自動運転技術での「日本」の現在地 【自律自動運転の未来 第1回】

■開発担当者の「感性」によっても違う!!

 さらに、自動化レベル3技術の市販車への実装においても日本が世界初となったわけですが、課題も浮き彫りになってきました。自動車メーカー間で自動運転技術、さらにはそのベースとなる先進安全技術に対する考え方や設計手法の違いが明確になることが明らかになってきたからです。

 前述した通り、技術指針や保安基準については国際的な枠組みがあり、どの自動車メーカーであっても同一の自動化レベル技術を実装するためには、同じルールでシステムを設計します。

 しかし、自動車は車種ごとに運転特性に違いがあるように、同じシステムを用いても例えば先進安全技術ではその作動感覚に違いが生じます。一例がACCの加減速特性です。同一車種であっても内燃機関車と電気自動車ではわりと大きな違いが確認できます。

 2.0Lガソリンエンジンにマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたマツダ「MX-30」と、電気自動車である「MX-30 EVモデル」では、同じ先進安全技術群である「i-ACTIVSENSE」を搭載していますが、その一機能であるACCの使い勝手は同一条件で比較試乗してみるとEVモデルが秀でていました。電動モーター駆動ならではの反応の良さが要因です。

2021年1月28日に発売されたMAZDA MX-30 EV MODEL(451万~495万円)。自律自動運転は車種ごと、メーカーごと、ユニットごとに作動感覚が異なる
2021年1月28日に発売されたMAZDA MX-30 EV MODEL(451万~495万円)。自律自動運転は車種ごと、メーカーごと、ユニットごとに作動感覚が異なる

 同様に、自動化レベル3技術ではフットオフ、ハンズオフに加えて限定領域ながらアイズオフまでも実現可能にするため、システムによる動的制御のあり方が注目されています。

 ルールに則った技術であっても制御内容は千差万別。たとえば、ブレーキを掛けながら緩やかにステアリングを自動操舵して、隣車線の車両動向に応じてアクセルを踏み込む……、こうした多角的で複合的なシーンでの制御実現には、メーカーごとの、もっと言えばシステム設計担当者の感性に委ねられる部分が大きく、それが実装段階での葛藤を生み出します。

 その結果、理想とする制御と実現可能な制御にギャップが生まれ、その溝を埋める作業(≒多角的で複合的な運転操作)は、ドライバーにオーバーライドという形で引き継がれていくのです。

 また、レベル3技術搭載車の車両価格が大幅に向上してしまうと早期の普及が見込めないことから、可能な限り、ベースとなる標準車と部品共有化を図る必要があるものの、求められる性能や信頼性の面でそれが成立しない、そんなジレンマもすでに発生しています。

 このように日本における先進安全技術や自動運転技術は、技術レベルの高さだけでなく、国際基準策定においても中心的な役割であることがおわかり頂けたと思います。一方、高度化が進む自動化レベルでは、理想と現実のギャップが存在し、そこには人が機械(システム)の制御を補完する人と機械の協調運転が求められています。そして2021年以降はそれが益々、重要視されていくのです。

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