■売れゆきはヤリスクロスがヤリスを上回る
ところで、ヤリスというのはもともと海外名だったことはご存知のことだろう。
現行型で車名を変更したのは、TNGAプラットフォームへの刷新、国内全チャンネル併売化、WRCの日本開催など、クルマ自体とそれを取り巻く環境が大きく変わるなかで、「新しいスタートを切る」という想いを込めて、新たにヤリスを名乗るはこびとなったという経緯がある。
ヤリスのこれまでをざっと振り返ると、2月に標準のハッチバックが発売され、当初はネッツ店のみでの取り扱いだったところ、5月より全販売店で取り扱いが始まり、その後は8月にヤリスクロス、9月にGRヤリスのデリバリーが始まった。
2020年の年間販売の内訳は、ヤリスのガソリンが約6万1840台、同ハイブリッド が約5万3460台、ヤリスクロスのガソリンが約1万2710台、同ハイブリッドが約2万100台、GRヤリス が約3670台である。
ヤリスクロスが発売されてほどなく売れゆきでヤリスを上回り、最新の2021年1月の販売の内訳は、ヤリスが約8180台、ヤリスクロスが約9350台、GRヤリスが約980台となった。
人気グレードは、ヤリスはハイブリッドがZグレード、ガソリンがGグレードで、ヤリスクロスはハイブリッド、ガソリンともZグレードとなる。GRヤリスはいわずもがな、別格的な位置づけのRZのHigh Performance だ。
販売比率がヤリスはガソリンが高く、ヤリスクロスはハイブリッドが高いあたり、それぞれ求められるのが価格の安さか付加価値の高さかという違いがうかがいしれて興味深い。
購入者について、ヤリスのようなコンパクトカーはなおのこと、女性の家族が主に使用しているケースが多そうで実態は違ったものになりそうだが、ひとまずデータとしては、年代は50~60代が50%以上を占め、性別は男性が60%以上に達しているという。
■デザインや走りの質感アップが魅力
そんなヤリスの人気のヒケツは、まずはこの斬新なデザインに違いない。価格やサイズはもちろん、小さいながらも存在感があり埋没することのない容姿には、積極的に選びたくなる力がある。前身である3代目ヴィッツがいまひとつパッとしなかったのとは大違い。この路線変更は大当たりだったように思う。
室内や荷室はそれほど広くないが、広さを求めるユーザーにはヤリスクロスのような別の選択肢を用意できるのも体力のあるトヨタならでは。だからこそヤリスではより思い切ったことができて、それがまた功を奏したわけだ。
さらには実際に走らせても、わかりやすい魅力がある。
THSは既存のものに比べてアクセルレスポンスが高められていて、瞬発力があり乗っていて楽しい。そのハイブリッドだけでなくガソリン車ともども、ビックリするほど燃費がよいことも強みだ。そのあたりが多々報じられたり実際に乗った人の口コミ等で伝播するなどして、よいイメージがますます高まっている。
加えてTNGAの採用により走りの質が高まったのも一目瞭然。また、アイドリングストップ機構を廃したのもコストをはじめいろいろな面で非常に見識だと思う。
それらのよさが、5月からトヨタの全販売店で取り扱われるようになったことで、より多くのユーザーがヤリスに触れる機会が増えたのも好都合だった。
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