります。タクシー用車両の開発はどうしてもメーカー側に委ねざるを得ないなかで、現状においてはタクシー用として開発したジャパンタクシーが最も現実的な選択肢と考えています」。
●日本交通
保有台数:1607台(都内直営事業での保有車両)
トヨタジャパンタクシー::1521台。燃費:12~13km/L
※従来のクラウンセダン(コンフォート)LPG仕様の燃費:約6km/L
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