■スバル WRX S4
名機EJ20型水平対向DOHCターボに6速MTを組み合わせた4WDスポーツセダンのスバルWRX STIはカタログから消えた。今、羊の皮を被った狼といえるのは、FA20型水平対向DOHC直噴ターボに8速CVTを組み合わせたWRX S4だ。
しかも、現在WRX S4はモデル末期でグレードをSTIスポーツ アイサイトだけに絞り込んでいる。ただし、STIの名に恥じない装備内容だ。強靭でしなやかな走りを実現するためにサスペンションなどに専用チューニングを施し、インテリアは上質な仕立てとした。
ビルシュタイン製ダンパーとスプリングは、モータースポーツで得られた技術とノウハウを使ってチューニングされている。フロントストラットは「ダンプマティックII」だ。ステアリングの剛性も高めているから、ハンドリングはリニアリティあふれ、意のままの気持ちいい走りを存分に楽しめる。
駆動方式はVTD-AWDで、前45:後55の駆動トルク配分だからコントロールできる領域が広く、ライントレース性も素晴らしい。また、路面の段差や突起からの衝撃を上手に受け流し、乗り心地に粗さがないのも魅力のひとつだ。
エクステリアは、エアロパーツを装着しているものの、それほど派手ではない。まさに羊の皮を被った狼なのである。レカロ製パワーシートを装備するなど、大人のムードにまとめているのもマル。アイサイトを標準装備しているのもうれしい。
【羊を被った狼度:★★★★★】
■ホンダ e
アクセルを踏み込んだ直後から力強いトルクが湧き上がり、鋭い加速を披露するEVは、まさに羊の皮を被った狼だ。ドライバーの運転の仕方でジキルにもハイドにもなる。
ホンダ初となる量産EVのホンダeは、ペット的な愛らしいルックスが人気だ。シティユースを狙った街中ベストのEVであり、ほのぼの系と見られている。だが、電費を気にしないで走らせると、驚くほど速い。特に上級グレードの「アドバンス」は俊足だ。
アコードe:HEVから譲り受けたモーターは高性能で、154ps/32.1kgmを発生する。アクセルを踏むと瞬時にパワーとトルクが盛り上がり、強いGを感じる。しかもシームレスな加速感だから気持ちがいい。
強力な回生ブレーキに加え、減速度の強弱をステアリングに付いているパドルで行う減速セレクターを駆使すれば、ワインディングロードや登坂路でも驚くほど速い走りが可能だ。ボディが身軽になったように感じられる。
サスペンションは前後ともストラットの4輪独立懸架だ。ホンダeの魅力のひとつは駆動方式がリア駆動だということである。コンパクトカーのクラスで後ろ足が大地を蹴っている快感を味わえるのがうれしい。
前後異サイズのミシュラン製スポーツタイヤや可変ステアリングギアレシオの採用と相まって、ヒラリとした軽やかな身のこなしを披露する。バッテリーをフロアに敷き詰め、重心が低いからロールを意識させず、一体感のあるコーナリングを見せるのだ。
サーキットに持ち込んでも、軽やかに向きが変わるし、加速もいいなど、操る楽しさは格別だ。
【羊を被った狼:★★★★☆】
■BMW M3
BMWには羊の皮を被った狼と言えるスポーツセダンとSUVが数多くある。
その筆頭が、BMWワークスのコンプリートカーとして送り出され、レースでも活躍したM3だ。最新のM3はエグい顔つきになった。が、それまでは平凡なキドニーグリルの表情だったから驚異的なパフォーマンスを秘めているとは思わない。
だが、スペックはビックリだ。ボンネットを開けると目に飛び込んでくるのは、化粧カバーに覆われた3Lの直列6気筒DOHC直噴ターボで、Mツインパワーターボと名乗っている。ブロックやピストンなどは専用設計だ。
M340iのxDriveは387ps/51.0kgmを発生する。これでもすごいと思うが、最新のM3コンペティションはなんと510ps/66.3kgmまでパワーを高めているのだ。しかもこちらは後輪駆動である。
トランスミッションは2ペダルのドライブロジック付き8速Mステップトロニックを組み合わせた。サスペンションを専用にチューニングし、タイヤも前後異サイズだが、違いに気がつかない人も多いはずだ。
まだ、ステアリングを握っていないから未知の部分が多い。だが、モータースポーツでの経験から生まれた数々のテクノロジーを盛り込んでいるから、走りの実力は推して知るべしだ。しかも輸入されるのは右ハンドル車である。
3シリーズのセダンだから前席だけでなく後席も満足できる広さを確保した。このさり気なさも魅力だと感じる。
【羊を被った狼度:★★★★★】
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