■日本車のヒエラルキーを押し上げた2代目マーチ
そこで、過去に日本車が受賞した例を調べてみると。1993年に2代目となる日産マイクラ(マーチ)が欧州WCOTYを受賞。これが日本車として初の受賞車だ。やはり超コンパクトモデル。ちょうど日本のバブル景気が崩壊した後で、経営状態が悪化している当時の日産を支えたモデル。
デザインは開発中だったCADシステムを使い、適度に丸みを帯びたエクステリアは、ユニセックスな万人受けするもの。日本でもヒットしたが、すでにトラブルが少なく、燃費の良いことが浸透し始めていた日本車の実力をハッキリと示した1台だ。
筆者自身、受賞前年となる1992年のル・マン24時間レース参戦で2度フランスに行ったが、当時はどこを見てもルノーのコンパクト全盛。そのような環境の下でのマーチ受賞は欧州での日本車ヒエラルキーを押し上げたことは間違いない。
■フランスで驚かされた初代ヴィッツとプリメーラ
その後2000年にトヨタ ヤリス(=初代ヴィッツ)が受賞。これがトヨタ初の受賞だ。
このヤリスは初代ヴィッツで日本ではカローラを上回る爆発的ヒットモデル。販売の中心は日本と欧州で、衝突安全性と価格を含めたクオリティの高さが欧州でも大きく強化された。
筆者は翌年となる2001年のル・マン24時間レース出場のため渡仏しているが、この時レンタカーを含めて、街なかを走るヤリスの多さに驚いた。また、そのデザインがフランスの歴史ある建物にとてもマッチしていて違和感がなかった。
この2001年のル・マン参戦時は、日産 プリメーラ(5ドアハッチバックセダン)のレンタカーを借りたのだが、非常にハンドリングが良く、多人数乗車にもかかわらず素晴らしい機動性だった。もちろんMT車。
さらにチームメート(英国人)のご両親もプリメーラで英国から応援に駆け付けるなど、日本車の浸透ぶりに感心した思い出がある。
さて、トヨタはその後2005年にプリウスで再び欧州COTYを受賞することになるのだが、これはもう容易に想像がつくほどでハイブリッド車のリーディングカンパニーとしてのトヨタ、また特別な1台としてプリウスが欧州で評価されたことを如実に現わしている。
プリウスは2008年のリーマンショックをきっかけとして、米国でも燃費の良いハイブリッドへの価値観が大きく変化していった。
筆者が米国でのレース活動でインディ500に初出場した1994年のガソリン価格は、1ガロン(約3.8L)=1.3ドル(130円前後)だったのだが、リーマンショック後は4.0ドル以上にも上昇した。
これに加えてCO2の環境規制など米国でのクルマの在り方を方向転換する契機とする1台であったことは間違いない。
筆者自身、1994~2000年までのインディ500チャレンジで、常に予約するレンタカーはトヨタ カムリだった。カムリはレンタカーの台数も豊富で、しかも燃費が良いので、約1か月強の長期滞在となるインディ500では移動距離が長い米国でとても重宝した。
■実は欧州でも評価が高いジムニー
ところで筆者も選考委員を務めるWCOTYの選考委員にも欧州の評論家は数多く、年に一度LA(米国)に集まり国際試乗会が開催される(2020年はコロナ禍によって不開催)。
そのなかで2019年に開催された試乗会にスズキがジムニー(シエラ)を持ち込んだことが話題となった。
実は米国ではジムニーを発売していない。わざわざ認可を取り米国に持ち込んだのはWCOTYの賞を狙ってのこと。
我々日本人選考委員はもちろん日本で試乗済みだが、他の選考委員はほとんどが初めて。皆とても感動し部門賞であるWCOTY「2019 ワールド・アーバン・カー」を受賞している。実はジムニー、欧州ではかなり評価の高い人気モデル。
ただし、欧州の環境規制(つまり排ガス)の厳格化に伴い本年度から販売除外となっている。新たに48Vマイルドハイブリッドで規制をクリアする予定だが、商用車は規制対象外のため荷室を広げた2シーターモデルを欧州販売する。
さて、他にも挙げたいモデルがあるのだが、またの機会としてこのあたりでサヨナラ。ちなみにそのモデルとは、インプレッサ、GT-R、ロードスターなのであります。
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