■ライバルEVの姿から考える 新型軽EVに求められる方向性
2020年に登場したホンダ『ホンダe』も、この電気自動車の世界観に沿って開発されている。全長は3895mm、全幅は1750mmとコンパクトだ。3ナンバー車ではあるが、サイドミラーは小さなカメラシステムで後方の様子を車内の液晶画面に表示するから、実質的な車幅は狭く抑えた。
そして、ホンダeはモーターを後部に搭載する後輪駆動だから、最小回転半径が4.3mに収まり、小回り性能は抜群だ。街中で便利に使えることを優先して開発された。
従って1回の充電で走行可能な距離を伸ばすことは考えられていない。駆動用リチウムイオン電池の総電力量は35.5kWhで、走行可能な距離はJC08モードが308km(WLTCモードは283km)になる。
狙っているのは富裕層のセカンドカー需要だから、装備を充実させて価格は標準仕様が451万円(補助金交付額は23万6000円)、機能をさらに高めた「アドバンス」は495万円(同16万8000円)と高額だ。ホンダeの販売計画は1年間に1000台と少ないので、このような販売戦略も成り立つ。
一方のリーフは、全長が4480mm、全幅は1790mmと相応に大きく、最小回転半径は5.2~5.4mだ。1回の充電で走れる距離は前述の通り長いものの、電気自動車の世界観を考慮するとボディが大きすぎるのではないか。この点を開発者に尋ねると「確かに街中で使う電気自動車としては大きいですが、リーフは海外でも数多く売られます。5ナンバーサイズに収めることはできません」と返答された。
この点はリーフの割安な価格と表裏一体だ。海外でも積極的に売られるから、コスト低減を抑えて価格も割安にできた。その代わりボディは相応に拡大されている。
そして1回の充電で走れる距離を重視すると、リチウムイオン電池の拡大も必要になる。リーフの62kWhがそれだ。1回の充電で走れる距離は、JC08モードが570km、WLTCモードは458kmになる。40kWhは400km・322kmだから大幅に長い。
その代わり62kWhを積む「e+ X」の車両重量は1670kgだから、40kWhの「X」に比べて160kg重い。走れる距離を伸ばすとボディが重くなり、これに対応すべく、62kWhは同じモーターを使いながら動力性能をさらに高めている。
つまり長く走ろうとすれば、リチウムイオン電池容量が増えてボディも重くなる。そのために動力性能が高められ、さらに大きな電池が必要になってしまう。遠方への外出に公共交通機関を使う電気自動車の世界観からはずれると、電池容量の拡大路線にハマり、本来のエコロジーから離れていくわけだ。
この現実を踏まえても、三菱と日産が共同開発する新しい軽自動車サイズの電気自動車には期待したい。電気自動車本来の姿が明確に提案されるだろう。そしてこの志を最初に実現させたi-MiEVのことも、長く記憶に留めたいと思う。
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