「日本で販売していて、中国でも売っているようなクルマがあるけど、中国仕様のクルマはちゃんと馬力出てるの? 中国のガソリンって、なんかマズそうだけど」。
編集部にかかってきた読者からの一本の電話が今回の企画の発端。確かにクルマが持つ性能をフルに発揮するには、耐ノック性につながる高いオクタン価を持つガソリンが必要。粗悪なガソリンではコンピュータがエンジン保護のため、出力を絞ってしまう。
実は国によってけっこう規格が異なるガソリン。グローバル化が進む現代。その規格の差に起因する問題はないのだろうか?
というわけで、今回はグローバル的観点に基づいて、ガソリンについての再検証を試みたい。
文:国沢光宏、ベストカー編集部
写真:ベストカー編集部
初出:ベストカー2017年4月26日号
■ダウンサイジングターボが有効か否かは「オクタン価」が決める
(TEXT/国沢光宏)
日本でダウンサイジングターボがパッとしない理由
間もなく日本で発売されるシビックのアメリカ仕様は、176ps/22.4kgmを発生する1500ccターボエンジンを搭載している(編集部註:この記事は2017年3月時点のものです。
2018年4月2日現在のシビック日本仕様のエンジン出力(L15B)は173psです)。大雑把にいえば2300ccのターボなしに相当する出力だと考えていいだろう。
このエンジン、日本でもステップワゴンに搭載されており、レギュラー仕様で150ps/20.7kgm。ターボなしエンジンなら2000cc級に相応する。
ドコが違うかといえば、ガソリンの種類です。日本仕様はレギュラーじゃないと売りにくいということで、90オクタン対応。アメリカで売ってる仕様は、日本式にいえば95オクタン相当くらいのガソリンを前提にしている。
ちなみに日本のオクタン価は『RON』という基準の表示。アメリカだと『AKI』基準になるため、表示されているオクタン価と少し違う。
90オクタンと95オクタンでエンジン性能が違うかと聞かれたなら「圧倒的に違いますぜ!」と答えておく。なかでもビミョウなのが熱効率を追求したダウンサイジングターボである。
90オクタンだと高負荷時にノッキングしてしまうため、点火時期を遅らせなければならない。95オクタンなら過給エンジンの美味しい部分を引き出せるのだった。
ちなみに150ps仕様も176ps仕様も、日本のカタログに記載されるJC08モードだと燃費差ほとんどなし。したがってハイオク仕様にしてもメリットがない。
けれどアクセル開度大きい使い方をすると、ハイオク仕様は燃費よくなります。実用燃費で10%よくなれば、ガソリン価格が5%高くたってメリットある。だからこそアメリカもヨーロッパもダウンサイジング人気なのだった。
もう少し突っ込んで書くと、ハイオク使うからダウンサイジング過給に「面白さ」が出てくる。ステップワゴンの1500ccターボ、出力もトルクもライバル車の2000ccとイーブン。燃費はむしろ若干の負け。
コスト的には高額なタービンやインタークーラー、直噴使うダウンサイジング過給のほうが高い。だったら安価なターボなしエンジンで充分でしょう。
いずれにしろ平均走行速度の低い日本の道路事情を考えれば、ダウンサイジング過給エンジンにハイオク入れて走るより、排気量の大きい普通のエンジンのほうが効率的だ。
今後も平均走行速度が上がるとは思えないから、ダウンサイジング過給の普及は難しいかもしれません。中国などの新興国や東南アジアなども、オクタン価の高いガソリンは高いため普及しない?
■これが世界のガソリンのオクタン価。日本のガソリンの質はよい?悪い?
(TEXT/ベストカー編集部)
規格どおりなら日本のガソリンはイマイチだけど……
ガソリンの、エンジン内における自己着火のしにくさや、ノッキングの起こりにくさを表すのが、オクタン価。「100」に近づくほど耐ノック性が高く、高性能エンジンに向くとされている。
日本の規格ではレギュラーがオクタン価=89以上、ハイオク=96以上と決められているが、実際に流通しているガソリンは、レギュラーがオクタン価=91程度、ハイオクが98以上と言われている。
この表は各国のガソリンのオクタン価の、規格ではなく実際の価を示したもの。正直「ここのガソリンはマズいだろ」とのイメージを持っていた国でも、案外まともなものが流通していてビックリだ。
が、なかにはロシアやインドネシア、エジプトなどのように、オクタン価が高いほうの製品でも95と、日本のハイオクの規格価に届かない国もあるので、「日本仕様のGT-Rで、ロシアの大地をカッ飛びてー」と考えている人は、ちょっと気を付けたほうがいいかもしれない。
ロシアのごく一部で流通しているという、オクタン価=80のものなんかを給油された日にゃ、自慢のVR38DETTエンジンが昇天しちゃうかもしれない。まぁ、そんなことを考える人は、おそらくいないと思うが。
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