■フォードとの“相乗効果”が悪く出た? マツダ トリビュートの敗因
「あっという間」というほどではありませんが、それでも比較的短期間でマツダ トリビュートというSUVが国内では消滅してしまった理由。
それは、基本的には「さほど出来の良いSUVではなかったから」ということになります。
室内は広く便利で、その割には車両価格も低めでしたので、そういう意味では、決して悪い車ではないマツダ トリビュートではありました。
しかし当初の2Lエンジンはノイズや微振動が大きく、実用回転域でのパワーとトルクも今ひとつ。
そして硬めのサスペンションを採用したからでしょうか、走行中は路面ギャップでの突き上げもややキツく、後席の乗り心地も決して快適ではない――みたいな感じだったのです。
これは要するに「ひと昔前のアメ車の悪いところそのもの」であるため、下記のように言うこともできるでしょう。
「財務状況的に仕方なかったとはいえ、あの時期のマツダは、フォードなんかと手を組んだ(フォードが筆頭株主となり、社長もフォードから送られた)のがいけなかった」と。
……たしかにそういった部分もあるでしょう。しかし「フォードとの協業のすべてが悪かった」ということも、決してなかったはずです。
Bセグメントの「デミオ」では、マツダが基本設計を行ったそれのフォード版が「フィエスタ」の名で世界にデリバリーされましたし、ひとつ上のCセグメントでは、同じく当時フォード傘下だったボルボのチームが開発したプラットフォームが「マツダ アクセラ」として、あるいは「フォード フォーカス」として成功を収めています。
フォードとマツダの提携は、たしかにシナジー(相乗効果)も生んだのです。
しかし残念なことにトリビュートの場合は、車台もエンジンも明らかに「米フォード的」でした。
筆者は米国人になったことがないので正確なところはわかりませんが、当時の米国人は、SUVに関しては「こういう感じ=雑でワイルドな感じ」を好んだのか、もしくは「SUVってのは要するに商用車みたいなものなので、こんな感じで十分でしょ?」ぐらいに思っていたのかもしれません。
まぁこれは推測にすぎませんし、今現在の米国人は、SUVにも「それなり以上のクオリティ」を求めているはずです。
しかし2000年11月という微妙な時期に誕生したマツダ トリビュートは、日本人の感覚からすると「ちょっとざんねんなSUV」でしかありませんでした。
■マツダ トリビュート主要諸元
・全長×全幅×全高:47395mm×1790mm×1750mm
・ホイールベース:2620mm
・車重:1400kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1988cc
・最高出力:129ps/5400rpm
・最大トルク:18.7kgm/4500rpm
・燃費:9.8km/L(10・15モード)
・価格:196万1000円(2000年式 LX Gパッケージ)
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