■操縦性は途切れることなく進化している
では操縦性もこの時代のほうが優れていたのか、といえばそんなことはありません。クルマの操縦性には「解」があるわけではなく、より優れた操縦性を求めて途切れることなく進化を続けているものだからです。
1990年代のクルマに乗って、今のクルマと明らかに違いがわかるのはボディ剛性だろうと思います。
1990年代後半くらいからでしょうか、クルマの衝突時の安全性がクローズアップされるようになり、衝突試験による障害地計測と評価が行われるようになりました。衝突試験によって、ボディ剛性を上げると、乗り心地や操縦性がよくなることが明らかになってきたのです。
そんなことずっと前からわかっていたことじゃないの? と思われるかもしれませんが、実はそうでもなかったのです。
いままで無駄だと思って軽量化されていた骨格の一部を衝突試験のために頑強にすると、乗り心地がよくなったり、操縦性がよくなるということが明らかになってきたのです。
■燃費重視がデザインの画一化を招く?
ではなぜ、旧車のほうがかっこいいとか面白い、あるいは楽しいと思うクルマ好きが多くいるのでしょうか。
まずはデザインに関してですが、1990年代前後海外のメジャー自動車デザイナーが日本のクルマのデザインを手掛けていたというのがひとつ。また、当時はまだ空力性能がそれほど重要視されていなかったため、クルマのデザインに自由度が大きかったことが挙げられます。
近年のクルマは、エクステリアデザインもさることながら、空力性能がとても重視されています。燃費に大きく影響を与えるからです。それを踏まえてコンピュータを駆使してデザインすると、どうしても似たようなデザインになってしまうわけです。
独創的なデザインのクルマが少なくなったのには、そうした背景もあるわけです。
特に1980年代後半から1990年代前半はスポーツカーが脚光を浴びた時代。スポーツカーは個性が命なので、より個性的で感覚的にかっこいいと思えるデザインが採用されていたということも大きな理由なのであろうと思います。
■感じかたは人それぞれ
操縦性については、「いい」と「面白い」は別の評価軸にあるということです。
クルマは人が操るので、より人が関与する領域が多いと、面白いと感じる傾向にあります。マニュアルミッションであったり、横滑り防止装置のないクルマのアクセルコントロールであったり、曲がりにくいクルマでドライブテクニックを駆使して曲げる操作だったり、という面です。
普通に乗るには乗りづらいかもしれないけれど、それが一部マニアの人にとっては無上に楽しいことだったりするわけです。
旧車の運転が面白いのはボク自身も共感するところですが、最新のクルマも面白かったり深かったりするクルマはたくさんあります。むしろクルマの操縦性についていえば飛躍的に進化しているといっていいと思います。
■イージーさに隠された現代のクルマの深さ
ロードスターは1989年にユーノスロードスターとして登場。
ライトウエイトFRスポーツとして爆発的に人気を博したスポーツカーですが、現在のマツダロードスターに乗るとエンジン、ボディ、サスペンションすべてが洗練されながらクルマとの一体感、コントロールする面白さは少しも薄れていません。面白さを損なわずに乗りやすくなった好例でしょう。
また、シビックタイプRに乗ると、シャシー性能の格段の進化を実感します。かつて150馬力程度でもパワーを持て余していたFF車ですが、シビックタイプRは300馬力を軽々と受け止め余すことなく路面に伝えることができるのです。
FRではスカイライン400Rもシャシー性能の進化によって安定性とコントロール性を手に入れたFRスポーツといえると思います。
このほか、レヴォーグやマツダ3も楽しさという点で注目に値するクルマだと思います。
パワーは突出していませんが、ステアリングやアクセル操作に対する応答の精度が高く、ちょっと加速したい、スイッと曲がりたいといったドライバーの意図が面白いようにクルマに伝わるので、クルマとの一体感を楽しむことができるクルマとして挙げられると思います。
ビギナーからベテランまで誰でもイージーに運転できてしまう今のクルマですが、ちょっとだけ真面目にクルマに向き合ってみると、今のクルマの奥行きや深さが見えてくると思います。
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